第五巻 御子の誕生と六人目の妃
第二十三帖 灰廉「次の皇太子は誰?」
後宮生活を始めて、二度目の春。
年明けの翡翠君の御産を皮切りに、紅玉君、黒曜君、珊瑚君、そして最後に、
「ふう……
わたくしだけまだ懐妊していない、なんて状況になりました時は、気が気ではございませんでしたよ!」
こう仰られて肩を撫で下ろす瑠璃君が無事御産を終えられ、無事、五人の妃それぞれの御子たちが出揃いました。
わたくし、灰廉も……
実に、色々な意味で精を出しましたよ……
御子のいない時はほぼ毎晩毎晩、誰かしらと激しい夜を過ごし、
妃たちが次々に懐妊し始めたらし始めたで、瑠璃君の焦燥を宥めるのに一苦労し……
思えばわたくし、幼少期より、家庭教師の先生からの宿題は早く終わらせて、一刻も早く責務から解放されたいという質にございますからねえ。
ひとつの大きな使命を、ひとまずは果たして肩の荷が降りたという心持ちでございます……
「皆様、たいへんお疲れ様でした。
どの御子もお妃様方も、お元気そうで何よりです。
これで皇室も安泰、感謝してもしきれませぬ。
灰廉も甲斐甲斐しく御子たちの御世話を頑張っているな」
珊瑚君と翡翠君が共同開発した、産後の身体に良い薬草拉麺を皆で食している
「ふむ、まとめると、こうか……
女一宮、翡翠君の子、
女二宮、紅玉君の子、
一の宮、黒曜君の子、
二の宮、珊瑚君の子、
女三宮、瑠璃君の子、
たしかに、わたくしから見ればそうなりますか
……妃達にとってはそれぞれ第一子でしかないはずなのに、奇妙な話ですが……
「ところで、こうして皆様を呼び集めた理由は、なんとなくおわかりとは思いますが
……灰廉の次の皇太子立坊についてです」
父上の言葉に、全員が息を呑みました
……が、わたくしは覚えております。
「いやいや、父上。
後宮を復活なされる際、ここまで滅亡間際に追い込まれたのだから、この際、直系であれば性別はどちらでも良いと仰られてましたよね?
実際、女性が皇位についた例もあることですし、長子の翠銅宮以外に選択肢がおありなのですか?」
「ええっ?!
そ、それは姫君しか産まれなかった場合、ではないのですか?!
過去の女帝とて、適齢期の男性皇族が不在だった時のみではないですか」
御自分が
父君とただならぬ仲な時期がございましたり、女房上がりであったりという辺りで、引け目でもあるのでしょうか。
「うむ、わたくしもそのつもりだったのだが、言葉足らずだったか、灰廉には正しく伝わっていなかったようだな」
翡翠君は胸を撫で下ろしました
……と、同時に黒曜君が
「と、ということは尖晶が次期皇太子、わたくしが国母にございますか……?!
さ、さすがに父があのような謀反を起こしたわたくしは国母から除外、ですよね?!」
ま、まあ……
彼女にはそれ以上の、わたくしの暗殺を謀ったという、隠された大きすぎる
「さ、左様であられても、黒曜様は生家が名家で、素晴らしいお妃教育を受けておられ、気品がございます故、わたくしよりは相応しゅうございますよっ!
わっ、わたくしなどこのような庶民的な風体で、現実に小作人の娘にございますよ?!
複数の妃のうちのひとりならまだしも、唯一の国母として振る舞うなど、あまりにも御恥ずかしゅうございますわ!」
自らにお鉢が回ってくると察した珊瑚君は、大いにお慌てになり、御顔の前でぶんぶんと御手を振られました。
「な、なぜ皆、そのように国母のお鉢をたらい回しにするのだ
……お鉢なのにたらい回しというのも、妙な話だが……」
父上が首を傾げるのも、無理はないのかもしれません
……翡翠君、黒曜君、珊瑚君を心から国母に相応しいと御思いになり後宮入りさせたものの、実際に彼女らと幾度も夜を共にするでもない父上に、彼女らの裏の顔や、細やかな内心までもが、わかるわけがないのですから……
逆に、御自分の御子が第一子でも男子でもない紅玉君と瑠璃君は苦い顔をしているのですから、世の中、ままならぬものです。
「なるほど……」
その瑠璃君が神妙な面持ちで口を開かれました。
「ときに金剛帝様、灰廉様への譲位はいつごろをご予定されておりますか?」
「うーむ、灰廉が三十の歳を迎えた辺り、と考えておりますが……?」
「でしたら、その折にこの子たち、および今後産まれてくる子たちの中で、最も素質と意欲の芽生えた子を抜擢なさっては……?」
「あー!
たしかにそちらの方が国のためにもなりそうですし、選ばれずとも一桁年齢なら人生の路線変更も容易いですものねえ!」
わたくしは思わず膝を打ちました。
「さようにございますねえ……
仮に本人がやりたいと申しましたら、母親のわたくしが国母が恥ずかしいからと、子の夢を阻むのもよろしくありませんし……」
珊瑚君の言葉に、翡翠君と黒曜君も頷きました。
瑠璃君は拳を握りしめ、静かに闘志を燃やしているようでした。
紅玉君はなにを考えていらっしゃるのか、複雑な面持ちです。
「皆様、お疲れ様でございました。
あっ、灰廉だけは残っておくれ」
なんでございましょう……
居残りを命じられたような、不穏な心持ちがいたしますが……
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