第17話 基準は曖昧
嗜好品か生活必需品か。
その判断は、本当に難しい。
いい加減に判断していないと信じたいけれど。
実際どうかは、わからない。
「ごちそうさまでした」
夏目君は、満足そうに笑っている。
この笑顔を見られるだけで、今の私は十分だ。
「じゃあ、行こうか?」
「はい」
私と夏目君は、立ち上がった。
「ありがとうございました」
店から出て歩き出す。
夏目君は、前だけを見ながら話し始めた。
「青葉さんって、車は乗っているんですか?」
「ああ、乗ってるよ」
「それって、
「そうだよ」
「そうなんですね!今度、乗りたいです」
「構わないよ」
「嬉しいです」
私の言葉に夏目君は、嬉しそうに喜んでいる。
今の時代、車は、みんなにとっての生活必需品だ。
車を持たない人は、ほとんどいない。
理由は、簡単だ。
維持するお金が安いから!
電車やバスなどの公共機関は、いっきに値上がりした。
電車とバスは、乗るだけで1000円以上の料金が取られる。
車は、その点、空気の力で動くシステムに変わり、ガソリン代がかからなくなった。
だから、維持するのが安い。
そのお陰で、ほとんどの人が車を持っているのだ。
車検代は、国がチケットをくれるシステムになっている。
ただ、チケットだけで足りない分は自分で払わなければならない。
軽自動車だと国がくれるチケットで十分足りる。
それ以上の車になると自分が不足を払うことになる場合が多い。
車だけじゃない。
収入の低いものは、税金を払う必要がなくなったのだ。
今は、高収入と判断されたものだけが国に税金を納めるシステムだ。
医療分野が、衰退しているこの時代では、病気は医者に行って治すものでもない。
医者のかわりに呪術師と呼ばれるものと
そのせいで、病院のほとんどが潰れている。
「青葉さん、楽しみにしてますね」
「もちろん」
夏目君の言葉に、私は我に返った。
そうだった。
さっき考えていたのは車の話だったのに、何故か途中で医療の話しにかわってしまっていた。
車の話に戻ろう。
私が、今、乗っている車は、いわゆる高級車だ。
高級車のいろんなグレートの中でも、私は
普通は、みんな自分で運転するのだが。
私は、迷わず
だいたい、社長さんや収入がある人はそれを選ぶのを聞いたからだ。
運転手付きなら、安全な上、お酒も飲める!
昔は、人間が運転手をしていたが、それは禁止になったのだ。
自分の車以外を運転すれば、300万円の罰金か逮捕されるようになった。
その代わり、運転は全てロボットがやる事になっている。
もちろん、バスや電車を運転するのもロボットだ!
飛行機や船も同じだ。
「青葉さん」
夏目君の声で、現実に引き戻される。
「どうした?」
「これ、綺麗ですね」
夏目君は、一軒の花屋の前で止まった。
「そのお花は、贅沢だよ」
夏目君が指差した百合を見ながら、私は言った。
「それでも、青葉さんに買ってあげたいんです」
「いいよ、いいよ。こんな高いお花はいらないよ」
私の言葉を無視して夏目君は、お店に入って行く。
花は、お供え花以外全て嗜好品扱いになっているのだ。
嗜好品になっても、人々は花が好きだ。
百合を買うなら、コーヒーが飲める。
なのに、夏目君は……。
「一輪しか買えなかったですけど。どうぞ、青葉さん」
「ありがとう」
「昨夜と今朝のお礼です。まあ、青葉さんのお店に飾られている花に比べたらしょぼいですよね」
「そんなことはないよ。私のデスクに飾らしてもらうよ」
確かに私は、【青空】の入り口と受け付けに大きな花瓶に花をいけてもらっている。
それだけで、毎月30万以上はとられる。
しかし、その花よりもこの百合の方が嬉しい。
夏目君の気持ちのこもった花。
オーダー【筆師が愛した顔】 三愛紫月 @shizuki-r
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