第21話

―――――…




未だ動き続ける深緑色に不思議な感情を鬱憤さを抱えてた俺の心境を壊すよう。ぴこん、と何とも可愛らしい音が鳴った。



「あたし、だ。」




どうやら、携帯のメッセージ受信を知らせる合図らしい。持ち主は、今現在隣に座る者。緑茶をベンチに立て掛け、顔の下で操作を始めた。



辺り一面周囲と反し強い光を放つスマホが、こどもにもおとなにも見える顔立ちで穏やかに微笑を浮かべる亜依子の表情を照らしている。申し訳ないけれど、ホラーみたいだった。




「…亜依子、怖い。」


「あ、そうだよね。失礼しました。ひとり笑ってたよ」


「なんかいい知らせ?」


「うーん。知らせというか、友達の彼氏から。この人同じクラスなんだけど、その子がなんか、」


「…ん?」




楽しそうに話す亜依子の前に手を翳し、一旦停止を要求。人代名詞多すぎてややこしい。




「え?」


「今のとこで何人?登場人物。」


「…分かりにくいか。じゃあ名前言う。」


「出来れば。是非。」




情けなく片眉を下げれば、相手も同じ形を作った。なんか鏡みたいだ。




「香澄(かすみ)って子がいるんだけど、携帯水没して使えないからって、代わりに彼氏の笹崎(ささざき)くんから連絡来て。香澄から伝言てきな。2人とも同じ学校同じクラス」


「分かりやすい。」




黙黙と頷き相槌。亜依子は、少し呆れた溜息を吐き、



「そんなおっちょこちょいなことするの可愛いなと思って、笑ってたんだ。香澄、すごく体育会系女子で怒ると超絶怖いくせに。あ、これがギャップ萌えってやつかー。いーな。」



また、楽しそうに笑った。どうやら、学校には面白い日常や友達が在るらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る