たったひとつの合わない言葉

書き損じの一行がガラスの呼吸の不協和音を強調する

まぶたの裏のざらつき

崩れゆくリズムがどうにも出来ないでいる

言い換えられない嘘を重ねる

取り残された声は指の隙間をすり抜ける砂のように

笑顔の奥の孤独がささくれだった皮膚を酷くする

鏡の裏の歪み

合わない靴の痛み

間違えた呼び名は解けないボタンのようだ

行き場を失ったため息は滲んだインク

言い過ぎた言葉は言えなかった一言

語りすぎた沈黙がそこにはある

見落とした眼差し

矛盾のかけらにそぐわぬ笑み

余白の痛みがほら

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る