第一巻 フタリの愛、言葉の力。
第一章 恋の実よ、実れ。
グレープフルーツ、略してグレフル。
それは
食べた瞬間に果肉が弾け
甘酸っぱくてほろ苦い味が
口の中を満たす。
まるで高校生の青春みたいだ。
そんなグレフルが好きな男子高校生
ミノリの物語が始まる。
=====
ミノリ「オレのクラスはどこだ?」
高校生活初日の朝。
昇降口に貼られたクラス名簿を見た。
高校生活一年目を共に送る仲間の
名前の列を指でなぞった瞬間
不思議と胸が熱くなった。
なぜかがわからなくて
名簿から視線を外せなかった。
ミノリ「1年1組…
教室は一階の奥の方か…
何だこの感覚…」
遅れてきたナオトもオレのクラスの
クラス名簿を確認した。
ナオト「遅刻するかと思ったぁ…」
「ミノリわぁ〜…一組かぁ。
えっ?えっ?…ええ〜!?」
名簿を二度見して
オレの隣でナオトが叫んだ。
ナオト「ミノリ!!オマエやっぱついてるな!!
メダルゲーム以外でも!!
なっ!これでわかっただろ?」
ミノリ「えっ?なんで?」
その瞬間、ナオトは本気で絶句した。
ナオト「な…なんでって、何いってんだよ!?
オマエのクラス、モモネいるぞ!
国民的美少女だぞ!」
「オマエら1組は
誰が何言おうと勝ち組だ!」
「いいよなぁ!ついてるよなぁww
またこのフレーズ使うとはなぁ!」
ナオトがテンション高めに
そう話していた。しかし…
ミノリ「モモネ?って有名人?
これがもしかして心がハッと…」
そう言うとナオトは
衝撃を受けたような表情で
勢いよくツッコんだ。
ナオト「えっ!?知らねえの?
本気で言ってんの?ウソだろ!」
『美少女" グレ"イトビューティ"フル"
スカウトセレクションの
大賞を勝ち取った逸材!』
『SNSでも雑誌でも
テレビでも話題になってるのに
オマエ知らないのかよ!』
そう言い切ってからホワホワした口調で…
ナオト「美少女と…いいなぁ♡
モモネと同じクラスかぁ…」
ミノリ「大賞を勝ち取った?ホントに?」
「どこかで一緒だった気がするけど
国民的美少女とかではないんだ。」
ナオト「一緒だった!?マジかよ!?
覚えてないの疑うよりまず
一緒だったことあるっての
ホントか疑えよ!」
ミノリ「別人だったかもしれないけど。」
オレは教室に入って
自分の席に座ってからも
ずっと考えていた。
ミノリ「モモネ…?
どんな人だっけ?」
思い出そうとしても思い出せない。
頭の片隅にぼんやりとしたイメージがある
しかしどこでのものかはっきりしない。
ミノリ「オレ…勉強し過ぎかなぁ…」
「最近テレビも見てないし、
スマホのニュースも
確認してないし。」
ナオト「オマエの家、
テレビもスマホも禁止か?」
ミノリ「いやっ違うけど。えっ?」
ミノリはその違和感を胸に抱えながら、
何となく胸がざわつくのを感じた。
それとおまけに
なんでもうナオトがここにいるのか
にも違和感を持った。
ナオト「ミノリが羨ましすぎるよぉ‼
きっともうすぐ来るよ‼」
ミノリ「だなっ…てかナオト3組よな?
こっち来るの早すぎねえか?」
ナオト「リュックだけ置いてきた!」
そしてついに、
いろいろ考え込むオレと
興奮しまくりのナオトのもとに
美しくて清楚な美少女がやってきた。
ナオト「あっ!モモネぇ~
モモネが来た!!」
ミノリ「あの子が…」
廊下のざわめきがふっと静まる。
その場の空気すら変えてしまうほど
彼女の存在感は絶大だった。
ミノリ「…モモネ…♡」
オレ達や先生の視線を気にすることなく
静かに微笑みながら1組に向かうモモネ。
モモネが一歩踏み出すたび
廊下の空気が透き通る。
ナオトもオレも他の生徒も先生も
みんなの視線が釘付けになる。
その瞬間はまるで、
学園ドラマのヒロインが
スクリーンの向こうから
飛び出してきたのようだった。
ミノリ「はっ…♡」
ナオト「はぁ〜っ♡
やっぱモモネかわえぇっ♡」
ナオトがテンションをあげるのも
当然だと実感させられた。
モモネ「先生おはようございます♡」
先生 「あっ♡
おはようございます…
モモネさん。」
モモネ「フフッ…」
中学生のときにお母さんの他薦で出場した
"グレイトビューティフル”略して
”グレフル” ”スカウトセレクション"の
国民的美少女選抜企画JapanestW
そこで大賞を勝ち取りモデル活動を始め
最近タレントとしての活動も始めたからか
世間では私のことを
有名で人気な存在として取り上げてる。
ワタシ自身は今のところ日常生活では
強い実感を持ったことはないけどね。
みんなの目には
まばゆいばかりの輝きが
モモネを包んでいるように見えていた。
オーラを浴び尽くし
ナオトは自分の教室に戻っていく。
オレは見惚れて席で固まった。
教室中が息を呑むような静けさ。
そんななかでモモネは
微笑みながら教卓を横切る。
モモネの席はどこかと
みんながモモネの動きを見つめる。
教卓から教室の右端を通って
オレの席の列に来た。
モモネの笑顔が近づくたびに息が詰まる。
そして…目の前を通り
…オレの左隣の席に座った。
モモネ「席隣だね♡
よろしくね!!」
近すぎる距離からの
柔らかな声と明るい笑顔に
オレは冷静さも謙虚さも失った。
自分を自分で驚き疑い
恥ずかしいという気持ちが
全身を駆け巡る。
国民的美少女が
周りを気にせず隣の席のオレに話しかけ
自然体で微笑んだ。
その事実が自分の頭に遅れて入ってくる。
自信に満ちた表情と
同じクラスの隣の席という奇跡。
ミノリ『えっ!!ホントに!?』
自分の声が震えたことに気づいたが
モモネはそんなオレを見つめ
少し照れたような笑顔を見せる。
ミノリ「キッ…キミってさ…
も…もしかしっなくても…」
ミノリ「モモネ?だよね?」
モモネ「うん♡」
ナオトから話を聞いた国民的美少女は
恥ずかしさを隠せずにいるオレに
深く頷いて笑顔を見せてくれた。
ミノリ「国民的美少女って…」
モモネ「中学生の頃に選ばれたんだ。」
ミノリ「すごいねっ…」
モモネ「そう?
そんなに変わんなかったけど…」
その言葉を受け口がぽかんと開き
自分でも恥ずかしいなと感じる表情に。
しかし、その会話はまるで
小さい頃からの幼馴染同士の会話のように
スムーズに進んだ。
芸能人になって
変化はなかったと言い
堂々としているモモネだが
教室のあちこちからは
囁き声が飛び交っていた。
ワタシ、モモネちゃんに
会ってみたかったんだ!
ワタシも!
モモネいるぞ!告ってこいよ!
えぇっ!あんな人とオレってぇ…
生徒も先生も誰もが息を呑んでいるのに
違和感も何も持たずに堂々としている。
単にみんなが自分に釘付けであることを
モモネが気づいていないだけだろう。
ミノリ「ホントに?」
モモネ「ワタシはそう感じてる。」
そして明るい笑顔で
こんな言葉をかけてくれた。
モモネ「ほっぺた赤くなってるよ。
大丈夫?」
優しくて美しい国民的美少女は
ほっぺたが真っ赤になっているオレを
ドン引きしたりバカにしたりしない。
オレのほっぺはさらに赤くなり
目に彼女の姿が熱くやきついた。
ミノリ「モモネ…♡」
そんな彼女も恥ずかしがり始めている。
周りからの視線に耐えられないのか
堂々として自分を強く見せてるのか
それに似た状態なのかもしれないと思い
無理しないでいいよ。
緊張をほぐしてあげたいな。
そう思って…
ミノリ「国民的美少女だからって…
みんな注視しすぎだよな。
恥ずかしいよな?」
しかしモモネは首を横に振った。
モモネ「そうかな?
私はそうでもないし
大丈夫だけど…。」
何の迷いもなく堂々とした声で
言い切ったモモネにオレは
ただの美少女ではない。
オレの心はさらに惹かれていった。
ミノリ「そっ…そうなんだ。
それなら良かった…
オッ…オレ…ミノリ…よろしく…」
モモネは名前を聞き返さずに浅く頷いた。
少し落ち着きを取り戻したオレは
何気ない話題を振ることにした。
ミノリ『あのさ…キミって…
フルーツ…何が好き?…なの?…』
「オッ…オレ…
グレープフルーツ…
が好きなんだ。」
すると少し驚いたのか戸惑ったのか
口を丸くしながら答えた。
モモネ「えっ…一緒…
グレープフルーツ、
グレフルだよ。」
その答えにオレの目は輝いた。
ミノリ「ホントに!?グレープフルーツ?」
モモネ「うんっ!グレフル…だよ!」
ミノリ「グレフル!?お…同じだっ…
は…話してくれてありがとな…
それもグレープフルーツじゃなくて
グレフル!?」
ミノリはその四文字の響きに
運命のようなものを感じた。
昔から誰よりも弱虫=引っ込み思案で
誰とも打ち解けれなかったオレが…
国民的美少女選抜企画の大賞をとった
美少女の隣の席で高校生活を共にする。
夢にも思わなかった。
オレの顔はグレフルのように
真っ赤に染まっていた。
笑顔や優しさを持ち合わせて
好きなフルーツがグレフルという
共通点を持つ美少女に
ミノリは、恋をした。
何かまだ他に共通点がある気がする。
モモネはただの美少女じゃない。
けどなぜそう思うのかはわからなかった。
ミノリ「モモネ……よろしくな!」
モモネ「うん! ミノリ、よろしくね♡」
これがオレとモモネ
フタリの甘酸っぱくてときにほろ苦い
高校生活の中での恋の始まりである。
第一章完結__
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