第1話

 沢山の種類の花が植えられている正しくお金持ちの庭といった感じの貴族の庭園に六歳位の少年、ヤーサは迷い込んでいた。


 やんちゃ盛りのヤーサは悪いことをしているとは少しも思わず道中で拾ったなんかいい感じの木の枝を武器に見立て探検を楽しんでいる。


 しばらくさまよい歩いていると迷路のような所を抜けテラスにたどり着いた。


 探検気分のヤーサはひっそりと花の影からテラスにあるテーブルを見つめる。


 そこには茶色でくるっとウェーブのかかった髪が特徴の同い年くらいの女の子が紅茶だと思われるコップを片手に優雅に座っていた。


 アフタヌーンティースタンドには美味しそうなお菓子が色とりどりに乗っている。


 本来、色気より食い気のお年頃であるはずのヤーサである。


 だが、この時は、何時もだったら目を奪われておねだりするようなお菓子があるにもかかわらず、そちらを認識する事ができないレベルで、とても可愛らしい様子の女の子から目を離すことが出来なかった。

 

 無遠慮にも、ジィーっと見ていたら女の子も気付きヤーサと目が合った。


 女の子は結構戸惑っていたが天然のヤーサがにぱーっと笑うと多少ぎこちなさは残るものの女の子も笑い返した。




「ねぇ、君の名ま――」


「ちょっとヤーサ!! 駄目だよ!! 見つかったら怒られるって早く逃げよ!!」


「えーーー!? ちょっとだけまっ――」


「待てないよ! そんな事してたら捕まって大変なことになっちゃうよ!!」



 仲良くなるために、名前を聞こうとしたヤーサだったが、ヤーサを心配して追いかけてきた友達に手を引かれ引きずられるように来た道を戻っていく。


 仕方なく、じゃあね~といった感じで掴まれていないほうの手で女の子に手を振る能天気なヤーサ。


「いったい、何だったのでしょうか?」


 とりあえず控えめに手を振り返しながらも何が何だか、訳が分からない女の子がぼやきを上げた。

  

 これがヤーサと女の子、エル・ジュエリーの初対面であり、運命の始まりだった。

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