第5話 「ローレンシア・ヴィルハイム」

——————————————————————————————————————

注意喚起:この作品は、ゲーム:「モンスターハンター」シリーズを最新作までプレイした後に読むことをお勧めします。

知らない人にもわかるように必要があると判断した場合には都度解説を入れますが、内容に大いに関わってくることをご承知ください。

以上の内容をご理解いただけたなら、ゆっくりしていってね!!!

——————————————————————————————————————

エスカトンジャッジメント。


それは、煌黒龍の持つ必殺技で、属性での抑制をしないと、あらゆる無敵時間を貫通して超高速のスリップダメージで殺される、初見殺しであり実質的にDPSチェックも担う技。


その技を、男に向けて思いっきり放った。


ハルカ「いい感じに、倒れてくれた。」


死なれてしまえば、立場が弱くなるのは僕だ。だからこそ、適度に。

2段階抑制ぐらいのパワーで瀕死の状態にした。

本来は属性を変えるための技なのだが、まあ僕は属性なんて関係ないから、ただ火力の高い技だな…と、そんなことを思っていると、


少女「…大丈夫ですか…?凄い音がしましたけど…」


その声の方向に振り返る途中に、周囲一帯が凍りついていることに気がついて少々驚愕したが、それもそうかと納得して視線を向ける。


少女「っ……これは…貴方は氷を扱う竜なんですか?」


と、そんな事を言う彼女に、


ハルカ「魔法、だよ。これは全部」


少女「魔法?魔法でこんな…出力が…?」


困惑しながらも、彼女は話を続ける。


少女「…ああそうでした。お礼を忘れていました。」


そうして彼女は


少女「私はローレンシア・ヴィルハイム、狐族の末裔です。」


ローレンシア「今回のことは…ありがとうございました…」


ハルカ「別にいいよ。ハンターは生態系の調和を護るものだし。」


狐族の密猟が、生態系の調和に関わるか…疑わしいところではあるけど、

僕の行動理念は疑わしき罰せよだから…しかたないね。


ローレンシア「ハンター…?何のことですか?」


知らなさそうだったので、適当に流して話を進める。


ハルカ「こっちの話。で、ご飯は別にいいんだけど、街まで案内してくれない?」


軽い気持ちで、そんな事を聞くと、


ローレンシア「命の恩人様の命とあらばなんでも!」


ローレンシア「竜人様のお口に合うようなご飯は用意できないかもしれませんが、庶民的な料理ならば私が…!」


と、そんな言葉が返ってきた。

どうやら僕は、彼女に好かれたみたいなので、


ハルカ「じゃあローレンシア。道は任せたよ。」


と、彼女の隣に立つ。

背丈は僕のほうが低いくらいで…

いや、耳がなければ変わらないか?

どちらにせよ、僕よりも身長が数cmほど高い。

これはこの身体が小さいのか、彼女が大きいのか、

まあ8割方前者だろう。全体的にサイズが小さい気がする。

歩いている間、彼女と雑談を交わす。


ハルカ「どうして…密猟者に?」


一瞬答えることを渋る様子を見せたものの、彼女は答えた。


ローレンシア「お恥ずかしいことですが、高額バイトを謳った広告に引っかかってしまいまして…」


なるほど…この世界の闇バイトは、あっちとは比べ物にならないほど危険らしい。


ハルカ「お金に、困ってたの?」


ローレンシア「そうですね…母の治療費をずっと払っていたのですが、もう限界で…」

どうやら、この子はとても優しいようだ。


ローレンシア「ハルカ様は…」


と、急に僕に話題が飛んできたため、驚いて


ハルカ「ん?」


という素っ頓狂な声を上げてしまった。


ローレンシア「…ハルカ様は、ずっと旅をされているのですか?」


ここで、さっき…と言っても、信じられる訳がない。

だからあえて濁して、


ハルカ「一番大切だった人に、もう一度…会いたいから…」


と、長い時間を経ている風に、ただただ事実を伝える。

嘘は言っていない。嘘は言っていないのだが、少しだけ、良心が痛む。


ローレンシア「…そんなことを思い出させてしまってすみません…」


と、謝る彼女に、


ハルカ「…大丈夫。いつか必ず、何処かで逢えるから。」


神様が、そう言っていた。待ち続ければ、必ず…


ローレンシア「…そう…ですか。そうですね。」


ローレンシア「私もいつか…お母様に…」


そう言って、彼女は少し俯いた。

そんな彼女の頭を、僕は優しく撫でた。

それは、姉ちゃんが僕によくやってくれたことで、気分が沈んでいるときでも、不思議と心が浮かびあがってくる。

ずっと…頑張っていたのだろう。

どうにか、母親を死なせまいと…

そのために、命も賭けているのだから、相当だ。

だから僕は、


ハルカ「大丈夫…ローレンシアは頑張ってるよ。」


と、その言葉を投げかける。

僕に振り返った時に、その頬は少しあからんでいて、


ローレンシア「ありがとう…ございます!」


と、何故だかわからないが感謝されることになった。

全体的に少ししんみりとしてしまったその空気を変えるために、僕はこんなことを言った。


ハルカ「ローレンシアって…友達からはなんて呼ばれてるの?」


その言葉に、


ローレンシア「…確かに、呼びづらいですよね。私もいつも思います。」


と言って、考え込むような素振りを見せる。

僕も少し考えるかと思い、黙り込んだ。

普通に考えたらロレス…とかになると思うが、

ロレンシー…とかは……最近どっかで聞いたな。

どっかの崩壊の星な軌道崩壊:スターレイルだろう

じゃあもうちょっと…ロシa……これ以上は辞めておこう。

諦めたのか、ローレンシアは


ローレンシア「ハルカ様の好きに呼んでください…」


と、また俯きながらそんな事を言った。


…もしかして、友達がいなかったのだろうか?

まあ、そこについて考えるのも酷だろう、と

一つ提案をする。


ハルカ「ロレアとかどう?」


ローレンシア「…悪くはないですけど…名前の原型が少ないというか…」


そう言われてしまっては仕方がないので、もう一度ひねり出そうと考える。


ハルカ「…ローレンとか?」


折角ひねり出した名前を、


ローレンシア「…いやまあ…それでもいいですけど…」


と、少し嫌そうに言うので、


ハルカ「ロっちゃんでいい?」


考えるのが面倒になった僕は、適当に言う。


ローレンシア「なんかもう面倒になってません?」


このままだとロシアと呼ぶことになってしまう。

それだけは回避したい僕は、


ハルカ「ローレンシアのフルネームって確かローレンシア・ヴィルハイムでしょ?」


と、彼女の名前を尋ねる。


ローレンシア「そうですね。確かにローレンシア・ヴィルハイムと申します。」


ハルカ「じゃあロヴィとかどう?」


それを聞いた彼女は、ゆっくりと噛みしめるようにそれを反復する。


ローレンシア「ロヴィ…ですか。」


ローレンシア「良いですね!それで行きましょう!」


どうやら、気に入ってくれたようだ。

——————————————————————————————————————

小説の文字数を圧縮するために必要だったというのは内緒

——————————————————————————————————————

いま一瞬、別の誰かの言葉が入ったような気がするが、気にしないでおくとしよう。

そのまましばらく、雑談しながら歩いていると、鮮やかな色で構成された城壁が目に入った。


ロヴィ「見えてきましたね。」


ハルカ「……おお」


妙に…既視感がある。中世風であるから、世界観が近い…と言うのはあると思うが、

にしても、龍と戦っているような…そんな雰囲気を感じる。


ロヴィ「ここが私が生まれ育った町……ドレブルグです!!!」


と、そんなことを聞いて、僕は心の内で、

…流石に戦闘街ドンドルマではなかったか…

と、少し落胆するのであった…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る