第11話
真っ青から真っ白、そして真っ赤へと目まぐるしく変貌する顔色の鈴木は、照れ屋さんだと思う。
それでも、緊急事態なのだから致し方ない。
「ほら、パーカーで顔隠せば平気じゃない?」
「…………まじで?」
「うん。大真面目。」
動揺を隠せない相手に真顔で頷く。
初心な女子中学生のように戸惑いながらも、鈴木は恐る恐る横になってくれた。
パーカーを鈴木の顔から肩にかけて周りの目から避難させる。
最低、なのは十二分に承知だけれど。
今はほんの少しでも、誰かと触れ合っていたかった。
私の心の底に根付く寂しや苦しみを、和らげるために。
「…………さんきゅ、清子。」
「うん。」
服に包まれつつな鈴木からの、くぐもったお礼が届いた。
隙間から見えるのは、赤く染まった鈴木の耳。
強引なくせに、純情。
本当に可愛いなぁ、なんて。思う。
数分前のやりとりを無かったことにするように。
無理矢理に、思った。
それが、鈴木にとって。
何よりの侮辱になっていることも知らずに。
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