2話「物流改革編」

物流大臣に就任してしまった山田ケンタ。

だが実際のところ、やっていることは日本の中小企業で身につけた“効率化オタク”の習性を活かしただけだった。


「まずはピッキング作業の動線を整理しよう」

「ピッ……キング?」

現場の兵士たちは首をかしげる。


木箱に詰められた物資の山を前に、ケンタは図面を広げる。

「ほら、武器は武器、食料は食料で棚をまとめる。出荷先ごとに分ければ探す時間が半分になるんだ」

「な、なるほど……!」


さらに彼は、簡単な表を作って在庫数を管理。

「在庫切れ? なら補充指示を早めに出せばいい。欠品ゼロを目指す!」

「さすが大臣!」「魔法のようだ!」

……いや、ただの日本式倉庫業務である。



そんな矢先、隣国から緊急要請が舞い込んだ。

「魔物の群れが暴れておる! 兵糧の支援を頼む!」

王国は慌てふためくが、ケンタは冷静に答えた。


「大丈夫です。すでに備蓄を別倉庫に移してありますから、すぐ輸送できます」

「なんと!?」


日本で叩き込まれた「リスク分散」の知識が、異世界では“先見の明”と崇められた。

補給の遅れはなく、隣国軍は勝利。王国の名声は大いに高まった。



その夜。

ケンタは城のバルコニーで星空を見上げていた。

「……結局、戦うのは兵士や冒険者で、俺は物資を回してるだけか」

ふと、自分が“裏方”として生きるしかない運命なのかと考え込む。


そこへ現れたのは、彼を見守っていた女王だった。

「ケンタ殿、そなたの力がなければ勝てぬ戦であった。剣を振るう者だけが英雄ではない」

「……女王様」


彼の胸に、少しだけ温かなものが広がる。



だがその裏で。

「余所者にいい顔をさせおって……」

「物流大臣だと? 我ら古参貴族を差し置いて!」

王国の一部の有力者たちが、不満を募らせていた。


そして次なる陰謀が、静かに動き始めていた――。

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