第10話 手紙と魔術師 6
静寂が戻ると、セレナが頬杖を外し、ゆっくりと立ち上がった。
「……やっぱり面白い融合体だったわ」
その声は戦いの緊張をまるで感じていない。
「人と魔獣の融合なんて、成功例はほとんどないのに……よくここまで仕上げたものね」
瞳の奥に研究者特有の光が宿る。
「でも——古代魔法の怖さは、こういうところにあるのよ。作るのは簡単でも、制御は……ね」
セレナは扉の前から一歩も動かず、レオンを見据える。
「古代魔法は今や国の管理下に置かれ、研究も厳しく制限されている。理由は簡単——扱いを誤れば、時代そのものを壊す危険があるから」
そして、口元に笑みを浮かべた。
「あなた、どこまで古代魔法を解読しているのだね?」
フィオナが眉を上げる。
「へぇ……そんな危ないもの、なんでレオンが研究してんの? 趣味にしては物騒すぎない?」
半分冗談めかしながらも、視線はレオンに向けられている。
セレナの視線がルゥに流れる。
ルゥは一瞬だけ目を伏せ、尾を小さく揺らした。
「……やめろ」
レオンの低い声が霧を裂くように響く。
「これ以上は話すな」
セレナは笑みを崩さず、一歩近づく。
「相変わらず、肝心なところは黙るのね。……だから面白いのだけれど」
そしてふと思い出したように振り返る。
「そうだわ……今度また《ギフト》の魔法、見せてちょうだい。——もちろん、“教える”つもりがあるなら、だけど」
レオンは何も答えずに背を向けた。
その沈黙が、セレナの笑みをさらに深くする。
「ちょっと待って!」
フィオナが慌てて声を上げ、レオンの後を追う。
霧の中に二人の足音が消えていく。
残された静寂の中で、セレナは倒れたままのガレスに一瞥をくれる。
「……オルヴィスも悪趣味な魔法ね。こんなもので私に勝てると思ってないでしょうに」
唇に薄い笑みを浮かべ、視線を細める。
「私の魔法の解析をしたかったのか……もしくは……」
言葉をそこで切り、ゆっくりとレオンが去った方へ目を向けた。
「そんなに彼に興味があるのかしら……」
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