第二章 ゆれる電車と 忘れるテキスト

『モモネ…かわいいなぁ♡

 オレ、恋人になりたいってのは…

 本気で想ったの初めてかも…』

『告りたい♡…大好き♡…

 こんなのオレ言えないやぁ…』


 入学式を終えて帰ってから

 電車の中でも家の中でも

 モモネのことを思うだけで 

 オレの心は揺さぶられていき


 モモネに対する変な妄想や

 恋のアプローチの想像が進むが


 恋愛相手への行為としてのアリナシとか

 そんなことばかりを考えてしまい

 行動に移し始められずに

 想いが高まっていくばかり。


 いったいオレのモモネへの愛と

 オレのモモネを思うたびに熱くなる心は

 どうなっていってしまうのだろうか。


=====


 入学式の翌朝。

 昨日と同じ時間の電車。


 通学と通勤のラッシュで

 座れる席のあるはずがない混み合う車内。


ミノリ「席空いてないなぁ、

    まあいいや。」


 つり革を握って到着を待っていると

 途中の駅でオレが乗車したときの扉から

 乗車してきたのは…モモネ。


ミノリ「あっ!」


 朝の光が差し込み

 モモネの髪がきらりと光った。

 その瞬間、人々の喧騒が

 遠のいた気がした。


 そして、

 学校外の公の場でも昨日の教室と同様

 驚くほどの自然体で

 オレに微笑みを返してくれた。


 国民的美少女とは思えないくらい

 周囲の視線などを気にせずふわりと微笑み

 さりげなく隣のつり革を握った。


  オレ以外の視線を気にせず

  街なかでオレのすぐ側に来て…

  オレを見つめている。


  まるでドラマで出てくるカップルだ。


 するとモモネは

 満面の笑みを輝かせて

 オレに話しかけてきた。


モモネ「おはよう、ミノリ!」

ミノリ「あっ!モモネ…

    おはよう!」


 まだ出会ってから二日もたっていない。


 なのに国民的美少女のモモネに

 ミノリっ!って日常的な感じで

 朝日のように眩しい笑顔で

 話しかけられて驚いた。 


 思わず声が漏れた。


ミノリ「あれっ…

    でもなんで?

    それに昨日はコレには…」


モモネ「なんでって…なにが?

    昨日話しかけてくれたでしょ?

    今日も学校頑張ろ!」


 その言葉にオレは

 心が浮き立つのを感じた。


 一日一緒にいただけで

 国民的美少女にカレシみたいに

 話しかけられるなんて…


 カレシみたいになるために

 どうしようとか考えてたのに…


  モテモテ…女がついてくる…

  やっぱそうなのか!?


 昨日話しかけてくれた

 単なるひとりの同級生として話しかけた

 とも考えられたが想いが先回り。


ミノリ「いやっ…そうだよな!

    なんでもないよ。」


 電車でも隣同士。

 電車がゆれるたびに体も心も傾いた。


 そのときの距離が

 心地良くてたまらなかった。


  ぶつかっている状態のまま

  一緒にいれたらいいなぁ…

  て思ったり…


  でも、そんなにぶつかって

  密着するまでしていいのか?

  メーワクじゃないか?って思ったり…。


 モモネにとってオレは

 彼女か友達か一切確認できていない。


モモネ「あっ!

    ぶつかっちゃった…」

ミノリ「だっ…大丈夫。」


 なのに…

 そのモモネとの距離が心地良くて


 これはアリなのかナシなのか…

 と感じてしまうギリギリの状況に

 気持ちがふわふわした。


 そして


 モモネの腕がかすかに触れたとき

  つい手を繋ぐ想像をしてしまった。


モモネ「ミ…ミノリ…

    もう少しで駅着くよ!!」


 モモネの言葉で妄想から目が覚める。


ミノリ「あっ…あれっ…?」

モモネ「んっ?どうしたの?」


 実際には手は繋げていない。

 隣のつり革を握っているままだ。


ミノリ「な…なんでもないよ…

    はぁ〜…駅まだだよね…」


モモネ「気持ちよさそうで

    そのままでも良かったんだけど

    寝そうになってたから…」


ミノリ「ごめん。

    オレ…寝不足なのかな?」


 電車がゆれモモネのカバンがぶつかり

  心のなかでオレはモモネに抱きついた。


モモネ「ミ…ミノリ…」


 そして再び妄想から目が覚めた。


ミノリ「はっ!」


 モモネの体に抱きついていない。


モモネ「ミノリ…

    もう駅着いてるよ。」


ミノリ「えっ!?もう?」

モモネ「もう扉開いてるよ…

    この駅が終点で良かったね。」


ミノリ「あっ…うん。

    終点だったっけ?良かった…」


  眠気に襲われ

  恋愛相手に心配をかけてしまった。


   オレは…ただ惹かれているだけ?

   本気で好きになり始めている?


   まだ彼女のことを聞けてないし

   恋愛も初めてでどうすればいいのか

   わからない。


   こんなに想像が先走ってしまって、

   本当にそれでいいのか?


 気遣いし続けてくれていることから

 いろいろな心配をしながらも

 少し安心しながら電車を降りた。


 それからオレは駅を出て

 モモネと一緒に学校へ向かった。



ミノリ「なんてことを

    想像しちゃったんだ…

    ごめん…」


 そういうとモモネは首をかしげた。

モモネ「う〜んっ?

    もしかして電車の中でのこと?

    眠そうだったよね。

    夢でも見てたの?」


ミノリ「変なの…思っちゃう…

    それくらいオレは…」

モモネ「変なの?変なのって?

    どんなの?それくらいなに?」


  "一緒に手繋いだり抱きついたり

  することを妄想してた"とか

  "キミが好きだ付き合ってくれ"とか


 弱虫なオレが国民的美少女に

 そんなの恥ずかしくって言えなくて…


モモネ「ミノリ…聞いてる?」

ミノリ「あっ…♡うん…

    けどなんでもないよ…

    気にしないで。」


 …思わずその言葉を

 心の奥にしまい込んでしまった。


 電車の中でぶつかったときも

 何想像してたのか聞いたときも

 "なんでもない"ばかり言うオレに

 モモネはこう呟き微笑んだ。


モモネ「ミノリは今日も

    恥ずかしがり屋だね。

    なんでもないよばっかじゃん♡

    まあいいや♡」


ミノリ『学校でも電車でも

    外でもいつでも

    モモネは可愛いなぁ…♡』


  モモネに好きだって言いたい。

  でも言葉を口にする勇気が出ない。


  けど今のオレじゃ、

  まだ足りないのかもしれないなぁ。


 こうして

 穏やかで少し甘酸っぱい

 一日が始まった。


 その日の放課後…

 オレはナオトと

 一緒に帰る約束をしていた。


 オレとナオトは

 中学生のときもよく一緒に帰っていた。


ナオト「今日も一緒に帰ろうぜ。」

ミノリ「ああ!」


 成績優秀なオレは…


ミノリ「弁当も水筒も…」

 忘れ物もしたことがなく…


ミノリ「…持ってるな。

    国英物…」

 復習も欠かさずにする性格…


 だが…この日は

 忘れ物をしてしまった。


ミノリ「あっ…いけねっ…

    数学の教科書

    忘れっちまった!」


ミノリ「宿題も自主勉もできない。

    ナオト、先に帰っといて。」


ナオト「あっ、おっけー」

ミノリ「ありがとうナオト!」


 そう言ってオレが離れていくとき…

ナオト「オレいつも置き勉だけどな。」


  宿題も業間休みにするし。

  問題集ありゃなんとかなるし

  教科書なんかずっとおいてる。

  やっぱミノリはちげぇわぁ!


 そう言ってその日ナオトは

 ひとりで学校を出た。


 オレが教科書をとりに向かった教室では

 モモネが日直の仕事をしていた。


 周りにいるのはオレとモモネだけ…

 モモネは日直の仕事を一生懸命している。


 モモネの可愛さと一生懸命さに圧倒されて

 誰もいない教室の前の廊下で

 オレがウズウズしていると…


モモネ「あっ、ミノリ。

    忘れてたよ、これ。」

ミノリ「あっ…うん、

    忘れてしまったから

    取りに来たんだ。」


ミノリ「気にさせちゃったよな…

    オレほんとダメだ…ごめん。」


モモネ「そんなことないよ…

    ミノリにそんなイメージなくて

    正直驚いたけど…」


   「忘れ物しちゃう時

    誰だってあるよ。」


 モモネは廊下にいるオレに

 数学の教科書を渡すと

 日直の仕事に戻った。


 日直としての仕事を

 国民的美少女がやってるのに

 なぜか周りにはオレ以外誰もいない。


 なぜだろう?そう感じていたら

 モモネがこうつぶやいた。


モモネ「そっ…それにしてもミノリは

    勉強熱心だよね。すごいね。」


   「帰りの会終わりにも

    教科書ひらくなんて…

    ワタシにはできないや。」


 そのモモネの言葉でオレは

 嬉し恥ずかしい気持ちと

 モモネに吸い寄せられるような気持ちで

 いっぱいになってしまい…


 帰ることも教室の中にいることもできず

 廊下で立ち尽くしていた。すると…


モモネ「…あっ、黒板の上

    届かないや。

    どっどうしよぉ…椅子っ…」


  オレがモモネの彼氏だとしたら…

  困ってるモモネを

  かっこよく助けてあげなきゃ…


  けどモモネがひとりで

  やりたいとかだったら…


 そう想いながらオレは張り切って…


ミノリ「貸せよ。」

モモネ「えっ…♡」


 黒板の上の方に黒板消しをあて

 チョークの粉が春の光に煌めいて舞った。


ミノリ「はいっ。」

モモネ「あっ…♡」


モモネ『ミノリって

    優しいね。』


 …モモネに微笑みながらそう言われて…


ミノリ「言われるほどの

    ものじゃ…ねえよ…」


 …当然のことだって強がったら…


モモネ『ありがとね、ミノリ♡』

ミノリ「う…うん♡」


 オレが黒板掃除を手伝ってから

 モモネのほっぺがグレフルのように

 赤く染まっていた。


 モモネに感謝されたことが嬉しくて

 オレのほっぺもあっという間に

 グレフルのように赤く染まっていった。


ミノリ「他に手伝うことないかな?」


モモネ「ありがとう。もうないかな。

    もう少しで掃除終わるから

    教科書どうしようかなって

    思ってたんだ。」


ミノリ「そうだったんだな、

    心配かけたよな、ごめん。

    取りに来れて良かった。」


   「じゃあまたな!」


モモネ「またね♡」


 このままモモネとの距離が縮まり

 ホントの彼女として接するように

 なるまでいけばうれしいな…


 ひとりで笑顔で帰路に着いたが

 モモネのまたねのひとことが

 頭から離れることはなかった。


 いろんな妄想、言葉、アプローチや

 言いたいことはたくさんある。


 しかし、

 付き合ってくれとか好きだとか

 言葉にした瞬間に今の笑顔が

 消えてしまいそうで出てこない。


  これがユウハの言ってた

  突き放されたくないし

  近づきすぎももどかしい

  恋愛ってヤツなのかな?


 だとすればこの経験を大切にしないと!


 モモネにオレは

 どう思われてるんだろう?


 愛する気持ちは

 伝わっているのかな?

 モモネを苦しめていないかな?


第二章 完結_____

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