鈴木は暖かい人だ。
第15話
「チョコとバニラ、どっちかひとつな。」
あれから3日後。
雨の土曜日。
無性に甘いモノが食べたくなった私は、近所のコンビニへと足を運ぶ。
そして、入店したと同時に見知りすぎている派手な男の声が聞こえてきた。
反射的に隠れ、こっそりと様子を伺う。
奥のアイスクリームコーナーには案の定、鈴木。
そして、小さな小さな女の子。
「りょうほう、だめ?」
「だめ。晩ごはん食べれなくなるぞ」
「はぁーい……」
まだ小学校入学前くらいの歳に見える彼女に言い聞かす鈴木の姿は、ただの良いお兄ちゃんにしか見えない。からたぶん、妹さんなのだろう。
コンビニに来る前。
相変わらずの着信。
メッセージ。
パニックになりそうな心。
必死に抑える怒り。
堪える悲しみ。
そして何故か思い浮かんだ、鈴木のこと。
相談したい、助けてほしい。
そう強く望んでいた、自分の変化。
走馬灯のように、甘い喰べモノで誤魔化そうとしていた気持ちたちを浮かべていた。
だから、馬鹿な私は気が付かない。
トントン、と指で弾かれ肩。
驚きと共に振り返ればいる、相手に。
「何してんの、清子ちゃん?」
気付くことは、出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます