第3話 クッキーとゲーム
その後、台所でお菓子とジュースを用意した橘海翔は、それらをお盆の上に乗せて白星麗奈が待っている2階の自分の部屋に戻り。
部屋の真ん中に置いてある小さな机の上に持って来たお盆を置くと。
「海翔、そこにあるお菓子は食べて良いの?」
さっきまで橘海翔が寝ていたベッドの上に当たり前の様に寝転んでいた白星麗奈がそんな事を聞いて来たので。
「ああ、良いぞ」
橘海翔がそう答えると。
「ふふっ、ありがとう」
白星麗奈はそう言うとベッドの上から降りて来て、机の前の床に座っている橘海翔の直ぐ隣に座ると。
彼女は皿の上に置かれているクッキーを1つ手に取って、それを半分口にすると。
「うん、凄く美味しいわ!!」
満面の笑みを浮かべて白星麗奈はそう言ったので。
「そうか、そのクッキーはお前が遊びに来た時用に母さんが買っていたやつだから、母さんが帰って来たらお礼を言っといてくれ」
2人分のコップにそれぞれコーラを注ぎながら橘海翔がそう言うと。
「ええ、そうするわ、ただ海翔、結局この後は何をして過ごすの?」
2つ目のクッキーに手を伸ばしながら白星麗奈はそんな事を聞いて来たので。
「ああ、そうだな……出かけるのも面倒くさいし、今日は一日ゲームでもしながらのんびり過ごすか」
橘海翔がそう提案すると。
「まあ、海翔ならそう言うわよね、良いわ、偶には海翔と2人で何処かに遊びに行きたかったけど、今日はそれで我慢してあげる」
白星麗奈はそう答えたので。
「ああ、遊びに行きたいならまた今度誘ってくれ」
そう返事をすると橘海翔はその場から立ち上がり、部屋の隅に置いている携帯ゲーム機を手に取ると。
ゲーム機をテレビに繋いでコントローラーを2つゲーム機に取り付けてから、テレビを付けてゲーム機を起動すると。
「それで麗奈、最初はどのゲームからするんだ?」
テレビに表示されているゲームソフト一覧を眺めながら橘海翔がそう聞くと。
「そうね……最初はやっぱりレースゲームにしましょう」
クッキーを食べながら、白星麗奈はそう答えたので。
「そうか、まあ良いけど、お前は本当にこのゲームが好きだな」
コントローラーを操作してゲームを起動しながら橘海翔がそう答えると。
「まあね、他のゲームなら海翔に全然勝てないけど、このゲームなら割と簡単に海翔に勝てるからね」
得意げな顔を浮かべながら白星麗奈はそう言ったので。
「言ったな、麗奈、悪いけどゲームを1つも持って無いお前に簡単に負けてやる程、俺は弱くないからな」
橘海翔がそう言い返すと。
「ふふっ、そう言っていられるのも今の内よ」
白星麗奈はそう言うと、自分の手の中に残っていたクッキーを口の中に放り込んでからコーラを飲んで、ポケットから取り出したハンカチで自分の手を拭くと。
その場から立ち上がってテレビの前に歩いて来て橘海翔の隣に座ると、ゲームのコントローラーを手に取り。
「ほら海翔、準備できたから早くキャラクター画面にまで行ってよ」
急かすような口調で白星麗奈はそう言ったので。
「はいはい、分かったよ」
橘海翔はそう答えると、コントローラーを操作してキャラクター選択画面に移動した。
その後、2人は自分たちのお気に入りのキャラクターと車を選択して、ステージ選択画面に移動すると。
取りあえず最初という事で、崖やショートカットが殆ど無い比較的簡単なステージを選んでレースを開始したのだが。
「えっ、あれ?」
ここ数ヶ月、白星麗奈はこのゲームをプレイしていなかったせいかゲームの操作性を忘れていた様で、カーブを曲がり切れずに何度も壁にぶつかって減速し、その度にCPUに追い抜かれて。
危なげなく1位を取った橘海翔とは対照的に、白星麗奈は6位という何とも言えない微妙な順位でレースを終えたのだが。
「海翔、早く次のコースをやりましょう!!」
負けず嫌いな性格の白星麗奈はそう言ったので、橘海翔は次のコースを選んで直ぐにレースを再開した。
それから数レースは橘海翔が安定して1位を取り続ける一方、未だにゲームの感覚を取り戻せていない白星麗奈は何度も壁にぶつかったり崖から落ちたりして、相変わらず苦戦しているようだったが。
暫くするとゲームの感覚を取り戻せたのか、壁にぶつかったり、コースアウトするような事もなくなり。
そうなればそこまで強くないCPUに負ける事も無く、白星麗奈は安定して2位を取り続ける様になり。
最初は数十秒開いていた橘海翔と白星麗奈のタイム差もレースを重ねる事に着実に縮まっていった。そして……
「やった!! 私の勝ち!!」
「……負けた」
今回のレースでは道中のアイテム運がかなり白星麗奈の味方をしていた事もあり。
ゴール前ギリギリで橘海翔は白星麗奈に追い抜かれて、橘海翔は今日初めて2位を取った。
すると、白星麗奈は調子を良くしたのか。
「ふふっ、私がゲームの感覚を取り戻しただけで勝てるなんて、海翔も大した事ないわね」
得意げな表情を浮かべながら、彼女はそんな事を言ったので。
「今のは俺のアイテム運が悪かっただけだ、それより麗奈、次のレースに行くぞ」
橘海翔がそう答えると。
「はいはい、相変わらず海翔は負けず嫌いね」
白星麗奈はそう言ったので。
「お前にだけは言われたくないな」
橘海翔はそう突っ込みを入れて、次のコースを選んだ。
その後も2人は数レースゲームをプレイしてCPUには負ける事はなく安定して1位、2位を取り続けていたが。
白星麗奈が完全にゲームの感覚を取り戻した事と、道中のアイテム運が全体的に彼女の味方をしていた事も重なって、現時点では橘海翔が勝ち越してはいるモノの2人の勝率はほぼ5分5分といった感じになって来ていた。
そして、橘海翔が次のステージを選ぼうとすると。
「ねえ、海翔、今から私と勝負をしない?」
白星麗奈がそんな事を言ったので。
「勝負?」
橘海翔がそう聞くと。
「ええ、そうよ、今から私と5レース勝負して、最終的に勝ち越した方が勝ちっていうのはどう?」
白星麗奈はそんな提案をして来たので。
「まあ、別に良いけど、ただ普通に勝負をするだけならあんまり面白味がないな」
橘海翔がそう答えると。
「それなら海翔、負けた方は何か1つ罰ゲームを受ける事にしない?」
白星麗奈はそう言ったので。
「罰ゲーム?」
橘海翔がそう聞くと。
「ええ、罰ゲームの内容はそうね……勝負に負けた方は勝った方の言う事を何か1つ聞くというのはどう?」
白星麗奈はそう言ったので、その言葉を聞いた橘海翔は一瞬黙った後。
「良いのか麗奈、安易にそんな事を言って、お前の事だからどうせ最初から勝つ気でいるのだろうけど、負けた時の事も考えておいた方が良いと思うぞ」
橘海翔がそう忠告すると。
「大丈夫よ、今日の私は運が良いから何となく勝てる気がするし、例え負けたとしても、海翔なら変なお願いはしないって私は信じているから!!」
白星麗奈は満面の笑顔を浮かべてそんな事を言ったので、その言葉を聞いた橘海翔は一瞬黙った後。
「まあ、お前がそれで良いのなら俺も別に良いけど、ただ、負けても下手な言い訳はするなよ」
橘海翔がそう答えると。
「勿論よ、あっ、それとステージは全部私に選ばせてね、経験値で言えば海翔の方が圧倒的に上なんだから」
橘海翔が勝負を了承した途端、白星麗奈は自分にとって都合の良いルールを急にねじ込んで来たので、その言葉を聞いた橘海翔は少しだけ呆れつつも。
「まあ良いけど、それで麗奈、最初はどのステージにするんだ?」
橘海翔がそう聞くと。
「最初のステージはそうね……」
白星麗奈は少しだけ真剣な表情でステージを選び始めて、罰ゲームをかけた2人の勝負が始まった。
次の更新予定
高嶺の花のお嬢様の本心を俺だけが知っている 向井数人 @tyuuni
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。高嶺の花のお嬢様の本心を俺だけが知っているの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます