06 馬鹿じゃないから風邪を引くんだよ(自己暗示)
珍しく色々と考えてしまったからだろうか。
翌日、情けないことに僕は熱を出して寝込んでしまった。
喉の痛みや鼻の違和感は少ないから、マジで知恵熱なのかもしれない。そんなバカな。
外は雨がザァザァと降っている。窓に叩きつけられる雨粒も鬱陶しい。
体調も天気もなかなかに最悪だ。
ポコン、ポコンと枕元からLINEの通知が鳴る。
白川芽衣:昨日はお疲れ様でした
白川芽衣:今日はゼミ室には来ないですか?
白川芽衣:いつも来ていたのでちょっと気になってしまって……!
白川芽衣:すいません
最後にウミウシが謝っているスタンプが添えられている。
さすが白川さん、センスが独特だな……。
響野:ごめん
響野:熱出たみたいで
響野:昨日はありがとう
響野:白川さんも気をつけて
ぼんやりとした頭で打った文章は、中身もぼんやりしていた。
何に対する「ごめん」なんだ。熱出た「みたい」って何だ。ちゃんと出てるわ。「ありがとう」も脈絡が迷子すぎるだろう。
脳内では絶えずツッコミが入り乱れるのに、出力されるのはどうしてもポンコツで嫌になる。
白川芽衣:大丈夫ですか!?
白川芽衣:響野くんって、一人暮らしでしたっけ
おお、反応が速い。
響野:うん
無愛想すぎるだろう、僕。
だけどやっぱり言葉がマトモに出てくれない。相当熱でやられている。
それにしても、こうして文字だけでやり取りをしていると、どこか物足りなさを覚えてしまった。
あの賑やかな心の声が聞こえないことがさびしい――なんて。
ああ、やっぱり僕の頭はやられているらしい。
白川芽衣:それは大変ではないですか? 良ければ、ゼリーとかアイスとかレトルト食品とか、必要なものを買っていきますよ
「……」
僕の頭はどうしようもないほどにやられていたので。
正常な判断ができなくて、僕は白川さんに僕の家の地図を送ったのだった。
* * *
「お邪魔します……」
力尽きて一眠りした後、インターフォンの音で目が覚めた僕は、慌てて白川さんを招き入れた。
白川さんは僕の顔を見て、かしこまった様子で中に入ってくる。
僕はというと――眠ってスッキリしたからか、それはもうひどい罪悪感に襲われていた。
「あの……ごめん。わざわざ来てもらって……こんな天気なのに……本当に情けないですすみません」
「い、いえ! 私から言い出したことですから! 気分はどうですか?」
「罪悪感以外は良くなりました……」
「それは早く昇華させちゃいましょう」
「はい……」
しおしおとうなずいた僕に、白川さんがにっこりと微笑む。
『弱った声キターー! レアボイス~~!』
ああ……ポーカーフェイスでいつも通りのテンションだ。
いつも通りでかえって安心するな。
そう思いかけ、首を振る。体が弱るとこんなことで安心を得てしまうのか。嘆かわしい。
まあ、本当に迷惑ではなさそうという意味ではやっぱりホッとしたけれど。
『あ、寝癖。かわいっ』
はっっっず!
直したいけど、今直したら不自然すぎる……! くそ……!
「色々買ってきましたが……何か食べましたか?」
「い、いや、朝から何も。ずっと寝てたから」
「食欲はあります?」
「そうだね。だいぶ調子も良くなってきたし、そういえばお腹空いてきたかも」
「では、私がお粥を作りますね!」
「え?」
え?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます