第16話

鈴木にバレないよう忍び足を佐藤に強要し、外へと出る。


そして全力疾走で家へと逃げ帰ろうと頑張った……結果、すぐに捕まり近くのカフェへと連れ込まれてしまった。








「何なの清子ちゃん」


「なにが」


「もうなんか……行動とか全部。予測不可能すぎて吃驚なんだけど」





1杯の砂糖だけを混ぜたブレンド珈琲を嗜む佐藤は、いつもより大人に見える。


きっと彼のこういう所が、数々の女子が放っておかない魅力なのだろう。








奢ってくれるらしいアイスティーを1口味わいながら観察していれば、目の前の佐藤も同じよう視線で私を調べていた。








「いやはや。人間って摩訶不思議。」


「…………佐藤、意味分かんない。」


「それはこっちの台詞」


「いいよ言って」


「…………清子ちゃん、そっちが素なの?」





ことり。オシャレなグラスを机に置く。


佐藤が言う“そっち”は十中八九、今の私の容姿スタイルのことだろう。








遊園地のときでさえ貫いていた三つ編みは、ゆるいウェーブがかった黒髪ロングに。


伊達だったメガネを外した瞳は、母からの遺伝で明るい茶色に。





白のショートパンツと黒のピッタリ春ニットというシンプルな服装は、それらをより引き立てているのだろう。


私の普段を知っている者なら尚更。








「うん」


「そっか」


「…………地味にしてる理由、聞かないの?」





カラカラとストローで氷を混ぜながら、佐藤に問いかけた。


視線はもうずっと、合わせられない。



店内に流れる音楽が癒し系過ぎて、なんだかいたたまれなくさえなってきていた。

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