第十話 「ぜったいに守ってみせる……!」

 女性の背中を見届け、包装紙の赤地に白文字で記された商品名を眺める。


「無意識に出た拳が当たって、それがあの人の役に立つことに繋がった。私は大したことはしていない。でも、あの人は喜んでいた。そして、私にお礼としてチョコレートを手渡した。チョコレートは大好き。でも、お礼をされることのほどでは……」


 どこか複雑な気持ちが声になる。


 だが、そんな気持ちをひとつの感情にするように、やさしい風が正面から吹きつける。


 舞はゆっくりと顔を上げると、チョコレートを手渡した女性に向けて言葉を届ける。


「チョコレート、ありがとうございます。目的地までお気をつけて」


 それからすぐ、舞は男を起こし、交番まで送り届けた。



 交番勤務の警察官に頭を下げ、舞は十字路の手前まで歩みを進めると立ち止まり、スマートフォンの地図アプリを開く。


「電車で台府まで行って、西に進んでみよう」


 しばらく画面を眺めるとスマートフォンをバッグにしまい、中町駅に歩みを進めていく。


 途中、舞の背後から風が吹き、彼女の足を速める。気付いたころには、中町駅前の広場に到着していた。


「別な方角なのかもしれないけど、行ってみないことには分からない。三十分ぐらい西に進んで、ファックスに記されたタワーを連想させるようなものが見つからなければ、引き返そう」


 足を止め、そう呟いた舞は駅舎に歩みを進め、券売機で切符を購入し、改札機を抜ける。エスカレーターで乗り場まで上ると、列車の到着を待つ。


 ホーム上では、同じ北東学園高校の生徒が列車の到着を待つ。


 その中には、舞のクラスメイトである女子生徒の姿もあった。


 彼女の横顔に一瞬だけ自然を注ぐと、舞が呟くように言う。


「ぜったいに守ってみせる……!」


 それから二分後に列車が到着し、ドアが開くと舞は乗車し、吊革につかまりながら台府駅まで揺られた。


 

 

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