第12話 君が望むなら。
「おはよう」
ムニュムニュする感覚と共に目を覚ます。もしやこれは先生のふくよかな谷間ではないのかと飛び起きたものの、現実はそう甘くない。なんのことはない、先生がムニュムニュと俺の頬っぺたにイタズラしていただけだ。
「おはようございます。俺はこのムニュムニュ感を先生の谷間だと思い目を覚ましました。高校生男子の純粋な喜びを返してください」
目覚めて2秒で抗議した。抗議はしたものの、この2年間の鬱屈とした日々を思うと夢のようだ。
「ん……それは困った。そうだ、これで勘弁してはくれないか」
「これって?」
「これだ、これ」
ハラリと掛け布団を先生はめくり、現れたのはタオルケットで隠された先生の身体だ。
「えっと、それはつまり、こうですか?『胸を自由にしていいから、勘弁してはくれないか』と? 答えはイエスです」
手を伸ばそうとする俺の手の甲を先生はつねる。
「あの、痛いです。それはつまり夢じゃないということで――俺が先生の胸を自由にしていいことになりませんか?」
「なりません」
意外と素っ気ない。おかしい、昨晩は背中越しにひとりエッチをした仲じゃないか。しかも今しがたつねられたばかりで、夢じゃないことは証明済。
「意味がわかりません。俺は先生の提案に乗り、先生の胸を自由にすることで手を打とうかと」
「私の提案は、君の大好きな先生のギリギリショットを見せたことなんだが。もし、仮に――そんなことは言わないとは思うが、仮にこの姿がギリギリショットではないというなら、誰が見ても君は平気なんだ?」
そうきたか……なんか余裕な表情が、なんか――なんかだ。しかし、人生は
「先生、昨日我慢したご褒美が欲しいです」
「なるほど、それもわからないでもない。つまり君はご褒美に私の胸が触りたいと?」
「まあ、そうです。ただ付け加えるなら、触りたくて仕方ありません。この熱い思いわかりますか」
「わかるよ。だから私は触ることは禁止していない」
「どういうことです?」
禁止してないなら、それ即ち解禁。先生の胸触りたい放題な未来到来なはずだが、なんだろう、この胸騒ぎ。
「触るのは禁止してないさ。でも、君は昨日決めたじゃないか。我慢できる自分でいたいと。でもね、人なんだ。だから私は言わない『昨日決めただろ、あと1年ないから我慢できない?』とかはね、言わない。人だもの」
解禁に聞こえるがなんか違うようにも聞こえる。何らかの
「えっと……先生?」
「わからないか、そうか。それも仕方ない。言ったろ、私は君を好ましく思ってる、唯一の男性だよ。だから、君が望むならなにも規制を設けるつもりはない。ただ、この事だけは理解して欲しい。胸を触るなら最後までして欲しい」
最後までというと、その……最後までということだよなぁ。聞き違いでも勘違いでもない、そういう男女の営みの行きつく先のことだろう。でもわからない。先生の言わんとすることがわからない。だから、ここも素直に聞くしかない。間違った理解で済ましていいことではない。
「すみません、先生。俺には先生が言ってることが、いまいち理解出来てないです。いや、正直なところ俺としてはほんの少しお触りしたいかなぁ、みたいなのはあります。でも、最後までは昨日も言いましたが1年待とうかと――」
「うん、君の気持には感謝してる。いやむしろ、冗談抜きで敬意さえ抱いているよ。君くらいの年頃の男子は、この世界で最も禁欲から遠い存在だしな。だから――君に敬意を抱く者として分かりやすく説明するよ。つまり、簡単なことなんだ。私が君に胸を触らせることを容認するということは、色々と問題がある。この場合の問題とは法律的な問題という意味だ。もうすでに、十分法律に触れてることは申し訳ないが棚にあげさせて欲しい。これは単なる自分ルール。知ってるかい、私は存外自分に優しいみたいだ。いや、違うか。甘いんだね、単に。それは仕方ないよ、だって誰も私を甘やかしてはくれないもの。だから、今夜くらいの
わかるようで、まったくわからない。唯一わかるとするなら、難しい言葉を並べて
「私は、もし
先生はそう言って指先で1センチくらいの大きさを作った。
「長くなった後でこういうのも変だが、
「同じ、ですか?」
「うん、そうだね。さっきと同じ。胸を触るなら最後までする覚悟で触って欲しい。でも、これは君に対しての覚悟を呼び掛けてるのでもなければ、最後までするなら嫁に貰う覚悟でしなさい、なんて俗っぽいことを言いたいんじゃない。とはいえ、抜け道は作らせてくれないか。君が成人して望む大学を卒業して、それでもなお、私を望むなら――もちろん君のお嫁になりたいが、いまそんなこと言っても
そんな気はしていた。難しいことは何一つない。先生は俺にすべてのサイコロを預けてくれた。いま振るでもよし、1年後でもよし、君の思うようにしていい、そう言っているだけだ。それでも俺は食い下がる。
「先生、それならせめて二の腕を触るくらいはいいですか?」
「二の腕? あの、二の腕の弾力と胸が同じという、あれか。でも、それは皆が皆、同じとは一概には言えないぞ?」
俺は先生の言葉をなぞるように、二の腕とタオルケットに隠されてもわかる、隠しきれない「ぼよん」という擬音が聞こえてきそうな胸を見た。確かにほっそりとした二の腕と、この巨大な胸の弾力が同じとは思えない。
「先生。ここは対比させてそれぞれの弾力を確かめてみたいと思うのですが」
「構わないよ、ただ最後までして欲しい。どうした、タオルケットを取ろうか? 遠慮はいらない」
俺は平謝りに謝りながら背を向けた。そんな俺の背中に「意気地なし」と先生は笑いながら呟くが、その通りだと思う。
▢作者より▢
次の場面へ進む前に感謝を伝えます。
アサガキタ。
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