第8話 国語の試練の結末
ページの中の物語は、こう続いていた。
『放課後、カナは勇気を出して、ユキの後を追った。校門の前で立ち止まったユキに、カナは、思わず声をかけた。
「ユキ、ごめん、ほんとうに、あの消しゴム、雪が大切にしてたのに。」
ユキは、ゆっくり振り返った。少しだけ、ユキの目が潤んでいるように見えた。
「あの消しゴム、お母さんにもらったやつだったんだ。でも、カナに悪気がなかったのもわかってる。だから、私も言いすぎた。」
その瞬間、カナの胸の奥にあった重たい塊が、スッと消えていいくのを感じた。
「ありがとう」
二人は、少し照れながらも笑い合った。』
文章が終わると、また光の文字が、空中に浮かび上がった。
「友情とは、時に傷つけあうこともある。だが、それを乗り越えてこそ、本当の絆となる。次の問いに答えよ。カナが感じた『重たい塊がスッと消えた』という描写は、カナのどんな心情の変化を表しているか。
A. 体調がよくなって元気が出た気持ち
B. 不安や緊張が和らぎ、安心した気持ち
C. 反省をやめて、開き直った気持ち
D. 友達を許せないまま、突き放した気持ち」
「カナは最後に二人で笑い合っているから、答えは、Bの 不安や緊張が和らぎ、安心した気持ちだ。」
こう答えると、またページがパラパラとめくれて、あるページで止まった。そこには、
『よく読み、よく感じた。お主は、言葉の奥にある心を確かに、受け取った。』
と書かれていた。やがて、ページ全体が、金色の光に包まれ、やがてその光は、本全体にまで広がっていく。そのまま元あった場所に戻り、カチリと金属質な音を響かせて動かなくなった。
「友情には、時に傷つけあうことがある」
か。傷つけるのも、傷つけられるのも嫌で、学校で、人との関わりを拒絶してた気がするな。勉強だけじゃなく、大事なことも……ちゃんと学べた気がする。よし。この調子で、次の試練も頑張るぞ。
こう口にして、国語の試練を後にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます