第16話
――――――――……
熱を存分に吸収しているアスファルトの上を軽快にタイヤは回る。
両手を手持ち無沙汰に下げていた。重力に遵って。
「ねえ晟くん。訊いてもいいかい。」
「きっしょ。」
「お前に気色悪いと思われようが痛くも痒くもねえわ」
「…どうせ訊くんだろ?回りくどいんだよ」
数分進み続けた頃、見計らったようにふざけた態度をする澪。際限なく面倒くさい。
絶妙に上手く計算されつくした声を作れるコイツにはもう尊敬すら持てる。飄飄とした澪の心中全てを理解できる人間なんてこの世にはいないだろう。きっと。
「先々週の月曜日…俺をアリバイに使った夜何してたんだよ」
「なんで今頃」
「いやー流石に俺も気になってね?自分にも他人にもドライな晟くんとは言え?彼女と別れるに至る行動をさせる女ってどんな奴なのかなーと思ってね?」
よって、俺が何も言わなくても勝手に知っていたんであろうが特に驚きはなかった。寧ろ称賛を贈るべきだろうか。
ここまで他人の内情を敏感に感じ取れる澪へ、は。
「別に好きじゃなくなったら自然な選択だろ。別れんの。亜依子だけが理由じゃねえし」
「あいこ、ねえー。」
気付けば名を出していた俺の失態をあざとく見つけ可笑しそうに喉を短く鳴らす腹黒野朗、の後頭部を叩く。
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