第十八話 鋭い刃

 組織の人間が潜んでいないか、建物内を鋭い眼差しで眺めながら歩みを進めていると、茶色のドアが見えてきた。


 舞はそのままドアの前まで歩き、歩みを止める。


「ここには、何があるんだろ……」


 もしかしたら、仲間が身を潜めているかもしれないと、舞は細かい注意を払いながら銀色のドアノブを右手で握り、ゆっくりと捻る。


 ドアを手前に引きていくと、薄暗い空間が舞を出迎える。


「テレビ……」


 言葉を漏らした舞の視線の先には、大型テレビが見える。


 ドアをさらに引いていき、完全に開くと、静かに右足から踏み込む。


 灰色のカーテンによって、室内は薄暗い空間に包まれていた。


 舞は室内を見渡しながら、歩みを進める。


「リビングみたいだけど……」


 リビングとは雰囲気が違うと、舞は感じていた。


 窓際のカーテンの前に立つと、灰色の素材を右手の親指と人差し指でつまむ。


 その時だった――。


「お前か。仲間を倒してくれたのは……」


 重みのある男の声に、舞はカーテンを開こうとした動きを止める。


 徐々に足音が近づくにつれ、舞の口元が緩んでいく。


 その姿はまるで、次の戦いに心を躍らせているようだった。


 足音が止んですぐ、舞はゆっくりと振り向く。


 目の前には、鋭い刃を舞に向ける男の姿があった。

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