第21話

「かよ」


「………………」


「いい加減にしろ」


「………………」


「おい」


「………………」


「傍から見たら、俺が未成年襲ってる犯罪者になるだろうが馬鹿。こら。」


「………………」


「お、素直。」


「………………」


「なんだったんだよ今の」


「……しょーちゃんが、犯罪者?」


「そうだろ」


「じゃあさ、しょーちゃん。」


「ん?」






背中を軽く叩き、薄く笑って今の世間体を説明する。


すると、緩めた腕をぶらん、と重力に従い下げるかよが、無表情のまま目の前に佇んだ。


解かれた拘束に安心して、座ったまま微笑み、かよの顔を覗き込む。





「子どもだったしょーちゃんをヤり続けた高橋絵実は、どんな名称になるんだろうね?」





投げ捨てるように吐き出された言葉の意味を理解したときにはもう、かよの腕を引っ張っていた。


目の前にいた筈のかよが、ベットの上で、俺の下にいる。


押し倒しているように見えても、そこには、恋人たちのような甘さなど一切ない。


力の違う大人、男に組み敷かれても表情を変えない相手に、怒りで埋め尽くされる身体の奥の熱は上がった。





「……お前、なにがしたいの?」


「………………」


「……俺を怒らせにきたのか?」


「うん」


「……は?」


「馬鹿らしいから。しょーちゃん。」


「……なんで?」


「これから、しょーちゃんが殺人犯として扱われるのに、本当の悪人が被害者として扱われる明日が、明日以降が、馬鹿らしい。」


「……かよ、」


「それでも、黙ったまま動けない自分しか想像できないことが、悔しい。」


「かよ、」


「ねえ、しょーちゃん、」


「……なに?」


「お願いがあるの」





伝った1粒の涙が、横に流れ髪の中へと吸い込まれていく。


簡単に想像できたかよの苦しみに、身体中の熱は引き去った。



























「……………このまま、抱いて?」

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