第7話

『お父さんがそう言うなら、甘えようかしらねえ……まったくもう。』


「しずかも成人じゃよ。好きな様に生きさせてやりなさい。また、野菜おくるからね。」


『そうね。ありがとう、お父さん。お願いしますね?』


「はいはい。頼まれましたよ。」



かちゃん、とじいちゃんが受話器を置いた、真っ黒なダイヤル式の固定電話機は、なんら変わりない昔ながらのこの家に、すごく似合っていた。





「…………じいちゃん、」


「なんじゃ?」


「あたし、急に来たのに……ばあちゃんのとき、だって、あたしひとりだけ帰ってこなかった、薄情な孫なのに……」


「……ここは、しずかの家なんじゃから、のんびり暮らしなさいよ。婆さんだって、喜んでる筈じゃ。気にしなさんな。」


「……うん。」


「あ、それと、じゃ。忘れとった」


「うん?」


「おかえり、しずか。」


「……ただいま!じいちゃん!」



嬉しさの涙で揺れるあたしの瞳に、春の陽気な風がかかる。


じいちゃんと同じように顔をくしゃくしゃにして、笑った。

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