第18話 もう一度、もう一度だけ

「行ってきます……」




エミリーが小さな声でつぶやき、玄関のドアノブに手をかけた。




シュンスケはすぐ後ろに立ち、必死に微笑んで見せたが、胸の奥は締め付けられるように痛んでいた。




(これで、本当に……終わりなのか?)




ドアを開ける手が少し震えているのを見て、思わずシュンスケはエミリーの手首をそっと掴んだ。




「……エミリー」


「……シュンスケ……?」




振り返った彼女の青い瞳に、うっすらと涙の膜が張っていた。


一瞬、見つめ合っただけで、もう抑えきれなかった。




「……行くな」


「……っ」




言葉がこぼれた瞬間、二人の体が引き寄せられた。


シュンスケは彼女の腰を強く抱きしめ、玄関で唇を奪った。




「んっ……! シュンスケ……だめ……もう……!」


「もう少しだけ……もう少しだけでいい……!」




キスは深く、甘く、激しくなる。


エミリーの小さな体が震え、腕が自然に彼の背中に絡みつく。




「だめ……でも、シュンスケのこと……好きすぎて……!」




抑えてきた感情が、堰を切ったように溢れ出す。


玄関先でキスを重ね、彼女をそっと抱き上げ、そのままリビングのソファへと運び込む。




「シュンスケ……服、脱がせて……」


「……っ」




小さな手がシャツのボタンにかかり、震える指先で一つずつ外される。


彼女のブラウスも同じように、彼の手でそっと滑り落ちる。




「もう……間に合わなくてもいい……」


「だめだ……ちゃんと帰さなきゃいけない……なのに……」


「……やめられない、でしょ?」


「……ああ」




二人はお互いの体を求め、再びソファに倒れ込んだ。


肌が触れ、熱が混じり、吐息が重なる。




「シュンスケ……シュンスケ……!」


「エミリー……好きだ……!」




彼女の足が腰に絡み、背中に爪がそっと立つ。


唇は何度も重なり、名残惜しむように、愛おしむように、体を重ねる。




「んっ……だめ、そんなに強くしたら……!」


「もう、止められない……」


「私も……もう、シュンスケに全部、あげたい……」




彼女の瞳は涙で潤み、笑いながらも、泣いていた。


二人の体は繋がり、心は一つに溶け合っていく。




「シュンスケ……ずっと忘れない……」


「忘れさせない……絶対に……!」




絶頂の波が何度も押し寄せ、二人は深く抱き締め合った。


ベッドに移動する時間も惜しむように、リビングのソファで、玄関先で、再び体を重ねる。


ただ、愛し合うことしかできなかった。




静寂が訪れ、シュンスケはそっとエミリーの髪を撫でた。


彼女は彼の胸に顔を埋め、静かに涙を流していた。




「ごめん……飛行機、間に合わないかも……」


「いい……それでもいい……」


「エミリー……」


「また、来るよ。必ず……」


「……待ってる」




互いに抱き締めた腕を、決して緩めることはなかった。


愛し合った温もりは、ずっと胸の奥に刻まれ続ける。




(続く)





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