第十三話 時計塔のような白色の建物
舞は裏道を抜けると、十字路を右に曲がる。
「どこに行ったんだろ……」
舞が目にしたのは、男が十字路を右に曲がった姿で、その先の足取りは分からない。
手がかりはないが、舞は道なりを進んでいくことにした。
閑静な住宅街を歩んでいき、やがて目の前に丁字路が見える。
「どっちに行こうかな」
どちらに進んでも、住宅街が続く。舞は気まぐれに左を選び、歩みを進めていく。
しばらく進むと、閑静な住宅には不釣り合いな高く聳え立つ白色の建物が見える。
舞は物珍しそうに建物の外観を眺める。
「タワー……」
ファックスに記載された内容のキーワードを口にすると、舞の足が止まる。
「まさか、あれ……?」
疑問を投げかけるように言葉を漏らし、目つきをやや鋭くさせると、再び歩みを進める。
(ファックスに記載されたタワーは、あれのことだったのかな……)
白色の建物の目の前で足を止め、外観を眺める。
時計塔のような四角柱の建物で、窓のようなものは見つからない。あるのは、入口のドアのみだ。
いかにも怪しげな建物だが、これがファックスに記載されていたタワーだと決まったわけではない。
「ここなのか、別の場所なのか……」
舞は唸るように息をつく。
しばらく建物の外観を眺めると、どこからか男性のやさし気な声が聞こえてきた。
周囲を見渡すが、人の姿は見えない。
再び建物の外観に視線を注いだ瞬間、舞に背筋に何かが走る。
舞は険しい表情を浮かべると、勢いよく振り向く。だがそこに、人の姿はない。
男性の声はいつのまにか止み、静寂が住宅街を包む。
(ここからどうしよう……)
舞は静かに息をつくと、バッグからスマートフォンを抜き取り、画面を表示させる。
「九時の方角……タワー……」
こう呟くとマップアプリを開き、現在地を確認する。
「住宅街を抜けると、車道。横断歩道を渡ってさらに進むと、駅があって……」
タワーはこの白色の建物か、それとも別の場所か……。
頭の中で考えを駆け巡らせ、舞は目を皿にするようにスマートフォンの画面と睨めっこした。
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