第8話


「おい、ヤーサ。確かお前、今度ギルド実習だったよな、どうするよ?」


「どうするも何も……ソロですけど?」


「それも……そうだよなぁ。お前の足手まといにならんような奴なんて同年代にはいねぇだろうしなぁ」


「それは買いかぶりすぎですよ」


「ちょっと実力つけさせすぎたなぁ」




 今ヤーサがしている話は今度行われる授業の一環であるギルド実習の話だ。


 学園ではそっちの道を志すものが結構いるため冒険者ギルドで生徒用の特別ランクが発行され、無事卒業できれば卒業と同時に成績によって最大でC級ライセンスが発行される。


 ちなみにC級ライセンスを持っているとギルド職員になるための試験なども免除される。


 尤も冒険者などが歳や怪我、そして限界を感じた時によく使われる制度であって学園卒業時にC級ライセンスを取るような生徒は滅多に使わないものであるが。


 ヤーサは初等部高学年の時にある運命的な出会いを果たし、すごい師匠に恵まれていたのでその師匠の教えを守り、筆記、実技ともに学園での成績はトップクラスである。


 今度の実習も本来サンなどよくつるんでいたグループで行くはずであった。


 サンと気まずい関係になってしまってチームワークに影響が出るのは避けた方がよいだろう、それでいて今更別のグループにお邪魔するものなぁとヤーサは考えた。


 幸いにもヤーサはソロでもやっていける実力があったためそこまで深刻に悩む問題では無かった。






「折角だしエルちゃんとやらを誘ってみたらどうだ?」


「……なんでいきなりエルちゃんがでてくるんですか? それと実力云々どこ行ったんですか」


「好きなんだろ?」


「ぶっふぇ!? すすっすすすきとか、いいいいいきなり何言ってんですか!?」




 あまりにもうろたえるヤーサに話している男はあきれる。




「なんか中坊みてぇな反応だなぁ。出会ったときはこいつはぜってぇ女泣かせな天然たらしになる!って思ってたんだがなぁ」


「たらしなんてなるわけありませんよ!! それに中坊って何ですか?」


「おっといけねぇ、つい出ちまった。中等部の初心で思春期入りたてのガキって意味で考えといてくれや」


「はぁ……」


「よし、話を戻すが結局好きなんだろ?」


「うまく流せなかった!!」


「振られたら俺が記憶消してやるから砕けてこい」


「砕けるとか不吉なこと言わないでください!」


「認めてるぞ」


「はっ」










 でも案外エルとパーティー組んでみるのも悪くないかなと思い、師匠に言われたからしょうがなくなんだと自分に言い聞かせながら浮かれ気味でエルを探す。


 頭の中ではエルの前で大活躍していい感じのことになったらいいなぁなどと言う低レベルな妄想が広がりつつあった。


 探しているとすぐにエルの後ろ姿を見つけることはできた。


 しかし話しかけようとしたら見失ってしまった。


 同じような出来事が何度か繰り返し起こったところでヤーサはもしや自分はエルに避けられているのでは思い当る。


 思い切って次見かけたら大声で呼んでみることにした。




「おーーーい、エルちゃーーん!!」 






 直後エルは一瞬びくっとしてから逃げていった。


 流石のヤーサも避けられてることを確信した。


 そして頭が働くより先に体が動いた。


 無意識に魔法で身体強化を行いエルの前へと回り込む。


 さらにそれでも方向転換をして逃げようとするエルの横へ行き壁に手を突き行く手を阻む。




「逃げないでよエルちゃん。……俺なんかしたかな?」




 エルのおびえるような眼差しにハッと我に返る。




「ごめん……」


「あっ、まっ――――」




 ヤーサはその場を離れた。













 

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