第五話 始動
「舞、俺たちもできる限りの力を尽くす。お前の気持ちを無駄にしたくない。大事な生徒が命を捨てる覚悟で戦いに出向くんだ。教師が尽力するのは当然だ。万が一のことがあったら助けに行く。当然だろ?」
青山は舞にやさしい眼差しを注ぐと、目の前の彼女の頭に右掌を置く。
「繰り返す。俺たちもできる限りの力を尽くす」
青山は小さく頷くと、二年一組の教室に歩みを進めていく。
彼の姿が二年一組の教室内に消えると、舞は力強い眼差しで眼前を見据える。
「先生、ぜったいにこの街を、皆を守ってみせる……! 私にできることで、組織に立ち向かう……!」
舞は青山に言葉を届けると右足から歩みを進め、自身の席へ赴いた。
この日の放課後、舞は教室内で青山から一枚の用紙を受け取る。
その用紙には、十行以上にも及ぶ文章が記されていた。
最下段まで読み終えると、舞は青山と視線を交わす。
青山の前の前で舞は、覚悟の窺える鋭い眼差しを作っていた。
「これが、舞宛てにファックスで送られてきた組織の人間と思われる人物からのメッセージだ。組織の拠点については記されていない。だが、気になる言葉が記されている」
青山の言葉を聞き、舞は再び文章を目で追う。やがて、舞の目にこのような文章が飛び込む。
【
舞はこの一文を凝視しながら、頭の中で場所を探り始める。
(九時の方角って、北を十二時に例えると、西か。でも、台府市内の西方向にタワーなんてあったっけ……)
舞は首を右に傾げ、頭の中に台府市内の光景を映像として流す。
たが映像の中に、タワーと呼べる建物が登場しない。
やがて舞は目を閉じ、わずかに眉間に
それから二分後、舞は普段作らない表情に疲れたように、眉間の皺を消し、目を開ける。
「台府の西方向にタワーのようなものはない。何かをタワーに例えているのかもしれないが、俺も他の先生方も見当がつかなかった。ヒントをファックスで尋ねたが、返信はなかった。きっと『自分で見つけ出せ』ということなんだろう。とにかく、手がかりはそれしかない。それを頼りに奴らの拠点探す。そこからだ」
舞は真剣そのものの表情で青山の言葉に頷くと用紙を四つ折りにし、ブレザーの胸ポケットにしまう。
そしてわずかに口元を緩めると、青山に告げる。
「ぜったいに奴らの拠点を見つける。そしてこの街を、皆を守ってみせる。約束する!」
舞の背後では窓越しに太陽が眩いほどの輝きを放ち、彼女の追い風になるようなやや強い風が窓を叩く。
早川舞は風が止むと、戦いに赴く戦士のように、ゆっくりと右足から歩みを進めだした。
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