第22話

「あれ、しずかさんに言ってなかったっけ?」


「なに?」


「バンドやってるんですよ、ロックバンド。≪農業高校軽音部≫で。メンバー俺ら四人だけの私的なやつになってるけど」



多種多様な味の肉まんが入っているケースを覗きこんでいる蓮くんは、然も普通のことを述べていますよ的な口調だ。




けれどもちろん、


「え!?なにそれ!?知らない!」


急に芽生えた“驚愕”の意を表すように、あたしの目はぐーんと見開かれる。




「みんな、楽器とか出来るの!?」


「出来なきゃバンドとして成り立たないじゃん」


「…なんか、哲に指摘されるのっていちばん腹立つ…」


「ふはっ…哲、いつもいちばん惚けたような生き方してますもんね」



ある意味“未知との遭遇”なせっかくのときに、どうしてこうも萎えることを言うかね此奴は。



宥めるように共感してくれる大人な蓮くんが居なかったら暴れてるぞ今頃。

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