第30話 ご指導ご鞭撻のほど。
佐々木は宣言通り灯りを消さずに初体験を迎えようとしていた。見た感じ普通の女の子の佐々木だが度胸はある。思っていることはちゃんと言葉にするし、興味ないことは興味ないと言った。それが悪く出る場合もあるが、彼女は後悔しない。
同じ原理だ。
俺が彼女に彼女の身体にどれくらい興味があるのか知りたがった。それには布団が邪魔だったのだろう、布団をベッドの下にワザと落とし、自分の身体が隠れる物をなくした。
「ど、どうかなぁ……」
俺が自分のこと、自分の体にどんな興味があるか知りたがった。同級生の男子の前で、灯りの下で一糸まとわぬ状態の恥ずかしさは、真っ赤に染め上げた頬の色でわかる。
うなじまでもが赤い。肌はきめが細かく、色白で頑張って隠さないようにしている胸は桜色をしていた。
こんな明るい環境で女子の裸を見たことがない。先生の時は豆電球で、薄暗かったし恥ずかしさから先生は胸を隠し見ることが出来なかった。布団に潜ろうとするし。贅沢な願いだけど、じっくり見たいというのが男心。
それに、先生は大人の成熟した女性に対し、佐々木は同じ歳でまだ成長過程。同じ女性でもこれほどの違いがあるのか。どちらがいいとかの話ではない。その違いに息を飲んでいた。
「その……緊張してる。したくないとかじゃなくて、その……いきなりだから緊張してる、マジで」
「わかる。でもどっかでね、やーさんとならいいかなぁとか、考えたことあるよ、私」
「俺も、うん。佐々木と……したいとかはある」
「したい? ちょっとそれ意外」
これはもしかして失言だったりか?
確かに佐々木は俺ならいいと言ってくれて、俺は佐々木としたいと言った。佐々木の場合行為と、初めての体験相手と、お付き合いをすることを前提みたいな意味を含むのだろう。
俺の言い方だと単にやりたいと言っているように聞こえるし、実際そう言ってる。フォローしないと。
「ごめん、その……つい」
「ついなに? 怒らないから教えて。親友なんだよね、隠し事はナシね」
佐々木は探求心がすごい。興味がないことには全然だけど、興味ある事にはがっつり食いつく。それが今もだとしたら、ある意味俺に興味がある訳でそれは決して悪いことではない。親友という言葉を持ち出されると曖昧に出来ない。
「怒らないっていうヤツは、たいがい怒る」
「ねぇ、私ここまでさらけ出してるんだよ、実質的に。超をいくつ付けていいかわかんないくらい、超はずかしいの。なのにやーさんは自分の恥を隠すんだ。やーさんのハートは仮性包茎なのかな?」
佐々木の口から、同級生の女子の口から仮性包茎なんて聞くとは思わなかった。この場合どういう意味なんだ。自信ないんだ? みたいな意味っぽい。若干だけど侮蔑の意味も含まれる。いや、
ここでもし俺が引き下がったら、俺は全国の仮性包茎の兄弟に顔向けができない。仮性包茎だって恥じることはないし、なんなら気持ちいいまである。いやそれはさて置き、佐々木がそこまで言うなら反撃の火ぶたを切るまでだ。
「ぶっちゃけると、現実と妄想がごっちゃになった。つまりだ、妄想の世界ではお前とそういうのするのは、実は普通で当たり前なんだ。簡単に言えば日常的にお世話になってる訳だ。どうだ、言葉を濁したくもなるだろ」
開き直ってぶっちゃけた。捨て身にも程がある。
「待って、やーさん。いきなりの重要情報公開……その……私が日常的にお世話をしてるって、まさか、まさかのオナネタとしてだったり?」
同級生の美少女カテゴリーに分類される佐々木の口から、オナネタなる夢のようなお言葉頂きました。お泊りトークってこんな過激なの? 確かに日頃から、それなりにきわどいトークをするふたりではある。しかし、ここまで直接的なのはあっただろうか。
「いや、お前が言うところのまごうことなきオナネタだ。ここまで聞けば、さぞ理由を知りたかろう。では、刮目して聞け。それは単にお前が可愛すぎてドストライクで、性格もマジで好みで、俺以外はガン無視のお前が好き過ぎる。それだけじゃない、頑張ってるお前が好きだし、愚痴を俺だけに垂れ流すのもいい! すごくいい‼ 今回のことは残念だけど、ここまで打ち込めるものがあるお前を尊敬してる」
俺は佐々木の指先を覆うテーピングに触れた。
単にエロい目で見てるだけでは、というご意見はご遠慮ください。男子たるもの、妄想でどんぶり飯が行けないようではまだまだなのだから。言葉を失ってしどろもどろな佐々木には悪いが言いたいことはまだまだある。
「ぶっちゃけついでだ。恥は道ずれ余は情けというではないか、俺は佐々木をオナネタとして使う。それはもう、ヘビーローテーションだ。それくらいお前を思ってる。だがしかし、佐々木はしないんだろ? したことないとか、お寒いこと言うんだろ? お前のハートこそ仮性包茎じゃないのか。俺は妄想でお前の『ここ』とか!『ここ』! 何度もした‼ ドン引きしたけりゃすればいい‼ だがしかし、妄想の中のお前は喜んでくれた、それが真実だ」
どこが真実だ。全部妄想だ。でもいい! もういい! なぜなら『ここ』とか! で佐々木のたわわな胸を握り、『ここ』! で佐々木の秘部に触れた。もう、旅立ちそうな勢いだ。
ドン引きしたけりゃ、すればいい。ジト目で睨みたければ、敢えて睨まれようじゃないか! もう、ここまで言ったんだ、バッチコーイだ!
「よくわからないけど、たぶんやーさんの言う通りだよ。やーさんは何でもお見通しなんだね。私のことわかっててくれる」
まさかの大どんでん返し! 来てます、来てます! 来まくりまくってます‼ ここまでのぶっちゃけ、正直もうダメだと思った。内心、言わなきゃよかった……になってたところからの、大逆転!
だけど、佐々木に悪いが『私のことわかっててくれる』という言葉――買いかぶりです。何にもわかってません。なんならお前の胸に触りたかっただけ。
なにか言わないと、そう焦ると言葉が見つからない。見つからないから黙ってるしかないが、佐々木はまたとんでもない誤解を、独り言で漏らす「そうなんだ、やーさん。私でしてくれてるんだ……」佐々木脳内で美化されてないか。欲望に任せ佐々木であんなことや、こーんなことしただけです。
「私ら親友だよね。いつも対等じゃないと。私、その……部活、部活で朝起きて、疲れて家帰って寝て、また起きるだけ。だから、その……知識として男子がそういう事……ひとりで、その…
「それなりには反省してますが、ズルいと言われましても――」
「もう、やーさんの鈍感。いい? 私は部活バカでこの歳までひとりエッチもしたことないの。どうするかもわからない。親友だよね、やーさん? ひとりエッチの仕方教えて、いえ教えなさい。でないと絶交ね」
俺の知る親友の形が正しいのなら、少なくともひとりエッチの指導はしない。でも、ひとりエッチのやり方を聞くのも親友の形なら、俺は佐々木美玖の指導者にもなろう。
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