第21話 もう泣かない
彼女はふわりと笑い、シュンスケの手をそっと握った。
その瞬間、指の温かさがじんわりと伝わり、心臓がドキンと跳ねた。
(……また、神様がくれた時間か)
シュンスケは黙って、その手を強く握り返した。
「じゃあ……うちに戻るか」
「うん」
タクシーの中、二人は言葉少なだった。
でも、それは気まずい沈黙ではなかった。
繋いだ手の温もりが、言葉より多くを伝えてくれていた。
「……ねぇ、シュンスケ」
「ん?」
「あと何回、こうやって一緒に帰れるかな」
「……さあな。でも、できるだけ多く、帰りたいな」
「うん……私も」
エミリーは小さな声で笑い、シュンスケの肩に頭を預けた。
タクシーの車窓に、街の明かりが流れていく。
一つひとつの光が、まるで二人の時間を祝福するように優しくきらめいていた。
家に戻ると、シュンスケはドアを開け、エミリーを中に通した。
「おかえり」
「……ただいま」
ほんの数日前まで、彼女はここにいなかった。
けれど今、この部屋の空気は、完全に二人のものになっていた。
「……なんか、不思議」
エミリーはリビングを見渡し、ソファに座って笑った。
「さっきまで、さよならって思ってたのに……」
「奇跡だな」
「うん……奇跡」
シュンスケはそっと彼女の隣に座り、腕を回した。
「……もう泣くなよ」
「泣かない。……だって、今日は帰れないんだもん」
「……おい」
二人は顔を見合わせ、笑った。
笑いながら、自然と唇が重なった。
深く、甘く、優しく。
(続く)
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