第35話
柳の木の下で
名残惜しさを残し、身体を離す。
「もう、会わないつもりなんだろ?」
「うん」
「俺とも、母親とも…友達とか学校の奴らとも?」
「うん。ごめん。」
「…亜依子にとっての、リセットなんだな。」
「うん。誰にも、分かってもらえなくていい。」
「……………」
「酷いって非難されても、あたしは今までを捨てる。」
「…そっか。じゃあ、“行ってらっしゃい”か?」
「…ふふ。うん。それがいい。」
「…行ってらっしゃい、亜依子。」
「…行ってきます。」
「…さよなら。」
「…うん。さよなら、晟。」
それでも、向き合って両手を繋ぎ、
どちらとからもなく目を閉じて、触れるだけのキスをした。
柳の葉が、あの日と同じように、さわさわ揺れる。
風のない 蒸し暑い真夏の夜の、終わりだった。
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