第13話:宮廷からの卑劣な刺客
エリアスがヴィクターの呪いを解こうと決意を新たにした頃、王都から放たれた宰相の密偵は、ついに核心に迫っていた。
密偵はセドナ村に潜入し、エリアスの作るポーションが噂通り、いや、噂以上の奇跡的な効果を持つことを突き止めた。報告を受けた宰相は、歪んだ笑みを浮かべた。
(やはり、あの男だったか。無能ではなかった、利用価値のある駒だったというわけだ)
宰相の欲望は、瞬く間に膨れ上がった。あのポーションがあれば、兵士の士気を自在に操り、恐怖心さえも消し去ることができる。まさに、戦争を有利に進めるための切り札だ。
彼はエリアスの力を独占し、軍事利用するために、彼を力ずくで王都へ連れ戻すよう、次の命令を下した。
「抵抗するなら、村ごと潰しても構わん」
その非情な命令は、直ちに実行に移された。
エリアスの側に常にいる氷の騎士、ヴィクターの存在を警戒していた。そして、彼が騎士団の重要な公務で、どうしてもセドナ村を離れなければならない日を正確に狙ってきた。
ヴィクターが村を発った、まさにその日の夕暮れ。
セドナ村の穏やかな空気が、突如として引き裂かれた。黒尽くめの武装した男たちがどこからともなく現れ、あっという間に村を制圧したのだ。彼らは宰相が差し向けた、汚れ仕事専門の私兵部隊だった。
「騒ぐな! 命が惜しければ、大人しくしろ!」
刺客たちは村の広場に女子供を集め、人質として刃を突きつける。突然の出来事に、村人たちは恐怖に震えることしかできなかった。
その混乱の中、一人の男がエリアスの家の扉を蹴破った。
「エリアス・アルトマンだな。我々と共に来てもらう」
「……あなたたちは、一体!?」
「宰相閣下のご命令だ。お前のその力、国のために役立ててもらう」
男の背後では、女将やリリーが青ざめた顔で捕らえられているのが見えた。大切な村人たちが、自分のせいで危険にさらされている。その事実が、エリアスの心を絶望の淵へと突き落とした。
抵抗すれば、皆殺しにされるだろう。
「やめろ……! 村の人たちには、手を出すな!」
「ならば、話は早い。無抵抗で我々に従え」
エリアスに、選択肢はなかった。自分の身一つで、この村の平和が守れるのなら。
彼は悔しさに唇をかみ締めながら、ゆっくりと両手を上げた。
大切な村人たちを危険にさらすわけにはいかない。
エリアスは、刺客たちの前に無抵抗でひざまずいた。手際よく両手を後ろ手に縛られ、目隠しをされる。遠ざかる意識の中で、リリーの泣き声が聞こえた気がした。
ヴィクター、と心の中で彼の名を呼んだが、助けが来るはずもなかった。
エリアスの身柄は、こうして王都の深い闇の中へと、再び引きずり込まれてしまった。
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