第13話 心なしか。

「すまないね、言いくるめたみたいで」

 そう言って先生は俺の鼻先をツンとした。俺は負け惜しみで「全くです」と悪態をついく。

「そう言うな、私はそんな君が可愛くて仕方がない。ねた君も中々だな、悪くない」

 そういって先生は肩を震わせ笑った。完全に子供扱いされてないか。まぁいい。反撃するのは今じゃない。1年後。その時は嫌なんて言わせない。ここは我慢だ。


「先生、質問いいですか」

「なんだい、何でも答えよう。でも体重とかウエストは勘弁して欲しいな」

「そんなんじゃないです。先生の言う事はごもっともです」

「賛同してくれてうれしいよ」

「はい、でも先生が言う禁忌タブー範疇はんちゅうの話なのですが、先生基準なら昨晩の範囲なら求めてもいいってことですよね、いわゆる解禁ですよね?」

「あぁ……それな、それはその……」

「どうしました、あんなに自信満々に言いくるめた先生は何処どこへやら。まさか、1度ならいい、なんてそれこそ詭弁きべんですよ」

 泣く泣く1年我慢するんだ、せめて何か許して欲しいと考えた結果、これなら嫌とは言えないだろうということ、それは背中越しの相互ひとりエッチだ。

 実のところ、触りたくても触れないという縛り。これ悪くないと気付いた。俺がひとりだけ自分を触ってるんじゃない、先生も同じように自分を触る。

 触る以上お互いにそれなりの反応があり、それはそれで相当官能的なのは間違いない。つまり、先生の反応が相当エロいのだ。


「それはまぁ……やぶさかでないというか」

 さっきまでの先生とは思えないしどろもどろ感。こう見えて先生わりとチョロいのでは……疑惑ではなく確信に変わりつつあった。

「やぶさかでない、つまり嫌じゃないんですよね」

「――君は意地が悪い、そうだよ、もう……イジワル」

 うぅ……かわいいな、かわいいついでにイジめたくなるのは世の常。

「では、先生。お願いします」

「お願いしますって君……さっきんだろ」

「はい、でもしてますから。先生もでしょ」

 先生は世にも情けない顔して、渋々コクリと頷いてもう一度お付き合い願った。


「その……苦情を言うつもりはない。君にだって相当な我慢をして貰ってるのは承知してるが、私とて羞恥心しゅうちしんはあるのだ。賢者タイムは男子だけだと思わないで欲しいなぁ……」

 真っ赤な顔して情けなく呟く先生。言葉が表すように、先生も満足していた。でも、どうした事か俺は先生には意地悪になるらしい。


「でも、したんでしょ」

「き、君というヤツは私に何を言わせたいんだ⁉」

「いえ、何も。ただ、俺は先生の隣でてることが出来て、この上ない幸せを噛みしめてるので先生もかなぁと。そうでもないですか」

「し……」

「し?」

「もう! 君と同じお布団で果てることが出来て先生幸せで幸せで! そりゃもう、幸せの極地だ!」

 ヤケを起こしてるがこれはこれでかわいい。これ以上はやめよう。きっと変なキレ方するだろうし。なので残念だがある提案をした。


「先生、一旦着ませんか、その服とかパンツ」

「着てもいいがいいのかい? 私は知ってるよ。君はそれとなく私のパンツを遠くにほうったろ? あれは少し傷ついたなぁ……君はどうせ私がすぐにパンツを穿いてしまうような女だと思ったのだろう。私の気持ちが信じられないんだ」

 パンツをすぐ穿いてしまう女。なんか新ジャンルだ。余談だが俺はパンツをすぐに脱いでしまう男になりたい。ホント余談だな。

「信じてますよ、ただパンツってのは傍にあると人は穿きたくなるもんです。昔の偉い人が言ってました」

 もちろん、そんな偉い人はいない。


「ふーん……なんか嘘くさいけど今は聞いたげる。あとね、少し気になったんだけどさっき君は『一旦』と言ったね、確かに。ということは言葉の端に『もう一度脱いで貰うかも』って感じるのだけど、勘違いだよな?」

 こういう場合、先生が国語教師であるのはやりにくい。うまくそこはつもりなんだけど。そもそも先生がまだ朝でもないのに「おはよう」って起こすから悪いんじゃないか。

 俺を起こすということは、俺の俺な部分も起きるわけで、全裸タオルケットの先生を放って置くわけがない。だから念を押したんだ。背中合わせの相互ひとりエッチはセーフですよねと。

 だからここは敢えて質問を質問で返す。


「じゃあ、先生は俺が先生のこと、2回で満足する程度でいいんですね?」

「そ、それはだな……」

「無理しないでください。先生が俺に求めてるのは、手を抜いた愛情でいいんだとわかりましたんで」

「いや、違う。無理じゃないし手を抜かないで欲しい。その、あれだ……私はその……言ったろ。勉強ばかりしてきたから慣れてないんだ。頼むからイジメないで欲しい、でないと嫌われたかと思ってしまうじゃないか」


 さっきまでの先生はホントにどこへ行ったんだ。あまりにおろおろして身振り素振りで説明しようとするから、押さえてないタオルケットからポロリしそうだ。きっと変な方向に自分に厳しい先生だから、ポロリしたあかつきには「君を誘惑した責任を取って最後までして欲しい、私が嫌いなのか?」と言い出しそうで怖い。なので、背を向けて「見えたらどうすんです」と苦言を吐いた。 


 背を向けたついでに先生は服を着た。俺も同じように布団の中で着ようとしたが、どうしたことか、先生相手だとイジワルがしたくなる。

「き、君‼ なんでお布団の外で服を着ようとするんだ⁉ しかも、こちらを向いて! そんなの……見てしまうじゃないか……」

 ――からのガン見。

「え、ダメですか。先生が俺に見せるのは、確かに法的にマズいかもですけど、先生は成人ですから見るのはよくないですか。それとも俺の裸なんて見たくないですか」


「み……見たいです」

 急に敬語。わかりやすい。そしてわかりやすいほどイジめたい。布団で顔を半分隠しながらも、暗闇の中で目を光らせてるようだ。見えたとしてもシルエットだけだろうが、先生はとんでもないことを口走る。

「あの……ほんの少し――」

「ほんの少し、どうしました?」

「触りたい」

 あっ、イジめ過ぎて壊れた。ダメな方向に壊れた。このままじゃ、押し倒されるのは俺じゃないのか? 危機感を感じた俺は早々に服を着た。先生は小声で「けちん坊」とねた声をらした。


 ん……マズい。このままでは「やっぱし、しようか? そうしよう!」みたいな軽いノリになりそうだ、心なしか。


▢作者より▢


この章を共に歩んでくださり感謝します。

アサガキタ。









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