第15話
高校生になり最初の終業式である今日、きちんと登校してきたのはいいものの、
『あーきーらくん』
『あ?澪?』
『なーなー。どうせ今日式だけじゃん?怠いじゃん?』
『(うぜー…)…。』
『わー。晟くんの人を蔑む視線て殺傷能力あるよきっと。んで、課題とかはもう配布されてる訳よ。』
「は?」
『いやーね?それ持って今すぐ帰るのって楽なんだろうなあ…って言う、俺の独り言をお前に聞かせようと思って。』
『(…。)もう今の時点で独り言としての性質は剥ぎ落とされてるけどな』
『ごちゃごちゃ言いつつその顔は賛同しちゃってますぜ旦那』
『……………。』
式典が始まる時刻ギリギリに到着した所を、自分のクラスでもない俺のクラス前で待ち構えていた澪の提案に乗ってしまい。
今現在、体育館近くの廊下を歩いている最中だったりする。帰る為に。
生徒も教師も一人残らずその体育館に集結しているため、校舎内には誰一人おらず、静まり返っていた。
「もーいーくつねーるーとーなーつーやーすーみー」
「今からだろ」
隣で唄とも言いずらい唄を口ずさむ澪の高低がないお経のようなそれに被さりつつ、体育館からはマイク越しに話す教師らしき声の余韻が聴こえてくる。
誰に咎められることもなく、無事に校庭へと出た。燦燦とどこまでも照り渡る太陽が眩しい。さすが夏。しかも午前中。
無性に、月が、恋しくなった。
「晟、お前駅まで歩き?」
「歩き」
「よし。んじゃあ優しい優しい澪くんは駅まで乗せてってあげようじゃないか」
変な言い回しには腹が立つけれど、有り難い申し出には変わりなく「らっき。」笑って正門に向け真っ直ぐ歩いてた行き先を右へと方向転換する。自転車置き場、に。
「…相変わらず派手だな。お前の自転車。」
「まあ、そうだろうねえ。」
辿り着いた場所、たくさんある自転車の中でも【異常】。
澪が中学の頃から未だに愛用するそれは、神々しさすら感じる紫色。派手すぎだ。
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