第七章

わしの名はガリュ㌧――。

豚の中の豚、いや、語らせれば右に出る者はおらん……と、いまだに思っておる古豚じゃ。

さて、聞くがよい。

これは、幾多の試練をくぐり抜けた青年と、9mm(比喩)の小さな相棒――バズ㌧が、

ついに魔王城へとたどり着いた、その決戦の物語である。


……なに、怖い話かって? まあ、笑いもあるから安心せい。



魔王城への道


黒雲が垂れ込め、生暖かい風が吹いとった。

バズ㌧と青年、そして戦わぬ豚・キャピウの三つの影が、重い空の下を進む。


『なぁ、やっぱ帰らない? 腹減ったし!』

「キャピウは怖いのか?」

『こ、怖いに決まってんだろ! オレ戦えないんだぞ!』

「僕、バズ㌧!(たまには手伝えよ!)」

『見守るのが仕事だって言ってんだろ!』


まったく……口は達者じゃが、あやつは戦えん。

それでも、見守ることにかけては天下一品じゃ。



魔王城の門


ついに辿り着いた。

ここが魔王城じゃ。


『あ〜あ、着ちゃったよ…』

「僕、バズ㌧…(ここまで来たら、もう諦めろよ…)」


「必ず、ロマ子姫を救うんだ!」

「僕、バズ㌧!(お、気合い入ってるね!)」


しかし、魔王城の門の中からはただならぬ気配が漂っていたんじゃ…



異形の王子


魔王城の扉が重く開いた。

闇の奥に立つ巨影――セルトン王子。

王冠をかぶり、分厚い甲冑に包まれたその姿は異形そのものじゃ。


「ぶるるるるるるぅぅぅあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」


地が鳴り、空気が裂けた。


『いきなりラスボスなの⁉︎』

「わからない。でもコイツだけは倒さなければ…」

「僕、バズ㌧!(やってやろうぜ!)」


いよいよ戦いが始まる。



🔗楽曲『バズーカ王国物語 第七章』

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防御の壁


青年の剣がセルトンを捉える。

しかし、甲冑にはじかれ、火花が散るばかり。

右、左、下段……どこから斬っても通らぬ。


セルトンは動かず、ただ防御に徹する。

青年を全く格下と見ておるのじゃ。


『あいつ……全然攻めてこねぇ!』

「僕、バズ㌧(こわーい)」

「くそっ!」



粘り


最初からわかっていたことじゃ。

強敵相手に勝利するための作戦、

それは「ひたすら粘る」こと。


青年は何度も何度も向かっていく。

その度に固い壁に阻まれるもその眼は光を失ってはいない。


すると、微動だにしなかったセルトンの巨体に変化が起こったのじゃ。



我流の剣


ただ愚直に振り下ろした剣。

かつて稽古で見た三銃士の技――


「霞豚閃(かすみとんせん)」

「豚返し(ぶたがえし)」

「突進豚破(とっしんとんは)」


それを我流で磨き、己の剣に宿していた。

三つの技を何度となく重ねて繰り出すと、

セルトンの甲冑の表面にほんの小さな裂け目が走った。


『い、今の見た!? 傷がついたぞ!』

「僕、バズ㌧!(おお、やったじゃん!)」


セルトンの巨体がわずかに揺れる。

初めての動揺。



疲労


青年の息が乱れてきた。

それはそうじゃろう。

ここまで剣を振り下ろし、技を繰り出す。

それを繰り返してきた身体は悲鳴をあげ始めたのじゃ。


「僕、バズ㌧^^;(あ、ごめんごめん^^; 今、回復するんで待ってて)」

『お前、忘れてただろ……』


そのとき、9mm砲から放たれた光が、青年の身体を包み、

体の芯から力が漲ってきた。

「ありがとう、バズ㌧!」


「僕、バズ㌧!(お安い御用さ!)」

『忘れてたくせに…』



防御を解く


青年を格下と見て全く攻めてこなかったセルトンじゃったが、

青年の粘りが巨体を動かした。


「ぶるるるるるるぅぅぅぅぅあああああああああっ!!」


防御を解いたのだ。

一瞬にして空気が変わる。

その太刀筋は速く、そして重く…

まさに三銃士の技が融合しておるようじゃ。


「この太刀筋は⁉︎」



三銃士との記憶


時が止まったように脳裏によぎる記憶。


シンゴ「全力ではないが今の小僧にはこれくらいがいいところかw」

バク「おい、やりすぎじゃねぇのか⁉︎ 小僧が死んじまうぞw」

ヒサ「やれやれ、また小僧の手当をしてやらんとなw」


稽古中、初めて三銃士から三位一体の技を受けた少年は、

激しく吹き飛ばされ失神してしまったのじゃ…



削り合い


記憶の中の三銃士の幻影のような剣技が降り注ぐ。

青年は防ぎながらも、一歩も引かぬ。

9mm砲が何度も輝く。


『長期戦で削るんだ! 削れ!』

「僕、バズ㌧…(お前が一番元気だな…)」

『オレだって気疲れしてんだよ!』


劣勢ではあるものの何度も何度も立ち上がる青年。

徐々にではあったが、青年の剣がセルトンに届きつつあった。

やがて、セルトンの甲冑に傷が刻まれはじめた。


そして、巨体がわずかにあとずさりをした瞬間だった。


「バズ㌧! ここは勝負に出よう!」

「僕、バズ㌧!(よっしゃぁ、いくか!)」

『お?出すのかい?』



必殺の剣


「僕、バズ㌧!!!(バズーカ発射!!!)」

9mm砲が唸り、青年に向かって光弾が放たれると、

その弾が剣に当たって光が包む。


「今だ!バズーカフラッシュ(仮)!!!」

地を這う光の壁が一直線にセルトンを襲う。


セルトンは「豚返し」で受け流そうとするも弾かれると、

王冠が割れ、甲冑が裂け、緑の液体が噴き上がったのじゃ。


『や、やった! 倒したぞ!』

「僕、バズ㌧?(倒したの?)」

「……やったのか……?」


巨体が崩れ落ちた。



勲章


青年が近づき、ドロドロした緑の液体を掻き分ける。

その下に覗いたのは、人の肌のような色。

手に何か硬いものが触れ、引き上げてみると――輝く金属片


「……勲章?」

それは、バズーカ王国の上級豚勲章。

かつて国王が亡きマン㌧三銃士へ贈った時に見た栄誉の証。

しかし、この勲章を持つ者は、王家の一族以外ほとんどいない。


「この勲章を持つ者……王家の人物……?」

「僕、バズ㌧?(ロマ子姫?)」

『ロマ子姫って、お前、オレの嫁の身体をまさぐるんじゃねぇ!』


「いや、ロマ子姫ではない。身体が男だ。」

「僕、バズ㌧。(冷静か。)」

『お前ら漫才してる場合か!』


「ま、まさか……ロマオ王子なのか⁉︎」



痛恨の一撃


その瞬間――。

セルトンの巨体が震え、轟音と共に立ち上がった。


「ぶるぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」


立ち上がりざまに、闇を切り裂くほどの斬撃。

三人(一人と二匹)は瞬く間に弾き飛ばされた。


『何でオレがぁぁぁぁぁぁ!?』

「僕、バズ㌧〜!(お前だけじゃねぇ〜!)」


青年の身体が地に叩きつけられる。

右半身が――消えておる。


「ぐはっ……!」

大量の血が噴き出し、一瞬にして意識が遠のいた。



絶体絶命


最早、青年の敗北は明らかじゃった。

何故なら、セルトンの繰り出した技は三銃士それぞれ奥義の合体技。

しかも、付け焼き刃ならぬ練り込まれたもの。


至近でまともに喰らった青年は、身体の一部がなくなるほどじゃった。


更なる不運はバズ㌧が全く逆の方向に遠く飛ばされていたからじゃ。

これでは9mm砲の回復も叶うまい。



謎の声


青年は息も絶え絶え、ピクリともしていない。


『おいおい、ヤベェんじゃねぇの?』

「僕、バズ㌧T_T(遠くて届かないよT_T)」


その時じゃった。


〈今こそ、三人(一人と二匹)の力を結集するんじゃ〉


「僕、バズ㌧?(誰?)」

『しょーがねーなー』

「……」


『キャピウ!!』


光が三つの影を包み、一か所に集まる。

『ほら、急げよ!』

「僕、バズ㌧…(お、おう…)」

「……」


「僕、バズ㌧!!!!!(豚王拳10倍だぁぁぁぁぁ!!!!!)」


青年の体が金色に輝き、

失われた右半身が再生していく。

そして、無意識のまま立ち上がったと思えば「居合の構え」



最終奥義


項垂れたままだった青年の眼が光った。


「バズーカファイナルフラァァァァァァァァッシュ(仮)!!!!!!!!!」


高速の光輪がセルトンを真っ二つに断った。

二つの塊は光に包まれ、静かに地に落ちる。


『お、今度はやったんじゃねぇ⁉︎』

「僕、バズ㌧…(疲れたよもう…)」


二匹が恐る恐る塊に近づき覗き込む。


一つは小さな米粒の形…

もう一つは――人間の姿。


『何だよ、イケメンじゃねぇか、放っておこうぜ』

「僕、バズ㌧…(お前、男には厳しいな…)」



ふむ、わしのひと言が効いたかのぉ。

それにしても、どこかで見たことのあるような戦いじゃったが、

青年は見事にセルトン王子を破ったんじゃ。


次はいよいよ最終章じゃ、楽しみに待つがよい。

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