第29話 勝ったの。
「佐々木、灯りはいいのか」
豆電球にしてと言った先生の顔が頭をよぎる。
今だって……佐々木が傷ついてるから―――同情なのか? わからない。でも、放って置けない。この感情はよくない。そんなことわかってる。
無自覚で優しさを振りまいてるのにさえ、罪はある。罪があれば罰が生まれ、それはまるで光と影のよう。
いつかは光も影に追いつかれ夕暮れになる。いや、俺のこの一見優しさに見える感情は無自覚ですらない。
なんとも言えない感情が存在してることは理解してる。ただ、この感情にどんな名前を付けるか決めかねている。愛なのか恋なのか同情なのか、欲望なのか。
「見てて欲しい。初めての男子の前だから」
頭が真っ白だ。この言葉はなんて都合がいいんだ。思考停止している言い訳にもなるし、流されたのは考えられなかったことに出来る。俺はズルい。
布団の中で佐々木の履いていた短パンを脱がせた。親友だと思ってた女子。いや、それは何も変わらない。ただ、その親友だと思ってた女子の太ももに触れながら脱がした短パンに、何か意味を見出そうとしていた。
でも、俺にそんな思考能力は残ってない。これもまた言い訳か。
「私もいい?」
佐々木はそう断って俺のズボンに手を掛ける。ただ俺と違ってたのは、俺は指先だけで短パンを脱がせ、佐々木は丁寧に体を起こし俺の下半身まで移動し、俺の腰を浮かせズボンを脱がせた。
脱がせてもすぐには戻らず、彼女は俺の下半身をじっと見つめ「こんなになるんだ」と吐息交じりで俺に確認するように呟いた。
だから、俺も佐々木の方に行き、ゆっくりと寝かせ力む彼女の足をそっと開かせた。白い下着の中央部分に触れ、佐々木が反応してるのを確認して「こんなになるんだ」と同じように言った。
どちらが合図したわけじゃない。俺が自分のパンツに手を掛け脱ごうとすると、彼女もそうした。同級生で親友女子の下半身。まだ誰の目にも触れたことない、女子な部分が室内灯に照らし出された。
俺は我慢できる状態ではない。佐々木の身体を覆う最後のキャミソールを強引に脱がせた。脱がせたとき、佐々木の髪が乱れ前髪が彼女の顔を覆った。その前髪をかき上げる仕草は、俺の知らない佐々木美玖だった。
佐々木はその白く豊かな胸元を隠すことないまま俺の身体に手を回し、俺の服を脱がせると、ようやく恥じらいが追い付いてきたのか、きつく抱きつくことで裸を見えなくした。
それから長い時間、そうとても長い時間キスをしていた。何か足りない欠片を埋めるかのように。佐々木は長い、長すぎるキスに飽きたのか、それとも疲れたのか、はたまたこれではキリがないと感じたのか、くちびるを離した。
そして話し始めた。
今日のメンバー選考のこと。フルート三姉妹と呼ばれる三村三姉妹のこと。同級生の双子のこと。末妹の姉をも寄せ付けない圧倒的な技術、表現力、存在感。そしてなにより三姉妹の一糸乱れない演奏のことを。
ぽつり、ぽつりと。
「やーさん。私ね、
佐々木は軽く首を振り、感情的になってごめんと呟いた。
「同じようにね、他の楽器でもメンバーになれなかった3年生が何人もいて、その娘たちは楽譜のファイルを床に叩きつけて踏んだり、椅子を蹴り飛ばして顧問を睨みながら出て行った『引退します‼』って。でね、思ったの。やっぱり私『情感』ないかもって。だって、同じように怒りが込みあげてこなかった。でもね――」
「でも?」
「会いたくなった」
「俺に?」
「うん、変?」
さっきまでとはまるで違う、毒が抜けたような、憑き物が落ちたかのような、そんな表情で首を傾げる。
「親友なんて言いながら、連絡先も知らないの。あの後、メンバーだけの練習になって。家に帰っても誰もいないし、連絡先知らないし。
佐々木は俺の手を取り、自分の胸に重ねさせた。裸の自分の胸に。
▢作者よりお詫び▢
日頃から本作を応援頂きありがとうございます。
残念ながら、本作は40話で打ち切りとしたいと思います。
暖かい応援をいただきながらお申し訳ありません。
次回作、他作で変わらない応援をいただければ幸いです。
アサガキタ。
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