第41話
ただ、ね。
ごめん、ね。
その弱味を、突かせてはもらうね。
「にゃーあが白状しないなら、諏訪さんに言ってやる。『学生時代の夢は“根っこ”になることだった』ってお酒の席でぽろって言ったら上司に馬鹿にされて悔しくてその場で泣いちゃったのが原因で前の仕事辞めて、この世界に来たっていうにゃーあのトップシークレットをバラしてやる。」
「ですからですね、私は、」
「それでも『“根っこ”に纏わるエピソードは大切だけど、思い出すと苦しい矛盾なんです』って珍しく弱音吐いてたかつてのにゃーあに、根っこ→ネコ→にゃーあ『直接的ではないけど、忘れることはなでしょう?』って連想あだ名つけたら『にゃーあはちょっと……』とか言いつつ、嬉しそうにはにかんで、その後ものすごく号泣したにゃーあのこと、」
「分かりました!分かりましたって!言いますから!」
にゃーあだって女だ。
惚れてる男がいるということは、
強みにも、弱みにも、なる。
私だって女で。
レンさんがいるということが、
強みにも、弱みにも、なっているように。
「貴女には叶わないですよもう……」と意気消沈に肩を落としたにゃーあの背中をぽんぽんっとあやす。
(諸悪の根源お前とか言わないでね)
(一応これでも常に反省だけはしてる)
今日も今日とてスーツの皺も髪の毛メイクの綻びさえ見つけられないにゃーあは、ひとつのため息を零した。
それを合図に、正座して私に向き合ってくる。
から、私も正座して、真っ直ぐ向き合って。
「その頃、去年の冬。メンバー全員で、里帰りしていたそうです。べじるーが形成された場所、というPRが幸をなし栄えた県。共同生活していた田舎へと。」
「なんでまたいきなり、そんなこと?」
「お世話になってた人が重い病気にかかり、余命宣告を受けたらしくて。その方との最期を過ごすためだったそうです。」
「………………え?」
膝にあたる畳の固さが、やんわりと痛みを伝えてきた。
また、じわじわと侵食するよう。
私の身体中に、染み込んで、吸い込まれて。
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