最終章
わしの名はガリュ㌧――。
豚の中の豚、いや、語らせれば右に出る者はおらん……と、いまだに思っておる古豚じゃ。
さて、聞くがよい。
長かった戦いの末――青年とバズ㌧(とキャピウ)はセルトン王子に勝利した。
じゃが、その代償はあまりにも大きかった。
9mm(比喩)の光に幾度も立ち上がり、剣を振るった青年の身体は、いまや光の力をもってしても癒しきれぬほどに削れきっておったんじゃ。
⸻
崩壊の静寂
『おい、大丈夫かよ?』
「僕、バズ㌧…(これ以上、回復しないよ…)」
青年は動かず、唇だけが微かに震えた。
「ロ…ロマオ王子は?……」
『なんかセルトンの中からイケメンの人間が出てきたと思ったら、王子様なのかよ⁉︎
ってことはオレのお義兄様なんですね!!』
「僕、バズ㌧…(そもそも姫がお前の嫁じゃないだろ…)」
「バ…ズ㌧…助けて…あげて…くれ…」
『僕、バズ㌧…(お、おう…)』
バズ㌧はキャピウと共にロマオ王子のもとへ駆け寄り、9mm砲から柔らかな光を注いだ。
⸻
ロマオの覚醒
ロマオ「う…う〜ん…」
『お?気がついたかな?』
ロマオ「こ、ここはどこだ?」
『なんも覚えてないのかよ』
「僕、バズ㌧(説明してあげなよ)」
キャピウがこれまでの経緯をかいつまんで告げる。
ロマオ「お、俺は…何てことをしてしまったんだ…」
『そこにいるちっさい米粒みたいなのに操られてたんじゃねえのか?』
「僕、バズ㌧⁉︎(あ、いない⁉︎)」
『ま、あんな米粒じゃ何もできんだろ。それよりあっちの兄ちゃんは大丈夫か?』
「僕、バズ㌧…(なんか嫌な予感…)」
⸻
再会
ロマオ「お、おい大丈夫か?」
「お…王子…無事だったんですね…良かった…」
ロマオ「お前はロマ子親衛隊の…あの時の少年か⁉︎」
「は…はい…」
ロマオ「ずいぶん立派になったな…しかし、俺のせいで…」
「いや…お気になさらないで…ください…」
「それより…姫を…早く…」
ロマオ「おお、そうだな。お前は俺が背負っていくぞ」
キャピウの案内で、崩れた廊下と瓦礫の階段を抜け、塔へ向かう。
ロマオに背負われながら、青年は朧げに“広く深い何か”を感じていた。
――それは、王国そのものの鼓動か、誰かの祈りか。
⸻
闇の胎動
一度晴れたと思った夜空に、ふいに大きな影が忍び寄る。
その影は瞬く間に膨れ上がり、城全体を包みこんだ。
『おい、こいつが大魔王ザヤキュッ*トだぞ!!!!』
ロマオ「何だと⁉︎」
「僕、バズ㌧⁉︎(デカくね⁉︎)」
空一面を影が覆い、風が止む。
ロマオ「とにかく、ロマ子を救出しよう!」
『そうだな!待ってろオレの妻よ!』
「僕、バズ㌧…(違うって言ってんだろ…)」
一行は螺旋階段を駆け上がった。
⸻
姫の間
姫が幽閉されている部屋までもう少しのところで影が目前まで迫る。
ロマオ「ここは俺が引き受ける!」
『おい、お前が行ったら誰がこいつを運ぶんだよ!』
「僕、バズ㌧!(お前に決まってるだろ!)」
『あぁ行っちまったよ…どうすんのこれ…』
「僕、バズ㌧!(さっきの飛ぶやつやってよ!)」
『あれ、けっこう疲れるんだぞ!』
「僕、バズ㌧!(いいからやれや!)」
『キャピウ!』――
次の瞬間、青年と二匹はロマ子姫の部屋の中にいた。
ロマ子姫「⁉︎」
「僕、バズ㌧!(あ、ロマ子姫ですね!)」
『あっ、は、初めまして…キャピウといいます…』
「僕、バズ㌧⁉︎(え⁉︎初めて会うの?)」
ロマ子姫「あなたたち、どうやってここへ入ってきたの?」
『あ、僕たちは…あなたを…た、助けに来ました…入ったのは僕の力です…』
「僕、バズ㌧…(こいつ、姫の旦那とか言ってなかったっけ…)」
ロマ子姫「そこの方は怪我をしているの?」
『あ、こいつですか?ま、一応頑張ってはいたんだけど、もうダメっすかねw』
「僕、バズ㌧o(`ω´ )o(ダメじゃない!)」
姫が駆け寄る。
ロマ子姫「あ、あなたは⁉︎」
警戒がふっと解け、彼女は青年を抱きかかえる。
「ひ、姫…ご無事で…何よりです…」
『こいつも良くやったんですよ。あのセルトンを倒したんだから。ま、全てはオレのおかげなんだけどね!』
「僕、バズ㌧…(お前はずっと怖がってたじゃん…)」
ロマ子姫「そうでしたか…あなたが…」
⸻
呼応
ロマ子姫「私はあなたがきっと来てくれると信じておりました。
こんなにボロボロになっても迎えに来てくれるなんて…こんなに嬉しいことはありません」
気丈な顔が崩れ、一条の涙が頬を伝う。
そして、その雫が青年の頬に落ちた――。
『瞳違いし者と紋章の呼応』。
古より語られた御伽話の奇跡が、今ここに発現したのじゃ。
突如として、姫、青年、そしてバズ㌧を白い光が包む。
『お、おいどうしたんだ⁉︎オレも入れろよ!』
三人(二人と一匹)を包む光はやがて収束し、バズ㌧の9mm砲へと集まる。
光の束が一点に集約された、その刹那――
「僕、バズ㌧!!!!!(バズーカ発射!!!!!)」
『おーーー、何だぁ⁉︎』
影に覆われた闇の小窓へ放たれた小さな弾は、暗がりを伝い、闇の中心で弾けた。
夜空に、姫の瞳と同じ赤と青の“豚”の紋様が広がる。
『きゃあ〜花火みた〜い、綺麗〜!』
紋章は黒い影を引き裂き、ザヤキュッ*ト大魔王は跡形もなく消滅。
その脚元には、小さな米粒が――。
⸻
米粒再び
ロマオ「な、何だ⁉︎突然大魔王が消え去ったぞ⁉︎
こいつは何だ?とりあえず連れて行くか…」
ロマオは米粒を摘み上げ、なんとも言えぬ顔をした。
一方、城内でも不思議なことが起きておった。
「ん?体が動くぞ!治ったのか⁉︎」
『おーやったじゃん!』
「僕、バズ㌧!(あの花火みたいなののおかげかな!)」
ロマ子姫「良かったぁ!」――号泣で抱きつく。
『おい、こら〜!』
「僕、バズ㌧( ̄∇ ̄)(ヒューヒュー!)」
遅れてロマオが到着した。
ロマオ「お、お前ら、そういう関係だったのか⁉︎」
ロマ子姫「ち、違うのよ!ってロマオ⁉︎」
「………」
『おい!お前の持ってるそいつは⁉︎』
「僕、バズ㌧!(さっき逃げたやつだ!って王子様に向かって“お前”って…)」
オコメ「こめちゃんは偉大なる魔法使いオコメだぞ!こら!摘むんじゃない!」
オコメ「こめちゃんの最高傑作セルトン王子をよくも虐めてくれたな!許さないぞ!」
「お前がセルトンの生みの親か!」青年が叫ぶ。
『おいおい、こんなのが親玉かよ…』
「僕、バズ㌧…(僕より小さいよね…)」
オコメ「うるさい!こめちゃんの魔法で操ってやる!えい!……あれ?えい!」
『こいつ魔法出ないんじゃね?』
「僕、バズ㌧?(紋章の力で魔法を封じられてるのかな?)」
「そうと分かれば、今のうちに倒してしまおう!」
オコメ「ちょ、ちょっと待ってよ〜!」
オコメ「こんな小さなこめちゃんを寄ってたかって虐めてどうするのさ?
いじめは良くないよ!(魔法が使えるようになったら潰してくれるわ)」
『たぶんこいつ裏で潰すとか思ってるぞ、絶対』
「僕、バズ㌧…(顔に出てるよね…)」
⸻
謎の三つの声
ロマ子姫「待ちなさい。気持ち悪い米粒だけど、殺すのはかわいそうじゃない?」
オコメ「……(気持ち悪いかな…)」
「僕、バズ㌧?(なんかショック受けてる?)」
ロマオ「そうだな。いくら悪さをしたとはいえ、裁くのは王の役目だ。殺さず連れて帰ろう」
オコメ「……(しめしめw)」
『おい、一瞬ニヤッとしたぞこいつ!』
「しかし、それではこいつのせいで死んでしまったシンゴさんや親衛隊のみんなが…」
突然、三匹の豚が部屋に入ってきた。
謎の声①「おい、小僧、呼んだか?」
謎の声②「また揉んでやろうか?小僧」
謎の声③「やれやれ、小僧は変わらんのぉ」
「シンゴさん!バクさん!ヒサさん!」
『え〜⁉︎豚じゃんよ?』
「僕、バズ㌧?(どうしてマン㌧三銃士が豚になって現れたの?)」
シンゴ㌧「お前が我々を呼んだんだぞ。ありがとうな」
バク㌧「これからも鍛えてやるからな!」
ヒサ㌧「こりゃ包帯がたくさん必要じゃな」
三匹の豚と抱き合って涙に暮れる青年の横で、キャピウがドヤ顔で言った。
『しゃーねぇーな〜、おいバズ公!お前の弾をアイツに撃ってみな!』
「僕、バズ㌧?(え、そんなことしていいの?)」
『こまけぇこたぁ、いいんだよ!』
「僕、バズ㌧〜!!!(じゃあ、バズーカ発射〜!!!)」
9mm砲から放たれた白い光がオコメを包む。
玄米のような米粒が、精米されたように白く輝いた。
謎の米粒「キュッ*?」
甲高い声がこだまする。
「ボキュ、ざやキュッ*ん!」
『これなら魔法も詠唱できないから安全だろ?』
「僕、バズ㌧!(なるほど、やるねぇ!)」
⸻
夜明け
やがて――長かった夜が明け、朝日が差し込んできた。
石畳には、オコメに操られていた人々の足音が戻り、鐘の音が空を染め、やがて人々の笑顔が街へ帰っていく。
こうして姫を救い、悪の大魔王を倒した(?)一行は、王国への帰路についたのじゃ。
⸻
結び
わしはガリュ㌧。
『バズーカ王国物語』、どうじゃったかな?
わしの小説家としての処女作を、皆㌧に読んでもらえたことを嬉しく思うぞ。
下のリンク先から「楽曲最終章」を聴いてくれるとありがたい。
あ、お話しはもう少しだけ――
『バズーカ王国物語 後日譚』として続くので、引き続きお付き合いいただければ幸いじゃ。
じゃあの。
――そして最後に。
「僕、バズ㌧!(読んでくれてありがとうね!)」
🔗楽曲『バズーカ王国物語 最終章』
https://suno.com/s/uYi0qojlBmSjQawn
バズーカ王国物語 臥龍(がりゅう) @Zhuge_Liang2
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