さよならが言えない

さよならが言えない

あなたとの思い出が頭の中で砕け落ちていく


あなたのいない人生を、

あなたのいない世の中を

どうやって生きたらいいか分からなくて

今まで楽しいと感じていたことも

今まで素敵に見えていた木漏れ日や草花も

私の視界に入らないで欲しくて

私の視界から消えてしまえ、

何もかもこの世から消えてしまえ、


ただただ辛いだけだから


もう何を見ても、何をしても、意味がないようで

息をしていることすら、意味をなさない気がするから


あぁ、そっか

私がこの世から消えてしまえばこれらの悩みは消えて

まるく収まるのか.....



——そう呟くたび、誰かが言う

「生きたくても生きられない人がいる」

「事実あなたの大切な人だって...」

「その人はそんなこと望んでない」


そんなことは分かってる、

分かってるけど、


私の心臓や脳はもう

酸素が行き届かないぐらい

ぎゅぅ゛って

締め付けられていて



心に残るあなたの声が

時間の隙間から滲み出してきて

眠れぬ夜を幾千も縫い合わせては

ほどけていく記憶の縁に縋ってしまう


「またね」と言ったあなたは

この胸の中でしか生きていない

なのに私は、まだ「さよなら」が言えないまま

誰にも見えない世界で、ひとり

何度も「ごめんね」を繰り返してる


今更後悔しても遅いって分かってる

もう泣いても意味がないって知ってる

もう言葉じゃ戻らないってことも......

だけど、消えないんだ


心臓を握り潰されたようなこの痛みが

思考を停止させる


誰かに抱きしめてほしかった

じゃなくて、

あなたに、抱きしめてほしかった




でも......

...でも...もう......

......


......

もう.....


......

................限界です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さよならが言えない @__x3X_____

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る