第6話絵の中の僕


目を開けると、世界は紙の上に広がっていた。

空も海も、僕の体も、すべて絵の具で描かれた色に溶けている。輪郭のない自分は、まるで空気のようにふわりと漂った。

黒色や藍色の波が体を撫で、触れるたびに心が揺れる。

「……僕は、ここにいるのか?」

声もなく、ただ色と感覚だけが残る。現実の重力も、時間も、遠くに消え去った。

夢の中で感じたあの塗りつぶす感覚が、現実に変わった。

けれど、まだ描きたい、色に触れたい、と思う心だけが、かろうじて僕を留めている。

絵の中の世界で、僕は、体の輪郭も、存在も忘れかけながらも、色と一体化して漂い続けた。


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