第6話 オマエ ダレダ

 僕が無理やり状況を受け入れたその時、

声が聞こえた。

 

 「オマエ、ダレダ……」

 

 僕は驚き辺りを見渡した。

 誰一人僕に話しかけた様子はない。


 「ナントヨバレテイル?」

 

 聞こえて来た声にむかって僕は声を出した。

 「誰かいるのか?なんで僕に問いかけるんだ?」


 僕の声に周りにいた人々が驚き後退りした。

 焦った僕はその場に立ち尽くした。

 皆が後ろに下がってしまう中、一人の男が

僕の前にやって来た。

 

 僕を最初に見つけた男だった。

 浅黒い肌の彼の黒い眼が僕の目をじっと

見つめると、また声が聞こえて来た。

 「ナントヨバレテイル?」

 僕は思わず「カケル……」と答えた。

 声の主からの反応はなかった。

 

 今度は心の中で「カケル」と念じた。

 しばらくすると、「カケル……コッチダ」

と声が聞こえた。

 

  「えっ? こっちってどっち?」

  僕がきょろきょろと辺りを見渡す。

  そしてすぐに悟った……。


  僕の目の前に立っているあの男が、

 僕の頭の中に直接話しかけていることを……。

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