第23話

客と店員の位置をはっきり分けてある細長い机前に屈んで肘をつき、愉しそうに口角をあげている哲をぎろりと睨む。



「しずかさん、ピザまんひとつ」


「了解。哲、作業の邪魔!そんなとこに居座らない!」



蓮くんからの注文に答えるために掴んだトングで指し注意するも、改善しそうな見込みはほとほと無かった。




もう、歳上ぶるの辞めよう。

これから、ずっと。キリないわ。





「あ…、ねえねえ!それぞれ担当なに?バンド内で」


「護ドラム曹ベース、俺がギターで哲ギター兼ボーカルです」


「ぼぼぼぼぼぼ、ぼーかるっ?この哲がっ!?」



この先は完全自由な振る舞いをすることを自身に勝手に誓った…ら、さっそく漫画のような吃り具合になってしまった。



失礼極まりない行為と百も承知だけれど、腕をぴん、と伸ばし哲を指差す。でも、致し方ないだろう。この場合。




「…失礼なやつだな」


「だって…あんた、唄ってるの?」


「唄ってる」


「想像つかない…」



むっ、とした表情で、切れ長の涼しい綺麗な二重瞼をした瞳を窄めてくる哲を見返す。




この昼寝命ぼんやり男がボーカル?


ギャップにも程があるでしょうよ。

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