4話「異世界の副作用編」

胸の奥でじわじわと広がる違和感。

最初は疲れのせいだと思っていた山田ケンタだが、日に日に発作は強まり、夜は眠れず、日中もふいに息が詰まるようになっていった。


「……おかしい。日本の過労ダメージって、異世界にまで持ち越すのか?」


そんな冗談を口にしてみても、笑えなかった。



◆ 王宮医師の診断


「これは……“召喚障害”ですな」

王宮の老医師が眉をひそめる。


「召喚障害?」

「異世界から呼ばれし者が、この世界の魔力と長く接することで体内に歪みを生じる病。放っておけば……命に関わる」


「……マジか」


ケンタの背筋に冷たい汗が流れる。

異世界で初めて、自分が“死”を身近に感じた瞬間だった。



◆ 女王からの提案


「ケンタ殿……」

女王は苦渋の面持ちで言った。

「病を癒すには、“大地の心臓”と呼ばれる秘宝が必要だ。しかしそれは、魔境エルダ渓谷の奥深くに眠る。かつて誰一人戻らなかった禁断の地だ」


「つまり……取りに行けってことですか」

「無理にとは言わぬ。ただ……このままでは、そなたの命が……」



◆ 決断


ケンタは拳を握りしめた。

「……俺は、異世界に来て初めて、人に必要とされてるって思えたんだ。ここで死んでたまるかよ」


冒険なんて、自分には縁がないと思っていた。

だが今度ばかりは、裏方でやり過ごすわけにはいかない。


「――行きますよ。その“魔境”に」



◆ 新たな旅立ち


こうして山田ケンタは、初めて剣を腰に下げ、仲間と共に危険な地へ踏み出すことになる。

物流大臣から一転、命を懸けた探索者へ。


だがまだ、この時の彼は知らなかった。

“魔境エルダ渓谷”に眠る秘宝が、ただの治療薬などではなく――世界の均衡を揺るがす存在であることを。

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