探検を始めてしばらく森を歩いていると、最初は青白く輝いていた木々が黄色に変わってきた。

「なんで木の色がだんだん変わってくんだ？」

オルフに聞いてみると

「この木はおぬしの気分によって変わるのじゃ。たとえば、悲しかったり、悩んでいたりした時は青、ワクワクすると黄色、怒りを感じると赤というふうにな。」

なるほど、そう言われてみれば今はこの先に何があるのかが気になってワクワクしている。まるで小さい頃に初めて遊園地に行った時のような気持ちだ。こんな話をしていると、池のようなものが見えてきた。小走りで駆け寄ると、目の前にはこれまで見たこともないほど広大な湖が広がっていた。湖面は鏡のように静まり返り、周囲の空気はひんやりとしていて、どこかミントに似た香りがほんのり漂っている。

「その湖をのぞいてみるのじゃ」

オルフがそう言ったので少し怖いけれどのぞいてみる。すると湖に写っている自分の頭上にうっすらと『勉強』という文字が浮かび上がる。驚いてオルフを見ると、

「だんだん忘れてきているがおぬしは勉強ができなくて、悩んでおったのじゃな？」

と確信めいた声で聞いてきた。少しドキッとした。図星だったからだ。はぐらかすこともできたけれど、正直に答えることにした。

「そうだよ。さっき返ってきたテストの点数がすごく悪かったんだ。でもなんでわかったんだ？」

「この湖は魔法の湖でな覗き込んだ者の悩みが視覚的に映し出されるのじゃよ。では聞くがなんの教科が一番好きなんじゃ？」

テストの結果が頭をよぎって少し迷ったけれど、本当に好きな教科は変わらない。

「数学が一番好きだよ」

この答えを聞いたオルフが

「では、まずはあそこからじゃな。ついて来るのじゃ」

と言った。ついて行く途中で

「なんであんなこと聞いたの」

とオルフに聞いてみると、

「この森にはかつての賢い人たちが造った知識を定着させるための試練の場が存在しているのじゃ。お主の悩みを解決するためにまずはどの試練に行くかの参考にしたかったのじゃ。」

オルフがこう答えると、すぐに遠くに建物が見えてきた。小走りで近づいてみると、その建物は青白く光る小さい神殿のようなものだった。この建物の周囲に足を踏み入れた途端、空気がピンと張りつめ、森の音が一瞬だけ消えた。よくみてみると扉に数式が浮かび上がっていた。