第五章 ミノリこもる家 モモネ危機
国民的美少女のモモネは
オレを恋愛対象としては見ていなくて
オレを弄んでいるだけなのかもしれない。
そんなことないと想った途端に
頭から離したくても離れなくなる
今も心から愛されているという妄想…
これまでのモモネの様子から
想いきることもできない現実…
現実の状況と妄想の中での状況が
頭の中で入り混じっていくにつれて
さらにその感覚は強くなっていく。
オレのモモネとの恋に
最期が見え始めてしまった。
=====
雨が降っている中を
傘を持っていないオレは
急ぐ気力もなく歩いて家へ向かった…
モモネが愛してくれていると信じようと
気持ちを切り替えたりもしてみたが…
ミノリ『オレって…
ホノカの言う通り
モモネに弄ばれてた
だけだったなのかな…』
モモネは国民的美少女…
スズメとかホノカとか
のほうが楽なのかな…
でも…モモネと…
そう考えた瞬間に足が止まった。
あれ?なんでオレって…
手紙にもかけなかったのに…
雨がリュックをたたく。
じわりと冷たさが体に染みて、
心まで重たくなる。
ミノリ「教科書濡れるの嫌だなぁ…」
垂れ下がる前髪…
呼吸が深いため息のように重い…
涙と雨、
それだけでは
隠しきれない孤独感。
ミノリ「どぉなんだろぉ…
モモネにとってオレって…」
「モモネ以外の
誰にもわからないし、
オレ自身も
もう何も信じられない…。」
どうせ、オレなんか…。
声にしたらホントに
終わってしまいそうだ。
言いかけては口を噛んだ。
どうしようもないくらいつらくて
重たい表情にしかなれないまま
オレは家の扉を開けた。
ミノリ「ただいまっ…
はぁ〜…」
オレに恋人ができたとか言ったら
また中学生の頃みたいに
どんな人なのとか言って
お節介されるだろうし…
それで困ってるとか言ったら
戸惑うだろうし…
エミ 「おかえりなさい
ミノリ…涙?…こっち…」
ミノリ「なんでもない…」
エミ 「強がらなくていいの…
小さい頃みたいに…」
ミノリ「しない…」
エミ 「なんで濡れてるの?
友達いるでしょ…」
ミノリ「いる…いない?…」
「だって…じゃなくて…」
「雨だよっ!傘忘れただけ!」
モモネにとって
恋愛対象じゃないかもしれない。
オレがモモネを愛していいわけが
どうしても言葉にできない。
エミ「いつもそんな声じゃないでしょ…
どうしたの?教えて!」
寂しさを感じ、
その反動でつい…
ミノリ『何でもねぇって!!
あっ…なんでもない。
ごめん。』
…親に怒鳴ってしまった。
いつもはテストとか部活の
今日あったことを笑顔で話せる、
リビングで母さんの目を見て。
でも今日は頭がモモネのこと以外
空っぽでそれもできなかった。
リビングに足が向かなかった。
母さんは言葉を探すように黙り
少し寂しそうな表情になった。
父さんは静かに頷き
オレの目を見つめた。
エミ 「そう…」
外でシトシトと雨が降り続く中…
重い足で家の階段を昇って…
ジメーっとした湿気の中で
自分の部屋のドアを開けて…
手にドアを閉める気力すらなく
そのまま床に座り込んだ。
あぁ…あれが…ふり…なんて…
部屋の窓の外で
雨が降り続けている中…
スマホをみると
((モモネ.ミノリ、大切に保管していた
ミノリのクッキー食べたよ。
美味しかったよ、ありがと。
手紙もありがとね‼))
モモネがこんなオレを
大切に思ってくれているんだ…
でも、本当にそうなのか?
ホノカの言葉が頭から離れない。
まるでとりつかれたかのように。
信じたくないのに
どんどん心を支配していく。
これも…ただのふり…
なんだろうな…
大切に保管?忘れてただけだろ?
…思ってないのに気持ちだけが…
気持ちを抑えきれなくて
自分の部屋で独り混乱が続く。
一階では父さんと母さんが…
こんなふうに自分を閉じ込めるなんて
このまま部屋から出てこなくなったら
ワタシはどうすれば良いのかしら。
エミ 「ミノリ…
どうしたのかしら…
何かミノリにできることっ…」
確かにいつもと違うけどな。
今は見守ることしかできない、
それがミノリのためだと思う。
ツムギ「そのままにしておけばいいさ!
今のミノリなら
きっと乗り越えられる。」
エミ 「そうかな…」
ツムギ「もうあの頃のミノリじゃないさ。
ミノリなりに考えてる。」
「自分できっと乗り越えられる。
ダメならそのとき助ければいい。」
エミ 「…そうね。
見守るしかないわね。
でも何かあったらすぐ動くわ。」
帰宅直後でまだ5時だったが
疲れて眠くなってきたため
オレはベッドに寝転んだ。
"オレは国民的美少女の
見た目の甘さに惑わされた。
ホントはその中に苦みがあるのに。
"弄ばれてた、ホノカの言う通りだ。
臆病で、不器用で、
こんなヤツを本気で好きなんて
思うわけがない。
間違ってたんだ、ずっと。"
"愛すれば愛するほど
愛されていないかもって妄想が
胸の辺り突き刺してくる、
ただ本気で愛したかった…
それだけなのに…"
もう、何する気力もない。
このまま閉じこもっていたかった。
そんなとき突然、電話がかかってきた。
モモネのお母さんのタマネからだった。
ミノリ「くだはらみのりっ…
どーしたんですかっ…」
タマネ「モモネの母タマネです。」
ミノリ「どうしたんですかっ!?」
タマネ「モモネが緊急入院したの。」
ミノリ「えっ…!!そんな…‼
じゃあ学校休んでたのは…‼」
動揺し続けるオレに
モモネが打ち明けたオレへの愛
について話してくれた。
タマネ「モモネに持病があってね。
緊急手術と入院が決まったの。」
「そのとき…」
「…もしこれが人生の最後なら…」
「ミノリと
タマネ「って。
今すぐ来てくれますか?」
ミノリ「えっ最期…!?」
頭の中が真っ白になる。
心臓が一瞬、凍りついたように感じた。
でも、そんなことを考えている時間はない。
ミノリ「…すぐいきます。」
中にあった教科書たちが
びしょ濡れのリュックを部屋に置いたまま
ミノリ「…行ってきます!」
エミ 「えっ?どこへ?」
急いで外に出て自転車に乗った。
雨がようしゃなく降り注ぐ。
冷たい水滴が顔を打ち付ける。
視界が雨粒でぼやけ
地面は滑りやすくなっている。
肌に張り付くシャツが寒さを増す。
「モモネが待っている」
ただその一心でペダルを必死に踏み込む。
モモネ本人の思いを聞かずに
オレはどうして家で閉じこもってんだ…
けど今は後悔してる場合じゃない…
そばにいてあげることが大事だ。
モモネ、待っててくれ…。
心臓の鼓動が
痛いほどに早くなっても
オレはただ前へ進む。
傘は持てない…
カッパも持っていない…
そんな状況で
モモネがホントに愛しているのか
なんてことは考える必要はない。
愛してくれていることを原動力に
ひたすらにペダルをこいだ。
ミノリ「はぁ〜っ…はーっ…」
オレは中学まで恋愛をせず
うまく誰かを支える言葉を与えれず
ここまできてしまったんだ。
モモネという愛する人の願いのために
何かができるときがやってきた。
モモネの笑顔を守る、
それがオレの役目なんだ。
そして、病院の待合室まで
急いでやってきた。
タマネ「ミノリ君ね。」
ミノリ「はいっ」
タマネ「モモネ、来てくれたわよ。」
モモネ「ミノリ…ごめんね…
ずっとどう思うか
怖くて言えなかった。」
「病気のこと打ち明けたら
ミノリが優しくしてくれるのも
痛み分けみたいなのになるかも
って思うとつらくて。」
うつむくモモネの目には、
涙が光っていた。
モモネ『ワタシ
昔からずっと病気を抱えてるの。
お医者さんにも
きっと長くは生きれないって…』
病気の作用に耐え
苦しそうにも辛そうにもして
瞳に涙がたまっているモモネを見て…
オレが辛い顔していちゃダメだと
笑顔をつくった。
ミノリ『モモネ…
でもその分みんなよりも
時間を大切にしようと
思えるってことだろ。』
モモネ「ミノリ…
そうだよね…」
ミノリ『なら…
痛み分けじゃなくて
支え合おう。』
モモネ「ミノリ♡
ありがとう。」
「ミノリのおかげで
なんだかまだまだ
生きれる気がして来た。」
自分の短い言葉で微笑んでくれたことに
これまでに感じたことのないほどの
喜びと
ミノリ「モモネ…♡」
けど、オレはモモネの
特別な存在になる自信がなくて
つい弱音を吐いてしまった。
ミノリ「モモネ、ありがとう、でも…」
モモネ「ん?どうしたの?」
ミノリ「ホントに最期が
オレでよかったのかな。」
「ボロボロのクッキーと
ガタガタのレター渡されたの
本心では気持ち悪いとかって
思ってなかった?…」
モモネはミノリが
さみしそうにしているのを見て
モモネ「そんな顔しないで。
ミノリと一緒にいることで、
どれだけ救われてきたか…
言葉では言い表せない。」
「あなたがいた
あなたがいるから、
私も強くなれる。」
「だから、最期を一緒に…
って言ったんだ。」
ミノリ「救われたってどんなことで?」
モモネ「黒板掃除してくれたでしょ…
ワタシの代わりにしてくれたの
ホントに嬉しかったんだ。」
「ほら、電車のときも、
ワタシが体に当たっても
何も言わずに受け入れてくれたし。」
ミノリ「えっ…あんなことで…
っでもないかぁ…」
モモネ「モデル活動ばっかしてた
中学生の頃に国民的美少女って
肩書きのこともあって
いろいろあったの…」
「男子達には好きだ好きだって
持ち寄られてばかりでね。」
「女子達には掃除とかサボるなとか
自分だけチヤホヤはずるいって
きつくせめられてばかりだった。」
「言葉が刃のように思えた。
だから優しい声をくれた
ミノリがホントに救いだった。」
ミノリ「そう思ってくれてたなら
オレも嬉しいよ♡」
モモネ「電車でぶつかったときも
クッキーと手紙もらったときも…
正直少しはあれってなった。」
「ブランドものとかのじゃない
愛してくれてるミノリ自身が
クッキーとレターを
作って渡してくれたこと…」
「国民的美少女モデルとしてじゃなく
一人の女子高生の親友として
電車で接してくれたこと…」
「それが嬉しくて
否めないことたくさんあるけど
全然…気にならなかった。」
「優しく支えてくれて
ホントにありがと♡」
ミノリ「モモネ♡…ありがとう!!」
モモネの言葉を聞いて
一つの答えにたどり着いた。
愛って何なんだろう?
形にできるものじゃないし
目に見えるものではない。
モモネとのこれまでが教えてくれた。
相手を思いやる…気持ちが通じ合う…
そして相手の存在が希望になる…。
相手の存在を希望と思う気持ち、
それが愛だ。
その日、雨が止み
雲間から刺すような光が
グレフルの果汁のように溢れ
フタリの心を満たした。
第五章完結____
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