第二十二話 「お前、あの組織の仲間か……?」

 風が止むと、男はジーンズの右ポケットに忍ばせていた刃物を抜き取り、刃先を舞に向け、彼女に問う。


「お前、あの組織の仲間か……?」


 男の問いに、舞の眉間に多くの皺が寄る。


「組織……?」


 なんのことか理解できない舞は、逆に男に問う。


「どんな組織?」


 男は刃先を舞に向けたまま、低い声を飛ばす。


「とぼけるな……」


 次の瞬間、男は舞に襲いかかる。


 刃先が徐々に舞に迫る。


 舞は軽やかな動きで刃先を避けると右手に拳を作り、声をやや荒げ、さらに問う。


「とぼけてなんかいない。どんな組織?」


 舞に背中を向けていた男は体の向きを百八十度変え、再び刃先を彼女に向ける。


「俺が言ってるのは……」


 男は低い声でこたえ、再び舞に襲いかかる。


 舞は避ける動きを見せることなくその場でどっしりと構える。男との距離が一メートルを切ったところで、右手の拳を突き出す。


 舞の拳は男の右前腕を捉え、手を開かせる。


 刃物が床を叩くと、男は舞に鋭い眼差しを注ぐ。


「俺たちの目的を邪魔する組織の仲間かってことだ」


 そして、床を叩いた刃物を素早く拾うと、刃先を再び舞に向ける。


 舞は軽やかな動きで刃先を避けると、重みのある声を発する。


「仲間じゃないよ……」


 舞の声が止むと、男は振り向く。


 舞は男と視線が合うと体を捻り、右手の拳を下から上に突き上げるような動作を見せる。


 舞の拳は男の顎を捉える。だが男はしっかりと踏みとどまり、鋭い眼差しで眼前を見据える。


 舞は拳を解くと、言葉を続ける。


「私は、ただの高校生……」


 そして勢いよく駆けだし、男の右前腕を右掌で捉える。そしてそのまま右前腕を強く握り、怪力を発揮するかのように男を投げ飛ばす。

 

「だよ」


 二文字発した舞の目の前には、大の字の状態になった男の姿があった。

 

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