第31話 その頃
今日も一人で登校し、静かに授業を受け、そして、一人で帰宅した。
想い人はすぐ隣にいるのに、話しかけることができないのは、とてももどかしい。
その要因は二つあって、一つ目は私自身の問題。
陽向が一年の園池彩芽の告白を受け入れてしまったせいで、気まずさが生まれてしまったのだ。
あれだけ陽向に愛を伝えていたにも関わらず、彼はあの後輩を選んでしまった。
ありえないし、許せない。
もう一度陽向と話し合いたいけれど、なんて切り出せばいいか分からない。
二つ目は、園池彩芽という存在。
あの子は「彼女」という立場で、陽向のお迎えという私の役割を奪った。
それだけでは飽き足らず、休み時間の度に教室へやってくる。
そして、わざわざ私と陽向の席の間に身体を入れて、彼との接触を開始。
最後には、私の方をチラリと見てから余裕の笑みで帰っていく。
これはある種の牽制だと私は思った。
私の目の前で、陽向とイチャつくことによって、彼を自身の所有物だと主張する。
少し前まで私が行っていたことだ。
偶然などではなく、明確な意思をもってして園池彩芽は、陽向の中に存在していた私・三室戸和奏の意義を消滅させようとしている。
「でも、だからと言ってどうすればいいかしらね…………」
不意に零れた私の独り言はとても情けないようなものに聞こえた。
机に置いてあったスマホが鳴ったのはそんな時。
電話をかけてくるような人に思い当たりがなく、もしかしたら陽向ではないかと淡い期待を抱きながらスマホを手に取る。
しかし、そんな期待とは裏腹に、表示されている電話番号は見覚えのないものだった。
非通知設定になっていないことから、誰かがきっと電話番号を間違えたのだろう。
そう思いながらも、私は緑色のボタンを押していた。
「はい…………もしもし」
『三室戸和奏さんのスマホで合ってますよね?』
スピーカー越しに聞こえてきた声は同級生かそれより下ぐらいの、若い女の子のもの。
いや、それよりも重要なことがある。
「なんで私の名前と電話番号を知っているのかしら? あなたは誰なの?」
『焦る気持ちはわかりますけど、いったん落ち着いてください。少なくとも、私たちは何度か会ったことがありますよ』
「私の質問には答えてくれないのかしら? それならもう切ってもいいわよね?」
『わかりましたよ。ここで切られてしまっては私も困りますから』
「ふーん…………じゃあ、名前と用件をお願いできる?」
電話を切られてしまったら困る、というのはどういうことだろう。
何度か会ったことがある、も気になる。
向こうが一方的に私のことを認知しているだけなのか、それとも、私も向こうのことを知っているのか――――。
「私の名前は、仙谷莉子です」
「…………え?」
仙谷と言えば、陽向と同じ苗字。
いや、それだけなら「偶然でしょ」という一言で受け流すこともできたのだが、下の名前もまた問題だった。
莉子……「仙谷莉子」は陽向の妹の名前と全く同じ。
「なぜ彼女が私に?」とか疑問は無限に湧き出てくるのだが、何度か目にした仙谷莉子の様子とは明らかに違う。
「貴女、本当に仙谷莉子なの?」
『もちろん。それで、さっそく用件なんですけど――――』
『――――園池彩芽って邪魔じゃないですか?』
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