第四章 雨の日二人、傘さして。
モモネを愛する日々のなかで
幼馴染のスズメに話かけた。
部活終わりと次の日の雨は
モモネやスズメに
愛を伝えきれていないと
気づかせてくれた。
そして
恋愛に対する自信を持てなくなった。
いったいオレのモモネと
スズメとホノカとの関係は
どうなっていくんだろう?
=====
春の暖かさがおさまり
じめじめとしてきた頃…
いつも通り学校に向かったが
その日の学校までの道に
モモネの姿がなかった。
いないのかと少しさみしく思ったあと
周りを見渡すとスズメの後ろ姿が見えた。
久しぶりに話しかけてみよう…
そう思い小走りして近づき話しかけた。
ミノリ「おはよ!久しぶりだな。」
スズメ「おはようミノリ。
こうやって話すのは
久しぶりだね。」
ミノリ「高校生になってすぐだけど
最近困ってることねえか?」
スズメ「…そういえば困ってるとは
言わないかもだけど
ココ!物理のココ
教えてくれないかな?」
スズメは高校物理の教科書に書いてある
大学応用物理の力学で習うような
発展的な内容を教えてと頼んできた。
ミノリ「ここって…まだやってないだろ?
やらないかもしれないし。」
スズメ「まだだけど
新しい教科書だから
少し読んでたら
なんだか気になって…」
スズメ「小学生のころから
成績トップのミノリなら
知ってるかもって
思ってたんだけど…」
スズメの言葉にオレは
中学の卒業式のときみたいに浮かれた。
ミノリ「スズメ…
そんなの言われたらぁ…。」
「それより…すげえじゃん!!
スズメ勉強熱心だな!
知ってるから教えられるよ。」
「ココは運動量保存則を
使うんだけど…」
スズメ「ウンド…運動量って?
中学校で習ってないよね?
これから習うんだよね?」
ミノリ「運動量は深く学ぶのは
大学でのことかも。」
運動量...
軽く説明するとすれば
物体の動きの勢い。
ミノリ「そんなものに
興味持てるなんて凄いな!」
スズメ「へぇっ…そうかなぁ?」
ミノリ「運動量ってのは
物体が動いたときの…」
学校に向かいながら
運動量について教えるオレ。
教室の違うふたり
学校が近づく。
スズメ「よくわかったよ。」
ミノリ「そうか!よかった。
またなんかあったら
時間つくるから
いろいろ話そうな!」
スズメ「またね!」
スズメ「…あっ…それと…ワタシ…」
ミノリ「ん?どうした?」
スズメ「…。やっぱなんでもない!
また今度ね。」
ミノリ「ああ。」
頑張り屋なスズメをオレは
最初の友達である幼馴染
としか思っていなかった。
しかしミノリの知らないところで
スズメはミノリを気にし続けていた。
ワタシがいなくても過ごしていけてるし
弱虫なんて思うことがないほどに
積極的で仲間想いに成長したミノリ。
スズメ「ミノリ、かっこいい。」
影ながら見守っていた。
そんなところを昼休みにオレは目撃した。
ユウハ「あっ!あれって…スズメ?」
ユウハ「スズメ!」
スズメ「ユウハ!」
ユウハ「かっこいいって誰のこと?」
スズメ「ミノリ。ワタシ、
幼稚園の頃からの幼馴染なの。」
ユウハ「うん、まえミノリから
聞いたことある。」
スズメ『他の人も
ミノリが好きなの知ってるけど…
アタシ、ミノリのこと大好き。
告白したいんだけど…』
ユウハ「えっ、告白?
ミノリに?」
スズメ「うん…」
ミノリは今…
これまでになかったくらいに
モモネに絶大な想いを
寄せていたような…
オレはミノリとモモネの恋も
ミノリのスズメへの想いも察して…
ユウハ「そうなんだ…
それちょっとでも伝えた?」
スズメ「かっこよすぎて踏み出せなくて
最近は眺めるだけしかできなくて
伝えれてない。」
ユウハ「思ってるだけじゃダメだよ!
言わねえと伝わらないよ。」
スズメ「そうだよね。
でも…ミノリがアタシのこと
なんとも思ってなかったら…」
ユウハ「そんなのは
言ってからのはなしだ。」
スズメ「そうだよね…
言わなきゃ後悔するよね…。
頑張ってみるよ!」
物体が動くとき必ず力が必要なんだ。
いろんな力を借りて自分の力に活かして
動き出す。そのときの勢いが運動量。
物理ってドラマチックだよな。
アタシはミノリの運動量の説明を
心のなかで繰り返し…
ミノリはこれまでずっと支えてくれた。
ユウハは告白する勇気をくれた。
自分の力に活かして進んでみなきゃ
アタシはいつまでも
止まったままの球体だ。
…ミノリに告白することを決意した。
そして放課後
スズメが想いを寄せているなんて
知りもしないままのオレは
いつも通り部活を頑張っていた。
体育館を出ると雨が降っていた。
傘を持って来ていなかった。
ミノリ「雨か…汗かいてるし
帰ったらシャワーだな。
濡れてもしかたねえし
このままダッシュで帰ろ。」
濡れる覚悟で玄関を出ようとした。
スズメ「ねぇ、ミノリ…」
ミノリ「スズメ…?どうした?」
スズメ「ミノリ、傘忘れたんでしょ。
アタシ置き傘持ってるし、
一緒に帰んない?」
ミノリ「スズメ…ありがと、いいの?」
スズメ「うん…。」
卓球部じゃないのに
幼馴染のオレを心配して
ここに来てくれたのか?
傘の下、スズメの右肩が濡れた。
オレがスズメが持つ傘の柄の上を
優しくつかむとスズメの指が重なった。
ミノリ「背高いしオレが持つよ。」
スズメ「ありがとう♡」
家に近づいてきて
オレはスズメに礼を言った。
ミノリ「傘貸してくれてありがとう!
後は一人で行くよ。」
スズメ「ねぇ、ちょっと待って。」
ミノリ「どうしたんだ?」
スズメ「もう少し一緒にいたい…」
ミノリ「え?雨降ってるだろ…」
もう少し一緒にいたい…
雨音の中でその声だけが鮮明に響いた。
雨空の夕方、低くなってく気温。
赤くなってくスズメの頬。
ミノリ「気温も低めだし
オレ汗かいてるし
風邪引きたくねえし…ごめんな…」
スズメ「わっ…わかったけどさ♡」
そう言うと急に傘を持っていた
オレの右手を両手で握ってきた。
少し冷たくて、小さくて、
それでも力強い手だった。
ミノリ「どうしたんだ!?」
スズメ「握らせてよ…ミノリの手…」
ミノリ「えっ…♡
まぁ…いいけどさあ…」
スズメの手は
ゆっくりとオレの手が包むと
どんどん温まっていった。
手を握りたいという言葉に
何か深い理由がありそうだと
オレは息を呑んだ。
スズメの手が震えている。
傘の柄を握る指には
じんわりと汗がにじむ。
今、言わなきゃ。
言えなかったら、きっと後悔する。
でも、怖い…。
もし拒絶されたら…?
ミノリとの関係が壊れたら…?
不安と期待が入り混じるなか、
精一杯の勇気を振り絞って
スズメが口を開いた。
スズメ「うぅ…ミ…ミノリ…」
声は少し震えている。
頬が傘の下で赤く染まっている。
これまでスズメがしてこなかったことを
オレにしようとし始めようとしている…
そう気づいた。
スズメ「ミノリ、スズメさ、
ミノリのこと好きなんだけど
付き合って、欲しい…」
ミノリ「えっ…」
言葉が傘の内側ではじけた。
何も言えなかった。
幼馴染のスズメがオレに…?
ありがとね、ミノリ♡
一瞬モモネの笑顔が頭をよぎった。
オレが好きなのはモモネ。
付き合って…
恋のじゃなく驚きのドキドキが
オレの心臓を跳ねさせた。
でもスズメも幼稚園生の頃から
ずっと支えてくれた大切な存在。
今…返してあげないと。
言えなかったら後悔するし…でも…。
どうすればいい?
どう答えればいい?
何も言えないまま
時間だけがすぎていく。
心臓のドキドキが
雨音と重なり頭がぐちゃぐちゃになる。
スズメ「…。」
この沈黙がミノリの返事なんだよね。
ミノリはワタシを恋人にする
なんてことしなくても平気なくらい
みんなと仲良くやってるの見てるし
ワタシが間違ってたんだよね。
オレの手を握っていた手を
ウズウズと動かし離してから
照れ隠しなのかわからないが…
スズメ「そんなの言っても
ミノリは成績トップだし…
アタシよりもカワイイひとに…」
「想いを寄せているよね…
寄せられてるのかな?
アタシなんて…」
ミノリ「えっ…。」
ミノリの返事を待つ。
でも、言葉は返ってこない。
雨音がやけに大きく感じる。
この沈黙が、答えなんだよね。
心臓が痛い。
分かってたけど…
やっぱり期待しちゃってたんだ。
無理に笑った。
スズメ「やっぱいいや。じゃっ、またね!」
足が重い。でも…
ここにいたら、泣きそうになる。
だから、早くこの場を離れたかった。
ミノリ「えっ…!?」
オレにを残してスズメは
家へと帰っていってしまった。
オレは戸惑いながら家へと帰って行った。
どうしてアタシ
幼馴染に対してこんなに頑張っても
言いたいの素直に打ち明けられないの?
どうしてオレ
幼馴染の質問にこんなに頭使っても
答えが口から出てこないんだろう?
翌日の朝の校舎までの通り道…
ミノリ「モモネ、
今日も見かけなかったな…」
…薄曇りの空のもと独りでいたミノリに
ワタシは出逢った。
ホノカ『ミノリ、見てたよ…』
『モモネに内緒でスズメと
あいあいがさなんて…』
ミノリ「…あいあい…がさ?」
ホノカ「昨日雨の中で帰り道かな…
やってたじゃん。」
ミノリ「あ…あれは…」
ホノカ「モモネに言ったら
どれだけ落ち込むか…」
ミノリ「あれはラブラブだから
なんかじゃなくて…
ただ傘忘れたから
入らせてもらってただけで…」
ミノリもワタシも校舎の中に入ったとき
話を止めようかとを思ったが
そのとき周りにいるのが二人だけだった。
モモネがあんなに注目されてる中で、
ワタシはいつも影に隠れている…。
モモネがミノリに夢中になって
最近きっとワタシのことを無視してる…。
あんなのずっとは見てられない。
だからってこんなことをするのは…。
苦しい気持ちを隠してワタシは
ミノリにさらに話しかけた。
ホノカ「傘借りるくらいの関係?
ミノリにとっては
スズメはなんなの?」
ミノリ「初めての友達…幼馴染…。」
ホノカ「ふ〜ん、そうだったんだぁ。
ていうかさ…ミノリ、
モモネに告んないの?」
ミノリ「は…恥ずかしくて…」
返答を聞いたホノカは立ち止まり
あざ笑うような口調で…
ホノカ「モモネと向かい合って
好きだなんてこと
ボロボロガタガタをプレゼントした
不器用なミノリはできないか。」
ホノカ「じゃさ、ホノカが
付き合ってあげよっか?」
ミノリ「お…オレは…オレは…モっ…」
そうオレが言葉に迷っていると
あざ笑うような口調は増々強まり…
ホノカ「そんなことを
ホノカがすると思った?
ミノリなんて…キライ」
すると一変、冷めた口調で…
ホノカ「…付き合うなんて
ありえない。」
ホノカ『それに…ミノリなんかに
モモネもしないよ。』
ミノリ「じゃあなんで…」
するとウソかホントかわからない
モモネの裏の顔についての話をし始めた。
ホノカ『モモネはスカセレで
選ばれた国民的美少女だからさ…
あの笑顔は仕事なんだよ…。』
『完璧の笑顔と立ち振る舞いで
誰もかもを惹きつける。
そのトラップに
まんまと引っかかって。』
ミノリ「モモネはモデル…
でも…オレには…。」
そう言ってオレは思い出した。
プレゼントを渡したとき…
モモネ「も…もちろんいいよ。
あ〜…あり…がとっ…」
ミノリ「少し嫌そうだった?」
「初日も聞き流すか頷くか
無口かって感じだったし。
オレにホントは興味ない!?」
「プレゼント渡したときも
不満気そうだったかも。でも…
アレは頑張りの証って…。」
ホノカ「あの言葉も
ミノリへのファンサ…
…ってこともあり得るでしょ。」
「だってみんなの前で
ニコニコしておくのが
国民的美少女の仕事の
大部分でしょ。」
その話を聞いていくうちに
ホノカの言うことが
ホントかもと感じてきた。
モモネはオレを
ただの遊び相手とか
ただの笑顔で魅せる客の一人とか
そんなふうにしか見ていないのか?
しかし…
それでもウソだと思いたいオレは…
そうなんだったら
あの時のモモネの笑顔は
演技だったのか…
モモネ「ワタシのこと思って
頑張って作ってくれた
ミノリ、ありがとね。」
ミノリ「そんなことないよ…
国民的美少女
だからってことは…」
ホノカ「ホントにそうなのかなぁ?
だとしても偽りの愛かもよ?」
ミノリ「わからないけど…」
ホノカ「でしょ…」
ホントはこんなことしたくなかった。
でもモモネに見放されたり
見捨てられたりされないかが怖かった。
だから…ごめんね…ミノリ…。
困惑しまくり涙目になったミノリを見て
ワタシはとどめを刺した。
ホノカ「どっちにしろ、
ミノリよりワタシのほうが
国民的美少女であるモモネは
釣り合い取れてると思うけどね!」
「それでも国民的美少女になる前から
モモネと友達のワタシを
邪魔する気ならあとは
ミノリの好きにすれば!
じゃあね…」
ミノリ「…ホノカっ…」
ホノカの言葉と去っていく姿。
オレは心のなかで思いを巡らせた。
オレにとってはモモネは特別な存在。
だけどオレはモモネにとってなに?
…ただの一ファン?
…ただの友達?
…それとも…
入学式でモモネと話したとき、
彼女の優しさに心が温まったんだ…
でも、あれは本当の気持ちから出た言葉
じゃなかったっていうのか?
それがホントだとすれば
モモネはオレを弄んでたのか?…
…あんなに愛情の言葉で。
オレ…モモネのためにって思ってたけど
それでモモネのこと困らせてたのかな。
そうだとしてもオレがモモネが好きだ
という気持ちは変わらない。
そう思いオレは
これまでのモモネとの会話を
いちから振り返った。
すると
とある会話が頭の中で引っかかった。
モモネ「う〜んっ?
何を想像してたの?」
ミノリ「あっ…♡
いやっ…何でもない。」
想いを伝えれたかもしれないタイミングに
オレは伝えれなかった。
オレがあのとき…
正直な気持ちを伝えてれば…
こんなこと言われることも
こんな気持ちになることも
無かったかも…
このままじゃオレも
スズメと同じ想いになっちゃうかも…
さらにホノカやスズメとのことを
思い出して他の方法を見つけてしまい、
ミノリ「でも…こんなオレ…
恋愛対象にされてないって
打ち切ったほうが楽かな?」
"モモネとの恋を
という選択肢が現れてしまった。
でも、
今まで信じてきた気持ちも…
モモネと過ごしてきた思い出も…
…忘れるなんて…そんなのできない。
初めての恋人を知人の憶測なんかで
忘れる諦めるなんてできない。
このまま諦めたくない。
でも、モモネがオレをどう思っているか、
ホントのことを確かめないといけない。
教室に入ってすぐに
モモネに本音を聞こうとしたが
その日モモネは欠席で教室にいなかった。
その日は一日中
授業での先生の言葉よりも
窓の外の雨音ばかりが耳に残った。
モモネがホントにオレ嫌い?
ならなんであんな言葉言ってくれた?
国民的美少女の演技だった?
ならなぜこんな弱虫なオレに?
モモネとの恋をどうするかで
頭の中がいっぱいになった。
家へ帰ろうとした。
雨が降り止むことはなかった。
時間が経つにつれ
雨音が強くなっていった。
土砂降りの雨、2日連続で忘れた傘。
ミノリ「昨日傘忘れたのに
今日も忘れるなんて
オレってついてないなぁ…」
モモネのことも、ホノカの言葉も、
頭の中でぐるぐる回るけど、
もう何も考えたくなかった。
ミノリ「……まあ、いいや。」
顔を上げる。
冷たい粒が頬を伝う。
周りにスズメはいない。
顔に滴るのが
涙なのか雨なのか
もうわからない。
オレは空を見上げ続けた、
涙を誤魔化すために。
そのまま、ゆっくりと歩き出した。
でも
このままじゃ終われない。
たとえ偽りだったとしても
学校外の電車でもそばにあった
あの笑顔に救われたのはホントだ。
モモネの気持ちを確かめたい。
恋愛対象としていた国民的美少女が
欠席の日の放課後の帰り道、
傘を二日続けて忘れたオレは
濡れたまま歩き続けた。
第四章完結____
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