第三幕

『ん。通信。シルンサスから』

「ああ。私で」

『ん。シルディアで』

「こちらシルディア。迷宮支配者を『封印』中。どのような用件でしょうか」

『緊急事態の類ではないわ。直ぐに、終わらせてから。何れ、帰って来なさいね』

『ええ。そのように』

『そうね。それでは』

「はい。それでは。今回も、緊急事態の類ではないようね」

『ええ』

『ふにゃ』

「それでは。『開封』と同時に、『範囲属性攻撃(木)』から、双洞角を警戒しつつ、近接攻撃で。まあ。流石に、『範囲属性攻撃(木)』で足りるのだろうけれども。一応ね」

『ええ。そのように』

「『開封』」

「『範囲属性攻撃(木)』、『範囲属性攻撃(木)』」

「『範囲属性攻撃(木)』、『範囲属性攻撃(木)』」

「グゥオオオオオーッ」

 床、天井の双方から伸びる『範囲属性攻撃(木)』により多重に拘束され、僅かに残っていたパランドゥス形の仮想体力は、削り切られる。

『アッヒュル、スゥインス』

「大丈夫。ルアンサスが」

「うん。フエイニスが」

最終攻撃の衝突型双洞角は、ヴェルレア、シルディアの放った属性放出を突破し、フエイニス、ルアンサスが、切り落とした。

(ん。通信は、次年度の塾生募集関係なのかしら。流石に、時期的に、低廉水薬様仮想体力回復薬や古語等読み書き用問題集の類の話ではないのだろうから。我々が関わる事業はそれくらい。それも、早いような気もするけれども。報酬の方は上限額の銀貨一枚よね。防御回避重視型で、属性攻撃重視型ではなかったから、被弾は殆どなく終われたのかな。土・地属性以外の範囲属性攻撃や飽和様属性攻撃に対し掠るくらいは、避け難いのなら)

仮に、堕天使等関係の用件なのなら。最優先の緊急事態が類になるのだから。大丈夫。

「転移所からの帰還で、擬似迷宮踏破ね」

『ええ』

『ふにゃ』

(ん。閉門作業までは、未だ時間があるわね)

シルディア一党は、新設私塾併設擬似迷宮を踏破。出口となる転移所から、協皇立新設私塾空間調整隣接討伐者組合支分支所へと帰還する。


『鳥達、兎達、またね』

『ふにゃ』

『ふにゃ』

シルディア一行は、気持ち急ぎ、央の国離宮へと向かう。


『ただいま』

『ふにゃ』

『おかえり』

「シルンサス。どのような用件でしょうか」

「シルディア。まあ。思い当っているのだろうけれども。次年度の塾生募集についてよ」

「募集先は貴族家に限られるのなら。塾生から伝わる情報が、大切なのでは。我々の擬似迷宮踏破は、新設私塾実績とするのが難しいでしょうから。実績が現れるには、期間が。閉じた系における範囲境界を用いた日々の活動で、空中を。足場にする等討伐者として大切な技術の類が、身に付くのかどうか。流石に、三分の二以上の通塾者が補足率というのは、難しいのでは。気が向かなくなれば減少傾向になるのなら、維持という点は重要ですが。年度内で、施設設備・備品・教具等に、大きな変化は望めません。要望の方もなく。ん。捕捉率の高さを宣伝することで、入塾志望者数増加維持に、繋げることは可能では」

『そのようだね。捕捉率の方は、そのようなのかもしれない』

「流石に、個々人が特定されないとはいえ。毎日の通塾者数・通塾率を、公表するというのは、貴族家という極めて狭い範囲が、対象なのだとしても。殆ど通塾をしていてもね。まあ。捕捉率の高さを宣伝するというのは、翻意を促すようなことに使われそうで、情報の伝達においては、貴族家当主等を通す関係から。学齢児童生徒とは、情報に差が出て」

(学齢に近い子女等に、情報を伝達すると。開塾祭の類。しかし、保護者同伴になるわ)

『皆が通っているから、私も通うは、難しい』

『気の合う友人、数人の事例では、交渉材料として、少し弱いのかな』

(低廉水薬様仮想体力回復薬は、新設私塾へと優先的に配分し続けられる訳ではないのなら。供給実績を、公表するようなことは、貴族家当主等に限るのだとして。どうなのか)

「公表可能な情報の類ではないわね。予算は付いていないから、職員組織や協会学校等を含めて。とはいえ。宣伝においては、文字情報だけではなく。紹介用映像資料の準備が、大切よね。映像ではなく画像でも大丈夫かな。強調を出来る文字情報が、少ないのなら」

「ええ。それは、そうなのですが」

『ん。手伝ってくれる。中位高位精霊を探しに行こう。可愛いから』

「中位高位精霊が管理するような閉じた系は、多いのですか」

「数百年前となると、資料がないのなら。閉鎖状態では、調べようもないのだけれども」

「流石に、設置場所予想をして、翼猫戦車等で探し回るというのは。無理があるのでは」

『中位高位精霊のことは、高位精霊に聞けば、何かわかるかもしれない』

「役割、技能系統を担うような高位精霊達は、何処に居るのか。人間に好意的とはいえ。基本的に、人間からは、隠れ住んでいるのなら。緊急時用連絡網の対象ですらないから。翼猫達は、我々と略常に、行動を共にしていますし。そもそも、我々を追って、現世等の異世界からこの世界へと転移してきたのなら。関係性の構築は。ん。白黒恙は恐れられ」

『ふにゃ』

『ん。皇霊級の恙のことは、見に来ると思ったのに』

「警戒され過ぎて、見に来るようなことはあったとしても。挨拶までは、余りないわね」

『ふにゃ』

「塾生が映り込まないように、施設設備等の宣伝用の紹介映像資料作成は、可能ですが」

『新設私塾ごと並行多重空間化で、増加、保管しているから』

「そう。閉門後でも、大丈夫そうだけれどもね。施設設備等の汚損は、殆どないわよね」

『ええ。おそらく』

『ふにゃ』

「時期的に、進学実績が出る訳ではありませんし。貴族家子女が、家庭教師等による家庭教育の類を受けるのではなく、後期中等教育学校へと進学することは稀でしょうから。民衆古語や古語の学習は、読み書きの復習においての副次的なことであり。貴族家子女が、民衆古語や古語を利用する機会が、どれ程あるのか。ん。運動競技保全活動には繋がっているのかもしれないけれども。塾生方を撮影等するようなことは、避けたいですから。まあ。日常的な活動として、空中を足場にしていては、競技形態が変化するのでしょうが」

「そうなのよね。そうなると。遠隔教育や、図書室図書館間転移網の宣伝になるわよね」

「読書会用画像映像通信や、音楽練習用の画像映像通信は、利用されてはいないようで。迷宮等探索においては、我々以外には、顕著な進捗度を見込めませんし。我々の迷宮探索等進捗度が、高かかったところで、貴族家向けだとしても、参考にはなりませんからね」

(比較的充実した施設設備を備えていたとして。地域というか帝国中に、学校開放の類を行うようなことも。開塾祭、私塾説明会を行うことも、難しい。女性の保護者等が居る者ばかりとは、限らないのだから。迷宮等と同様、安全性には、相当な配慮をしているのなら。友人の保護者等にであっても、同行するのなら。対象に漏れるようなことは、稀で)

「…………。「眷属」等用施設設備等を、開塾祭等の形で開放することは、出来るかと」

『それでも、参加には、貴族家当主等の意向が反映されるね』

「五歳以下の子が、運動用具類を用いることが、出来るのかしら。安全は安全としても」

『適切に用いることは出来ないとしても。安全なのなら、楽しめるのかな』

「あと、流石に、五歳以下の年少者に、怪物等の映像資料は、視聴をさせられませんね」

『ええ。それは、そう』

「では、可愛い、中位高位精霊を探しに行くということで」

『ん。中位高位精霊、可愛い』

「ええ。そうなるわね」

『え。そうなるのかい』

アハトゥス、ストゥングより、シルンサスは、精霊が歪形の可愛さを、重視しているよう。二体も、子や孫等は、可愛いと思っているようなのに。

(ん。比較的少量な方の擬似薬草は。もう、大丈夫なのかな。一応)

「それで。夕食は、どうしようかしら」

『新設私塾の閉門作業があるので、一度、そちらの方へ』

「そう」

『それでは。行ってきます』

『ふにゃ』

『ええ。行ってらっしゃい』

シルディア一行は、閉門作業のために、新設私塾へと向かう。


『鳥達、兎達』

『ふにゃ』

『ふにゃ』

『結局、また直ぐに戻ることになるけれども。もう少しね』

『ふにゃ』

「ここのような閉じた系に留まっている知り合いの精霊は、知らないわよね」

『ふにゃ』

(そうよね。流石に、誰かの真似をして、留まり続けられるような期間ではないのかな。とはいえ、陽月から、玉兎、金烏を、何体も連れて来る訳には。親族、「眷属」等の相方となる獏や眠り猫の類が、好ましいのかな。私塾の所属という訳では、ないけれどもね)

「……。ん。未だ、居残っている塾生が、幾らか居るようなのかな」

(前期中等教育等の学習を既に終えていることから、何時でも、通塾可能なのか。早く通塾するために、何らかの用事等を、早急に終わらせているのか。通塾目的で、前者となったり、後者だったりするのなら。新設私塾による好ましい影響の類なのかもしれないわ)

「……。教室の方へ行こうか」

『ええ』

『ふにゃ』

シルディア一行は、一年三組の教室へ向かい。机の上に、要望書の類が提出されていないかを確認。小型保管庫から、黄色猫耳帽子等を回収し、下校の準備をする。

(ん。教室の机より、旧校長室・塾長室の類を、設置開放しておいた方が、よいのかな)

「ん。塾長室に、銘板でも、設置に行こうか」

『職員ではないから。職員室には、銘板の類を設置できないから。副塾長室等はないの』

「特別活動室か何かの部屋を、副塾長室にしようか」

『うん』

(配置されていたのは、副校長ではなく、教頭だったのかな。副校長でも教頭扱いなら)

「スゥインスは、後任塾長にしようか、副塾長にしようか」

「ん。塾長代理、塾長補佐」

「ん。後任塾長にしておこうか」

「うん」

『ふにゃ』

「ルアンサス、ヴェルレアが、塾長補佐で。アッヒュル、フエイニスが、副塾長ね」

『ええ』

シルディア一行は、それぞれ、役職名を記した銘板を作成し、設置をする。加えて、副塾長室にも塾長室と略同様の設備・備品等を、設置する。

(一年三組の教室より、入室し易いということはないのだろうけれども。用途を気にするような者にとっては、教室の机よりは、要望書の提出先らしくは、あるのかな。事務室)

「……。職員室、事務室も、開放して置こうか」

『ええ』

『ふにゃ』

『事務室、職員室、塾長室、副塾長(・塾長補佐)室』

(増えた。確認で見回りし易いように、空間隣接性調整通路で、各部屋を繋ごうかしら)

シルディアは、塾長室と同様に、関係各部屋の解放作業等を行って、それぞれを結ぶ。

(ん。部屋が離れていた方が、好ましい面も、あるのかしら)

「ん。そろそろ閉門作業の時間なのかな」

『ふにゃ』

(要望書を集めるには、生徒会・塾生会の類でも、設置した方がいいのかな。担い手が居ないのなら。我々が兼任するようなことで。塾生に近いような役職があることで、何か)

シルディア一行は、新設私塾の閉門作業を、今日も無事に終える。

『鳥達、兎達、またね』

『ふにゃ』

『ふにゃ』

シルディア一行は、央の国離宮へと向かう。


(魔王大戦期前に、「眷属」等は、一時的に欠けたのなら。ストゥングも、昔のことは知らないのかな。ヴュリレンを対魔王戦に動員しないように、アルヴェリは旧勇者一党構成員を担ったとはいえ。世代的にストゥングに近い。西の国と東の国とで、立場の違いは)

精霊化等進行度において、当時の西の国太子ストゥングを師匠として、修行していた当時の載子・代輔総司協長(当時の協会最高位)シルンサスが、最も進んでいたとはいえ。旧勇者一党においては、当時の南の国太子(即位せず。帝配となる)アハトゥスを含め、藩屏たる四箇国王家の中でも、帝室に近い南の国、東の国王家関係者からの輩出が多い。

「おやすみ。シルディアちゃん」

「おやすみ。スゥインス」

『ふにゃ』

(明日は、東の国へ行こうかな)


(ん。今日の朝食も、無事に、何とかなったわね)

『おはよう』

『ふにゃ』

『おはよう』

「今日は、何をするのか」

「中位高位精霊探しね。その前に、東の国離宮に行って、アルヴェリの話を聴くのかな」

「アルヴェリは、流石に、ストゥング程の年齢ではなさそうだが」

「ストゥングよりは、精霊が好きそう」

「ああ。西の国、南の国はないな。アッヒュルの所より、ヴェルレアの所が、年嵩かな」

「そうだろうね。母アルヴェリの方が」

シルディア一行は、東の国離宮へと向かう。


『おはよう』

『ふにゃ』

『おはよう』

『ヴュリレンちゃん』

「だから、「ちゃん」と呼ぶではない」

(中位高位精霊を探すより、ヴュリレンちゃんを、講師の類にすることが、早いのでは)

協皇立新設私塾空間調整隣接討伐者組合支分支所の職員に近い立場で、間接的に新設私塾に関わる立場を設置することが、出来るとするのなら。大人であっても、監督責任は。

「アルヴェリ。閉じた系に留まる精霊や、陽月の運行する閉じた系等を、知りませんか」

「ああ。そうだね。ヴェルレア。ルイや角兎の話は、聞いているのなら。気になることがあれば、調査等を行い。ヴェルレアにも、話はするよ」

「そうですか。ありがとうございます」

『ヴュリレンちゃんの相方獏を、探しに行こうよ』

「アハトゥスですら相方獏は、居らんのだぞ」

『ふにゃ』

『可愛いでしょう』

「ああ。可愛いぞ。故に我も日々、我に寄ってくるような中位高位精霊を探してはいる」

『そんなに寄ってこないのなら。既に関係性が結ばれている個体が居るのかもしれない』

「ああ。ヴュリレンは、ヴェルレア寄りの世代なのかもしれないからね」

「兄よ。子ども達に期待をさせては」

「ああ。これだけの獏達が居れば、獏の一体、寄ってくるのかもしれんな。獏達は、翼猫達を恐れはしないようであれば」

『ふにゃ』

『ふにゃ』

「そうかの」

「没入型仮想現実の利用が広がり得るのなら。夢魔対策等に、獏は欠かせないとなると」

「ヴュリレン」

「ええ。子ども達の子守りを、致しましょう」

『ああ。そのように』

「であるから。スゥインス、シルディア。先ずは、我から離れるのだ」

「うん」

(子守り。貴族家の子女が子守を担当することは、あり得るのなら。学齢に達しない妹等を、連れて来られるようにすることが。塾生の確保に、繋がるのかもしれないわ。とはいえ。放課後の提供を損なわないように、姉等の意向による許可制にすることが、大切ね。新設私塾は閉じた系であり、範囲境界を用いるのなら。親子連れで訪れることの出来る初等中等迷宮表層が開放階層のように、擬似怪物等が配置はされず。安全性の確保が成されているのだから。範囲境界を用いることで、幼児の排泄における問題は、避けられるわ)

貴族家当主等は、配偶者を伴って出掛ける機会があるのなら。貴族家子女が、弟妹の子守りをするような機会というのは度々、訪れることとなる。富貴は両立し難いのだから。

「シルディア。何をそんなに、考えておるのだ」

『ふにゃ』

(ん。これで、次年度募集における課題は、開塾祭等と合わせれば、大丈夫なのかしら)

「シルディアちゃん」

「ええ。むう」

「ふふ。流石に、スゥインスは可愛いからの。抗えまい」

(ヴュリレンちゃんは、旧勇者一党構成員の木龍とはいえ。王室ではないから。アルヴェリが娘のような立場だけれども。後継者というには、レンドロンとの年の差が小さいと)

ヴュリレンは、東の国王家と同姓を名乗れる最上位貴族家が建国四准男爵家(四箇国王家は、下級伯爵家相当の勢力を元に建国に至っている)であり。ヴェルレアは王女なのなら。建国准男爵家の後継者ではなくて、ヴュリレンが後継者となるとはいえ。レンドロンは、アルヴェリ等と龍の世界に移るのでもなければ(アルヴェリ等がヴュリレンを置いて行くとは思えないことから)、継承するようなことはなく。一代大公爵(非君主号)、府司協長(東の国第四位)とはなっているのだけれども。王室ではない「眷属」等を、央の国が民とし、央の国に集落を復活させようとする動きが、一部行政組織内にはあるよう。

(大森林、大山脈等に、人間が住むのは困難なのなら。小規模とはいえ。留まれるのか。環境負荷のことを考えるのなら。大森林、大山脈等が開発は避けるべきであり。混乱の度合いが比較的低い怪物等が、一般人等と遭遇しないように、隠れる場所でもあるのなら。東の国等にあって木龍は、木龍等ではない王室より上位とはいえ。王室には二体の木龍。それでも、ヴュリレンは女性で、当代のアルヴェリは勿論のこと。東の国が初代国王や初代央の国国王、初代聚成帝国皇帝に、血統的に近い筈なのなら。(制限)世襲爵位は、人間の子孫がうまれなければ、問題ないが。配偶者が見付からなくても。辺獄・冥界では。木龍だから、「眷属」としての班位は一応、空龍のストゥングより上位なのだけれども)

「…………。誰が、猫戦車を運転するのが、良さそう」

帝室は、白黒の龍、白黒の竜ばかりで、五種龍が首位地龍を欠いている関係から。木龍の班位は、同種の火龍と並び、二種龍が白黒の龍に次ぐ、状況にある。

「戦闘に移るのが多少遅れるから、私はなしだな」

「一応、護衛の廷尉である私も、なしの方向で」

「では。ルアンサスを含めて、前衛はなしね」

「我に相方猫は、見付かっておらぬよ」

『ふにゃ(あ)』

「今はの」

『ふにゃ』

(微妙に、翼猫達が悲しんでいるようということは、現世等においてから居るのかしら)

『精霊達の現世等における記憶は、情報不足の転移により、他の精霊すら存在しない世界に辿り着いてしまう場合等に備え、記憶を用いて楔か何かと成すのだろうから。相方等と再会するために、世界間を転移するのなら。我々同様に、記憶は残滓化しているのかな。欠損しているのであろう相方に関する記憶を残し過ぎることで、自らやその相方に影響を与え過ぎるのは、流石に、好ましくはない。そうなのなら、問われもしないことについては、話さないのかな。ん。教典の存在する現世等の記憶は、辺獄・冥界において、転移による移動での同一個体であろうとも、避け難く残滓化するのかな。楔等を用い、現世等とこの辺獄・冥界とを行き来するには、ある程度の期間のこの世界における記憶を残滓化することになる。楔が楔として役割を果たすとは限らず。何度も使えることでないのかな。相方の人間等を介さずに高位精霊が、現世等に関わるのは困難であり。現世等に関わり得る低位精霊は、情報感知能力面で、楔の質等に問題が出る可能性が高く、行き来が困難』

『記憶が残滓に残る教典の訳というは、人それぞれなのなら。協会への所属を避ける人が出るというのは、避け難いことなのかな。教典の断片が集まることは好ましいとしても』

「ん。ヴェルレアが相方獏のルライフリが、ヴュリレンが相方獏と親しいのだろうから」

「そうなのかもしれないのなら。翼猫の方は、ストラユルが牽引するということにして。運転を、ヴュリレンが担うというかたちで、どうなのかな」

『ええ。そのように』

「ふにゃ」

「そうか。ルライフリ、ストラユル」

『ふにゃ』

(ん。役割、技能系統を担い得る高位精霊である眠り猫を、相方として、従えることが出来れば。ヴュリレンちゃんの立場が、より磐石となるのであれば。探しに行くのは大切)

「……。それでは。大森林の方にでも、行こうか」

「ん。流石に、獏が、怪物等に至っているとは、思いたくはないがの」

『行ってきます』

『ふにゃ』

『ああ。行ってらっしゃい』

ヴュリレンは、一応、胴輪等の輓具で、荷車に、ストラユルを繋駕する。ヴェルレア等の子守を、担っているのなら。自らの相方翼猫が居なくとも、猫戦車の運転経験はある。

シルディア一行は、ヴュリレンと共に、大森林の方へと向かう。


「獏達、一応、今回も物化因子の方を、取り除いて置こうか」

『ふにゃ』

『ん。大丈夫』

『ふにゃ』

「ヴェルレア」

「ええ。翼猫達や獏達の気配(属性要素放出等)を、荷車が遮断しないように、設定を」

(ん。開門時間になったら。ヴュリレンちゃんも一緒に、新設私塾の方に、行かないと)

『ふにゃ』

「ふにゃ」

「ふにゃ」

(獏等を探す場合でも、「ふにゃ」なのなら。やはり、面識等のある獏や翼猫なのかな。我々も含めて、ヴュリレンちゃんが、迷宮等閉じた系に滞在し過ぎて、相方獏や相方猫が感じ取れないというようなことは。特殊な関係性。我々「眷属」の方から、繊細な力で情報を取得するようなことは、難しいのかな。世界、「何かではない」か何かを超えて、感知等が出来るのなら。閉じた系かどうかは、余り関係なさそうとはいえ。繊細な力の行使においては、特に妨げは少ない方が好ましいようにも。獏達、眠り猫達は、我々が人間の現世等においても、精霊なのなら。大分、精霊級の力が扱いに慣れている筈なのかしら。世界、「何かではない」か何かを超えるような転移。おそらく、獏達は、翼猫達の転移に同行したのだろうから。ヴュリレンの相方翼猫は、現世等において、ヴュリレンの相方獏を説得して、共に転移するのなら。成功するかどうかの判断は多少、慎重になるのかな。他に精霊さえも居ない世界に転移してしまうことが、あり得るのなら。ん。他の精霊の属性要素等がない分、特殊な繋がりか何かを、感じ取るには適した環境ではあるとしても)

「ふにゃ」

「ふにゃ」

「ん。子ども達よ。そろそろ、新設私塾の開門作業へと、向かう時間ではないのか」

『ええ』

「ヴェルレア。ルライフリ、ストラユルも、連れて行くと良い。我は、少し歩くからの」

「ん。そう。ええ」

シルディア一行は、新設私塾へと向かう。


『鳥達、兎達』

『ふにゃ』

『ふにゃ』

(低位精霊の獏は、物化因子を避けるために、閉じた系を探すということが、あり得る)

『鳥達、兎達、今日は、直ぐに、獏や眠り猫を探しに、出掛けるんだよ』

『ふにゃ』

「一体ずつ、連れて行くのか」

「流石に、現世等においての関係性は、ないのだろうけれども。怪物等を刺激して、出てくるのなら。それはそれで、好ましい面はあるのかもしれないのなら。どうでしょうか」

「そうね。一体ずつね」

『ふにゃ』

「ふにゃ」

「ふにゃ」

『レイゾユネとジャプッロ、一緒に行く』

『ふにゃ』

(鬼・魔霊級以上なのなら。まあ。たとえ、高濃度物化因子に暴露しても、大丈夫よね)

シルディア一行は、新設私塾開門作業や教室における作業を終え。金烏レイゾユネ、角兎ジャプッロを加えて、ヴュリレンとの再合流のため、大森林へと向かう。


『ヴュリレン』

『ああ。ここだよ。子ども達』

「ん。ところで、ヴュリレンちゃん以外の「眷属」の力が多くを、一時的に遮断することで。ヴュリレンちゃんの力を目立たせるというのは、どうなのかな。連絡するけれども」

「子ども達は、気にならぬか」

『ええ』

(ヴュリレンちゃんの相方等は、我々とも面識等が、あるのだろうけれどもね。ここは、いつもと変えて。我々の力を遮断する前に。シルンサスを通じて、「眷属」等に連絡を)

「そうなのなら。シルディア。連絡の方を」

「ええ。ん。こちらは、シルディア。シルンサス。ヴュリレンの力を目立たせたいので、「眷属」等に力の多くを、範囲境界の類で一時、遮断するように。連絡して貰えますか」

『ヴュリレンが、獏や眠り猫に、気付かれ易くしたいのね』

「ええ。堕天使等への牽制は、木龍であるヴュリレン一体で、足りるのでしょうからね」

『ええ。それはそうね。こちらから、親族等に、連絡は入れるから、待って居なさいよ』

「ええ。そのように。それでは」

『ええ。それでは』

「まあ。ん。大丈夫そうね。では。待っている間にも。獏、眠り猫を、捜索しようかな」

『ええ。そのように』

『ふにゃ』

シルディア等子ども達は、範囲境界等で、自らの力を、一時的に遮断する。

(獏達や翼猫達と、木龍の力は質からして大きく違うのなら。目立つのかな。獏を残せないというのは。ん。眠り猫の転移だけに便乗するのではなく、堕天使等の転移に便乗するようなことが、あり得るとして。獏達は、大丈夫なのかな。物化因子への暴露において。まあ。流石に、擬似範囲境界に捕まるようなことは、ないのだろうけれどもね。堕天使等は、擬似範囲境界の優位性・優先権を持ち続けるには、自らも閉じ込めることになるし。範囲境界ではない擬似範囲境界では、優位性・優先権の確保に、隙が出来るのなら。脱出は。とはいえ。一時的に、高濃度物化因子に暴露させるには、足りるように思えなくも)

「…………。ん。「眷属」の方に、連絡は行ったようなのかな。これで、獏、眠り猫を」

『ええ』

『ふにゃ』

(ん。相方とは関係ない中位高位精霊達を探す場合には、どのようにすることが、好ましいのか。まあ。ヴュリレンちゃんの位置か何かが、感じ取りやすい関係から、怪物等が)

「……。シルンサス。ありがとうございます」

『ありがとうございます』

『ふにゃ』

『ええ。大切な相方獏、相方翼猫等の捜索とはいえ。遅くならないように、帰ってくるのよ。引率役の大人として、ヴュリレンが居るのだとしてもね。子ども達のことは頼むわ』

「ええ。そのように」

「それでは」

『ええ。それでは』

(新年度塾生募集関係のことは、央の国が離宮の方に帰還してからで、大丈夫なのかな)

シルディア一行は準備が整い、ヴュリレンが相方精霊や怪物等の捜索に、力を入れる。

「ピィーヨー」

シルディアは、転位珠を、ペリュトン形怪物の類へと打っ付け、本迷宮へと収容する。

「それでは。転位するから」

『ええ』

『ふにゃ』

ルアンサスはジャップロを、スゥインスはレイゾユネを、確りと抱える。そうして、シルディア一党は、転位珠による転移情報を参照して、第一本迷宮表層へと、転位を行う。

『転位珠は、怪物等にぶっつけることで、怪物等が持つ相転移炉の出力を利用し、迷宮等に転位させ収容するための道具であり。集落外への移動の際は携行が義務付けられる。空間に関する特殊性質(「ものことの成り行き」における力の行使において、世界を崩壊等させないように、安全性を確保するための情報補助)を持たない堕天使等による(擬似範囲境界の強化等に繋がる)鹵獲を避けるために、発信器を内蔵していて、回収率は非常に高くなっている。そのために、長寿命超低出力対消滅光炉を内蔵しているのだけれども。一応、制御装置等で抑制されている訳ではなく、擬似怪物を、動かせる程の出力はない』

『龍霊級堕天使でも、転位の力は用いることが出来ないのなら。核側の出力を利用するだけなので、大丈夫。核側と精霊側とで取り合いになるのなら、取り込まれる心配もないのかな。まあ。仮の器への優位性・優先権を安定的に確立できないような核では、「眷族」等により特殊加工された物化精霊質製の転位珠を、取り込むことは無理なのかな。核の力といっても、閉じ込められている精霊が相転移炉の出力に由来するのだけれどもね。核の力を削ぐことは、閉じ込められている精霊の負担軽減に、繋がるのかどうかについては。核が、出力不足だからといって、より多くの出力を引き出させられる訳ではないのなら』

(「ピィーヨー」ね。鹿と鳥との混成獣形だから、このような鳴き声の設定なのかしら。ん。とはいえ。獏の鳴き声の反映と、思えないこともないのかな)


「ピィッ」

シルディアはペリュトン形怪物右半身胸筋付近に突きを放ち、核を破壊し討伐に至る。

閉じた系としての本迷宮における。選手権競技ではない実戦では。比較的大きな力を振るうことが可能であり。討伐等競技規定上の制約は課されず。討伐は瞬時に、終了する。

『獏』

「キュー、ふにゃ、ふにゃ」

『ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ』

『父(アハトゥス)の相方獏アニュセル』

『ふにゃ』

「我の相方獏ではないようだのう」

「獏にしては、怪物化が。いや、妖仝獣に近かったようね。大蔵への繰入額が、相当に」

『銀貨』

「ええ。そうね。アニュセル。林檎と甘蕉よ」

「ふにゃ」

「一度、央の国離宮へと戻ろうか」

『ええ』

『ふにゃ』

シルディア一行は、獏アニュセルを連れて、央の国離宮へと向かう。


『ただいま』

『ふにゃ』

『おかえり』

「ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ」

『相方獏、アニュセル』

『ふにゃ』

「アニュセル。私はここで、アハトゥスと名乗っているよ」

「ふにゃ」

「今日の所は、子ども達に、付いて行かせずに置きなさい。私はシルンサスよ」

「ええ」

「ふにゃ」

(シルンサスも、獏好きなのだよね。知り合いだから竜を恐れないわね。ん。『封印』)

『ん』

「(気が付いたようね。シルディア)」

「(ええ)」

『ふにゃ、ふにゃ』

「おお。我の相方獏、相方眠り猫か。で。アハトゥスの相方翼猫かの」

「ええ」

『ふにゃ』

(我々が先に気が付いたのは、シルディアも、竜だからなのかな。三体は、アニュセルを探していたのかな。アニュセルが力の分情報量が増したと言うよりはね。眠り猫が二体いれば、拘束した堕天使等は脅威ではなく、優先度が低いのかな。仲間探しに比べるとね)

「ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ」

『相方獏、ソムロムム』

「ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ」

『相方窮奇、シュフェン』

「ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ」

『相方サン猊、アワルルク』

(窮奇がヴュリレンちゃんで、黒サン猊がアハトゥスの相方と)

「アハトゥス。この仔も、一緒よ」

「ええ」

『ふにゃ』

『ヴュリレンちゃんの相方獏、相方猫、見付かったね』

「ああ。見付かったの」

「で。アワルルク。それは、堕天使の類かな」

「ふにゃ」

『堕天使、捕まえていたの』

『ふにゃ』

「『封印』を強化するから。空間優位性・優先権を、こちらに」

シルディアは、自らとアワルルク等とを、囲むような龍質級の範囲境界を、展開する。

『ふにゃ』

流石に、厳重に拘束されているような状態では、仮に、役割、技能系統を選択したとしても。技能系統熟練度の高低に関わらず、技能系統『封印』に抵抗することは、難しい。

擬似範囲境界に拘束しているのなら。擬似範囲境界の大きさ形状を、調整できることから、護送等は比較的容易であり、長期間に及んだとしても、余り問題とはならないよう。

同じ龍霊級(天使は性質上、実力より高め)とはいえ。相転移炉の出力差から、擬似範囲境界で囲むことで、抵抗を封じることが出来る。本来はある程度、精神力を削ることが大切になるとしても。二対一では、擬似範囲境界で囲まれた時点で、逃げることは困難。

「それで。何をしに、この世界に来たのかしら」

「(いや。捕まったのは、この世界においてではないぞ)」

「そう。それで、迷宮核や特殊性質は、仲間というか他に(堕)天使等は」

『ふにゃ』

「ん。迷宮核ね。一つだけ。で、特殊性質は、他に(堕)天使等は」

「(流石に一つだ。ない。いない)」

「そうね。複数、揃うようなことは、極極稀なのならね。皆、言語補正に異常はないの」

『ええ。そのよう』

『ふにゃ』

精霊の特殊性質が、龍人、龍、竜の言語(制約)補正を欺くようなことは、力の質の関係から出来ないとはいえ。シルディアは、一応、高位精霊、五種龍、二種龍に確認する。

「で。人々を陥れる計画としては、どのようなことを」

「(迷宮の設置以外を、未だ計画とはしてない。「眷属」等が居る場合は、空間関係の力を解析できるようなものことを探るつもりでは、居のだが。白黒揃って竜が居るとは)」

「そう。これは、尋問等で何も出そうにないわね。では。仮封印所の方に、収容するわ」

『ええ』

『ふにゃ』

シルディア一党は、央の国離宮内の仮封印所に、『封印』に加え木龍級が維持の力で膠着した堕天使を、収容し。シルンサス達の元へと戻る。


『ただいま』

『おかえり』

『ふにゃ』

「ヴュリレンちゃん。林檎、甘蕉、魚等を、報酬交換できる」

「流石に、そのくらいはあるぞ。ん。これらで」

「そうだね。これらで」

『ふにゃ』

(交換し慣れている。まあ。自分でも食べるのかな。とはいえ、料理をすることが避けられないアハトゥスは別として。ヴュリレンちゃんが魚の報酬交換に慣れているのは何故)

「ふふ。これで、シルディアは勇者(代替聖女)になり。スゥインス達は新勇者一党ね」

「シュフェン、アワルルクが、勇者猫なのでは」

「ふにゃ」

『ソムロムムは、勇者獏。勇者獏、勇者猫、格好良い』

「ふにゃ」

『ふにゃ、ふにゃ』

「まあ。精霊に、精霊の厳重な封印は、難しいわよね。拘束は別として」

「そう。だから、シルディアが勇者(代替聖女)よ」

『ふにゃ』

「ふにゃ」

「魔王を拘束しておったのは、眠り猫達であろう」

『ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ』

「配下であり、貢献度的に、そうでもないとな。アニュセルの解放が重要と」

『ふにゃ』

(アニュセルが見付からないと、殆ど何もない世界から別世界に、転位し続けることに。アニュセルを見付ける次の機会は、大森林における定期捜索討伐迄なのなら、多少長い。木属性であるため、妖霊級最上位層獏なのなら。怪物等化しても、此方に来られそうとはいえ。一般臣民を混乱させないことを、考えたのかな。ん。「眷属」の立場が、この世界において、どのようなのかは、知らないのだとしても。先ず以て、大切なことなのなら)

『林檎、甘蕉、魚、美味しい』

『ふにゃ』

(ソムロムム。勇者獏はどうでも良さそう。ヴュリレンちゃんの相方獏に向いているわ)

「ん。我はまた、勇者一党の七体目なのか」

『ふにゃ』

「直ぐに、公表しなくても、良いのかしら」

「ええ。そうね。何らかの暗躍していた訳ではないのなら。代替わりの頃で、大丈夫よ」

「ああ。それが良いの」

『ふにゃあ』

「おお。堕天使を、『封印』したのか」

『ええ。まあ、一応、暗躍前だけれども』

「それは、好ましいことだな」

(ん。ストゥング達には、シルンサスから連絡が行っているようね)

「とはいえ。計画を立て、迷宮核を所持していたのなら。『封印』は避けられないわね」

『中位高位精霊探しは、続けるの』

「ええ。続けようね。ヴュリレンちゃんは」

「相方達が見付かったとはいえ。子ども達に手伝わせたのだから。続けるとしようかの」

『うん』

『ふにゃ』

「それとは別に、塾生募集のため、新設私塾内において、塾生の貴族家子女が、妹の子守りを出来るようにと、考えては居ますが。どうでしょうか。範囲境界は、迷宮等開放階層同様に、安全性から、子守に向きそうですが。体調の変化には、協会が対応することも。とはいえ、大人でも子どもでも最初に頼るのは、身近な者なのでしょうから。人形遠隔操作端末や没入型仮想現実等を用いて、自宅等に居ながら通塾することが、好ましいかと」

「流石に、乳児の子守を、児童生徒に、担わせはしないのだろうけれども。四歳以上ね。年少者は、睡眠の機会が比較的多そうなのなら。没入型仮想現実より、ある程度環境を揃えて寝台等と寝台等とを同期させたうえで、追従型人形遠隔操作端末を用いる方が、好ましいかもしれないから。切替えが大切になるわね。様子を見られることが大切なのなら。体温等の情報を、反映させることも含めて。休憩等がための睡眠時において、夢は、夢魔由来のような夢ではなく、夢らしい夢としてあることが、大切なのかもしれないのなら」

(流石に、体育館を並行多重空間化というよりは、余裕教室を、子守りに用いるのかな。しかし、ある程度の広さを、姉妹複数組が集まるのなら、相当な広さが。四歳までは、体質的な問題で亡くなる可能性が、幾らか高いけれども。五歳だけではね。範囲境界による安全性確保を両立させるには。転移所の設置位置の関係次第ではあるけれどもどうにか。子守りにおいては注視が断続的になり易いのなら。多数の目があるということは、年少者が異常の早期発見において、好ましいのかな。そうなのなら、親族等への連絡において、転移所を利用する手間が一つ増えたとして。助言を受けたり相談したりも、出来るから)

「…………。そのように。学級が増える程ではなくとも、捕捉率が、低学年で幾らかは」

「家庭教育等への取り組みに、同世代との関りから影響を及ぼそうと考えるのなら。低学年の捕捉率は中高学年に比べて、高くても良さそうだから。子守りが可能となることで」

「ええ。高まることがあり得るかと。養子等の年齢差をどのようにするのか等は、各貴族家次第とはいえ。兄弟姉妹間で、余り年齢に差は付けないでしょうし。各貴族家への所属意識を持たせるために、比較的年少の頃から、養子等として、迎えるのでしょうからね」

「ええ。次年度塾生募集策は。これで、どうかしら」

『ええ。思い付かないから、これくらいで』

『今日は、これから、中位高位精霊探しに行くの。私塾に行くの』

「ヴュリレンちゃんが私塾に行くのは。アニュセルとアワルルクも一緒の時、なのかな」

『うん』

『ふにゃ』

「では。そういうことに、するかの」

(ん。それでは。塾生妹に対しての範囲境界による保護については、後程にするのかな。流石に、加えて相方獏が怪物化しているとは思えないのなら。もう親族等には、相方獏や相方翼猫が、居ないのかな。まあ。獏達や翼猫達が増えてからの期間が短いのなら。情報が四体分増えたとしても、早々に転移して来るということが、慎重な獏達や翼猫達では)

「日々の迷宮等探索においても、力は遮断されるのなら。親族等への連絡は、余り大切ではないけれども。一応、目的が迷宮探索ではないことが伝わって居るシルンサス達には、中位高位精霊探索のために、我々が力を遮断することがあり得ると、伝えて置きますね」

『ええ。そうだね』

『それでは。行ってきます』

『ふにゃ』

『行ってらっしゃい』

シルディア一行は、再び大森林へと向かう。


『到着』

『ふにゃ』

「獏達、一応、今回も物化因子の方を、取り除いて置こうか」

『ふにゃ』

「今回は、鳥形、兎形の中位高位精霊を探すために、比較的近いレイゾユネ、ジャプッロの力を、目立たせようか。翼猫達や「眷属」達の力を感じ取らなくても。中位精霊にも、怪物等化していない低位精霊達がそれ程、積極的に近づいては、来ないのだろうからね」

(閉じた系に意識的に残って居る中位高位精霊が、内外両面において、精霊等の力を完全に遮断せずに。時々、気にはして、外を感じ取ろうとしていると、良いのだけれどもね。少しの間、獏や翼猫の情報を感じ取れなくても、かえって、気になって何らかの動きを)

『うん』

『ふにゃ』

陽関係の火属性精霊や、(一応)月関係のような土・地属性精霊を、捜索するのなら。木属性の獏達の力も、幾らか遮断することになるのかな。星の恒常性循環・自浄化作用維持に影響が出ない程度で。精霊ではない「眷属」が、極極少数の精霊達を連れているくらいのことを含めて、そのようなことに影響が出ないのであれば、大丈夫なのだけれども。

「ああ。眠り猫達は、擬似範囲境界で大丈夫よ」

『ふにゃ』

シルディア一行は、大森林等において、鳥形、兎形中位高位精霊の探索を、開始する。

『鳥達、兎達』

『ふにゃ、ふにゃ』

(力を感じ取らないのに、人間らしからぬ声で、呼び掛けられるのは、どうなのか。ん。一応、気になりはするのかな。黙って探し続けるというのは、難しいし。呼び掛けて離れていくような精霊に、「眷属」が要求をするというのは、避けることが好ましいのなら)

「……。鳥達、兎達」

(まあ。流石に、堕天使等は居ないのだろうから。大丈夫なのだとしても。一応、擬似薬草を一括指定して置こうかしら。周辺の擬似生物に異常はなし。増加量においても、異常はないとはいえ、少し多いのなら。幾らか削るのかな。ん。流石に、警査等の行政職員組織が、見逃せない程ではないのなら。気か付かない程度に、少し削ることにしようかな)

「…………。兎達、鳥達」

『ん。兎達、鳥達』

『ふにゃ、ふにゃ』

(ん。旧西の国領、旧北の国領においても、捜索した方が良いのかしら)

「眷属」等を欠いた魔王大戦期において、旧西の国領、旧北の国領へと魔王軍が侵入したため。旧西の国領、旧北の国領集落の殆どは、(小氷期を欠く関係で四箇国臣民等も相当限られた島嶼を伝い、比較的早期に到達したとはいえ)央の国領である新大陸に、巨大岩石惑星が表面一部の形で、安定的浸食基準面を備える関係から、中位高位精霊達の協力の元、転移移設が可能であり。(旧西の国領、旧北の国領においては、集落に適する地域が、大陸沿岸部等に限定されていたため)、旧大陸に比べて多少径が大きい環状の新大陸へと、空間隣接性調整を含め、集落間隣接関係をある程度保持したままで、移設された。

基本的に、微細精霊を除く精霊は、特に高位精霊程の力がない中位精霊は、怪物等以上に、人間の集落へと近づかないのなら。集落から離れた場所を捜索することが、効率的と思われる。閉じた系に留まり続けているような精霊を別として。とはいえ、閉じた系とはいえ。共有空間との基本的な隣接性を設定するに当たり。集落周辺は避けられるのなら。央の国の意向から、多重空間設置位置関係が大森林や大山脈やその周辺ではないとして。

『むう。見付からないね』

「そうね。そう簡単には、見付からないわね」

「相方達を揃える関係で。明日も一緒に中位高位精霊を探すのなら。今日のところはの」

『ん。うん』

『ええ』

『ふにゃ』

「とはいえ。閉門作業等時に、一般塾生を刺激しないように、目立つことを避けるため。まあ。今日のところは、ソムロムム、シュフェン、ヴュリレンちゃん、お別れなのかな」

『んん。またね。ソムロムム、シュフェン、ヴュリレンちゃん』

『それでは』

『ふにゃ』

「それでは。「ちゃん」ではないからの」

シルディア一行は、ヴュリレン等と離れ、閉門作業等のために、新設私塾へと向かう。そうして、無事閉門作業等を終えたシルディア一行は、央の国離宮へと向かう。


『ただいま』

『ふにゃ』

『おかえり』

『ん。ヴュリレンちゃん。ソムロムム、シュフェン』

「うん。ひとり一人とまではゆかぬが、一応は、子ども達の帰還を、見届けなければな」

『ふにゃ』

「それではの」

『ふにゃ』

『それでは』

『またね。ソムロムム、シュフェン、ヴュリレンちゃん』

「そうだの」

『ふにゃ』

(明日も一緒に行動するのだから。泊まれば良いのに。ん。シルンサスの料理が恐いか)

『では。我々も。それでは』

『アニュセル、アワルルク』

『ふにゃ』

『それでは』

『ふにゃ』

(明日。ソムロムム、アニュセル、シュフェン、アワルルク、ヴュリレンちゃんが、新設私塾の方に行くとなると。開塾祭の目玉がなくなってしまうのかな。とはいえ、鳥や兎が見付かったとして、一定期間、新設私塾の方に連れて行かないということが、出来るのかどうかを思うと。目にする機会の少ないソムロムム、シュフェンは。とはいえ、余り新設私塾に関係ないのなら。目玉にするのは、好ましくないのかな。そうなると、開塾祭の日程が重要になるのかな。準備は前以て可能とはいえ。日程が決まっていない周知では、保護者である母親等の予定を、無理やり合わせることに成り兼ねない。協会、行政職員組織関係での予算が、組まれていないとはいえ。新設私塾は、一応、「眷属」関係の事業なのなら。貴族家等関係者にとっては、最優先事項になるのだから。まあ。予定の関係者も、立場の近い貴族家関係者である可能性が高いのなら。問題は少ないのかもしれないわね)

『アニュセル、アワルルク』

『ふにゃ』

シルンサスは、子ども達に呼ばれた獏アニュセル、翼猫アワルルクを、抱えていた状態から放して、そちらへと向かわせる。

(ん。シルンサスは、相方獏リスイルガ、相方眠り猫アルットゥとは、私室等で、一緒に居るだろうし。アハトゥスの相方獏アニュセル、相方翼猫アワルルクと一緒に居ることは少なくはないのだろうから。我々が出掛ける時には、連れて行って、大丈夫なのかしら)

「んしょ」

(獏達や翼猫達を、抱えたり、肩や頭に乗せようとしたり。スゥインスは、可愛いわね)

『(ふにゃあ)』

「ん。ああ。シルンサス。新設私塾での塾生による子守りにおける。没入型仮想現実、範囲境界、人形遠隔操作端末等の利用に関して、少し話があるのですが、良いでしょうか」

『ええ』

シルディアは、シルンサス等に、子守りおける範囲境界の利用についての話を付ける。

(ん。開塾祭・私塾説明会。日程等を先に決めてしまってから。中位高位精霊の捜索を)


『おはよう』

『ふにゃ』

『おはよう』

「早いね」

「いや、スゥインスが、少し遅かったのかな」

「そうなの」

『そうね』

(新しい獏達や眠り猫達のことが、気になったのかしら)

シルディア達は、央の国離宮で、フエイニス達と合流し。新設私塾へと向かう。


『到着。鳥達、兎達』

『ふにゃ』

『今日は、ピュルヴュとマルナレネ』

『ふにゃ、ふにゃ』

(ヴュリレンちゃんと。獏達、翼猫達が増えたことは、注目されているようなのかしら。子守り用の施設は、体育館ではなくて、討伐者組合支分支所の方と、多重空間化するのかな。余り大したことのない利用者数による込み具合というか。転移所設置数の関係から)

「……。ん。子守り用施設を、校庭等を削らないように、討伐者組合支分支所の方に、多重空間化して設置したいから。準備が出来たら、そちらに向かおうか。まあ。閉じた系自体を拡張しても良いのだけれども。私塾とは別の関連施設みたいになってしまうからね」

『うん。子守は、遊びに行けなくても。知り合い等が遊びに行くことは、出来るからね』

「そうだな」

「知り合いが留まる時間と、注意の分散とが気になるとはいえ。周りに誰かが居るとね」

シルディア一行は、教室等での日課を終え。隣接討伐者組合支分支所の方へと向かう。


(寝台数は、次年度新入生は、二十名強を期待。とはいえ、在校生が妹の子守を担うことや二年生以上の新規入塾者の可能性から。四十程度。いや、日々略全員通塾しているのなら。曜日等で、子守を担うということはないようなのだから。在校生分は余り、増えは)

「ここ、子守り用施設の寝台数は、どれくらいが良さそうなのかな」

「三十床」

「三十六床程」

『四十二床』

『ふにゃ、ふにゃ』

(獏達、翼猫達は四十八床か。私の様子を見ていたようね)

「塾生数は、百八十人くらいだったかの」

『百八十六人』

『我々を除いてね』

「通塾者の増加を期待して、全体が二割五分程で四十八床かの」

「ん。四十二床、ん。切良く、四十床で」

『そのように』

『ふにゃ』

「それでは。中位高位精霊捜索の方に、向かおうか。今日は、北の国、西の国よりでね」

『ええ』

『ふにゃ』

「ピュルヴュ、マルナレネ以外の力を、ある程度は遮断ね」

『ええ』

『ふにゃ』

(翼猫達は、土・地属性か火属性を備えるのなら。場合によっては、遮断しなくとも。とはいえ。鳥形、兎形を中心に捜索するとなると、やはり、ピュルヴュ、マルナレネだけ)

シルディア一行は、中位高位精霊捜索に、大森林北の国・西の国側へと向かう。


『到着』

『ふにゃ』

中位高位精霊等捜索を兼ねて、転移ではなく、猫戦車で移動した。シルディア一行は、猫戦車から下車し、荷車を収納する。

「獏達、一応、今回も物化因子の方を、取り除いて置こうか」

『ふにゃ』

(まあ。力を遮断するために、我々が範囲境界を、展開するのだけれどもね)

獏達は、自らの力で、高性能擬似範囲境界を、張り続けることは難しい。

『鳥達、兎達』

『ふにゃ、ふにゃ』

(ん。今回の捜索対象である可能性は、比較的低いとして、怪物等が、大人数だから近づいてこないというようなことは、余りないのかな。ヴュリレンちゃん一体とはいえ。木龍の力を感じ取ることが、出来るのなら。陽月に関係するような精霊、鳥形、兎形以外は。陽関係の兎は聞かないけれども、月関係の鳥というのは聞いたことがなくはないのかな)

「…………。鳥達、兎達」

『鳥達、兎達』

『ふにゃ、ふにゃ』

「ピュルヴュ、マルナレネは、「かあー」、「ぴょん」等にして見るのは、どうかしら」

「カアー」

「ピョン。ブー」

(「キーィ、キーィ」と鳴いても、流石に、誘き寄せられるようなことは、ないのかな)

「カァー」

「プゥー、プゥー」

「カァー、カァー」

『プゥー、カァー、カァー。プゥー』

『ふにゃー、ふにゃー。ぴぃー、ぴぃー』

(ん。可愛い)

『鳥達、兎達』

『居ないね』

「声は余り遠くまでは、確り届かないからね。力だけでは、呼ばれているのかどうかは」

「少し、移動するか」

「移動するとして、大森林側かな」

「そうね」

『うん』

『ふにゃ』

(ん。今回も、一応、擬似薬草の方に、異常はなさそうなのかな)

シルディア一行は、気持ち大森林側・大陸中央部へ向かいながら。鳥形、兎形中位高位精霊の捜索を、続ける。

(ん。鹿頭、いや。角野兎、ヴォルパーティンガーの類。中位精霊)

「ぴょん、ふにゃ」

『兎。居たの』

『ふにゃ』

鹿のような枝角を持つ角野兎が、位相的欠陥から、頭部だけを覗かせて居る。

「ぴょん、ぴょん」

角野兎は、位相的欠陥から離れないようにしていることを、詫びている。

(ん。これでは、留まるような場から離すのは、少し難しいのかな。いや、単純に、同じ位相的欠陥何内に転移するための印の類が少なくて、幾らか戻ることが大変なのかしら。人間と、余り関わらないために、拠点としているような閉じた系なのかもしれないわね)

『そっちに、鳥は居るの』

「ぴょん、ぴょん」

(ばさん。火属性の鳥形中位精霊だね。何らかの閉じた系なのかな)

『そちらに、行っても良いのかな』

「ぴょん」

「こけ」

鶏のようなばさんも、角野兎のように、位相的欠陥から、顔を出す。

『うん』

シルディア一行は、一応、範囲境界を翼猫達の分を含めて展開し、ばさん、角野兎らの居る位相的欠陥内へと転位する。


『到着』

『ふにゃ』

「ぴょん」

「こけ」

(施設設備の類は撤去されていて、擬似的な植生等の類さえ、欠くようね。擬似薬草は、地下における根や地下茎の類を含めて、ありはしないようね。ん。そうなのだとすると)

「(ピュルヴュ、マルナレネ。二体の意向を聞いて見て)」

『(ふにゃ)』

(ふふ。ピュルヴュ、マルナレネ的には、仲間が増えるというのは、問題がないようね)

『ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ』

「ぴょん」

「こけ」

『(ふにゃ)』

「それでは。ばさん、ヴォルパーティンガー。るい、玉兎に、金烏、角兎が、擬似陽月の運行を担っている閉じた系が、あるのだけれどもね。どうなのかな。一緒に来るかしら」

「ぴょん、ふにゃ」

「こけ、ふにゃ」

『一緒』

『ふにゃ』

「この閉じた系を、待機場所用に、持って行こうか」

『ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ、ふにゃあ』

(他の精霊達が利用するかもしれないから、持っては行けないとね)

「ん。精霊の入退場を容易にした閉じた系を、新たに設置するのなら。どうなのかしら」

『ふにゃ、ふにゃ』

「では。そうしようね」

(央の国離宮等に、閉じた系の設置記録を残さないとね。新設私塾の変更情報と併せて)

閉じた系への精霊が出入りを、幾らか容易にしたとしても。物理的相互作用的には、問題がない。共有空間内が精霊数の減少においても、精霊の行動として、少数なら問題はない。時と場合によっては、属性要素が疎密等を、調整することが、大切になるのだから。

『名前は』

「ふにゃ、ふにゃ」

『ばさん、ソゾレイネ』

「ふにゃ、ふにゃ」

『ヴォルパーティンガー、ルアモント』

(陽にちなむ名前同士、月にちなむ名前同士。似ることもあれば、似ないこともあるね)

犬鳳凰ばさんは、鳳凰程には派手ではなく、赤い鶏冠の目立つ鶏形をしている鬼・魔霊級精霊。翼角兎ヴォルパーティンガーは、鹿の角、雉の翼、水鳥の後肢、狼の歯、栗鼠の体、兎の頭部を持つ鬼・魔霊級精霊。ちなみに、龍霊級鳳凰は、鶏、燕、麒麟、鹿、亀、魚、蛇を合わせたような五色の姿容とされるようなことが、ある。

『一緒に、新設私塾に行く』

『ふにゃ』

シルディア一行は、歪形を取ったばさんソゾレイネ、ヴォルパーティンガールアモントを、閉じた系から共有空間へと、連れ出し。二体が留まっていた閉じた系を回収、精霊の利用が比較的容易な閉じた系を新設し。新設私塾へと向かう。


『到着』

『ふにゃ』

(ソゾレイネも、ルアモントも、注目されているのかな。増えた、獏達、翼猫達、ヴュリレンちゃんもね。ヴュリレンちゃんの見た目なら。保護者の入場申請が増えないのかな)

目玉とはいえ。流石に、開塾祭まで、ソゾレイネ、ルアモント二体を隠すようなことはしない。実際に目にするものは、少ないこともあって、気になるのかもしれないのなら。

『レイゾユネ、ジャプッロ』

『ふにゃ』

『ふにゃ』

「ん。待機場所は、何処に設置しようか。鳥側、兎側、別の所。支分支所があるからね」

「堕天使等監視のために、討伐者組合支分支所の近くだな」

「一応、堕天使等監視を、厳重にすることは、好ましいですから」

『真ん中の建物が近くだけれども。大丈夫』

『ふにゃ』

シルディア一行は、閉じた系を、空間調整隣接討伐者組合支分支所近くに、設置する。

「閉門時間まで、宣伝用紹介映像・画像資料の撮影を、しようか」

『ええ』

『ふにゃ』

(施設設備紹介等は、前回の映像で良さそうなのだけれども。一応、新しくね。新たに加わった、鳥達、兎達、獏達、眠り猫達が、映るように。今回、歌唱はなくて良いのかな)

シルディア一行は、開塾祭が宣伝用の事前準備撮影等を終え、央の国離宮へと向かう。


『ただいま』

『ふにゃ』

『おかえり』

『この仔は、ばさんのソゾレイネ、この仔はヴォルパーティンガーのルアモント』

『ふにゃ』

『よかったね』

『うん』

「旧北の国、西の国側の大森林に、閉じた系があり。回収して、新設私塾が閉じた系の方に移設しました。精霊の隠れ家として、跡地にも、略同様の閉じた系を設置しています」

「そう。それで、位置の方は」

「こちらになります」

「それでは。一応、記録を残すことにするわね」

「ええ。そのように。また。開塾祭が広報用の宣伝用紹介映像・画像資料は、こちらに」

『そうか、そうか』

『ん。公式で、放送しないの』

「協皇立とはいえ。一応、私塾なのなら。前回同様、ストゥング、アハトゥスに任せて」

『ええ。そのように』

『ふにゃ』

「子守り用施設の方も、設置できました」

「そう。今度、一応、同期の確認をして置こうか」

『ええ。そのように』

『ふにゃ』

『それでは。我々はこの辺りで』

「そうだの」

『ふにゃ』

「そう。それではね」

『それでは』

(スゥインス。ん。鳥、兎、獏、猫縫い包みでも、つくるとするかな)

ヴュリレン等は、それぞれ、帰還する。

「スゥインス」

「ん」

『ふにゃ』

「先ずは、ソムロムムとシュフェン形」

「歪形縫い包み」

『ふにゃ』

「次に、レイゾユネ、マルナレネ形。ジャプッロ、ピュルヴュ形。最後に、ソゾレイネ、ルアモント形と。どうなのかな」

『可愛い』

『ふにゃ』

(可愛い)

新設私塾開塾祭広報用宣伝用紹介映像・画像資料を、参照することで。シルディアは、スゥインスに、鳥、兎、獏、猫縫い包みを、つくる。汚損等されないように、精霊質で。

物化精霊質は高価とはいえ。「眷属」等以外の人手に渡ることは、ないのなら。大丈夫。

「アッヒュルとルアンサスの分を、つくっても良い」

「ええ。大丈夫よ」

『ふにゃ』

「んしょ」

スゥインスは、鳥、兎、獏、猫縫い包みを増加させ、多重空間鞄へと、収納する。

(ん。縫い包み、良いのかもしれないわね。協会学校ではなく、私塾であり、放課後の提供を中心とするのなら。新設私塾の宣伝に、中位高位精霊を用いるのなら。その効果を高めるために、縫い包みが。精霊形とて、妄信等の対象にするようなものではないのなら)

「(ふにゃ、ふにゃ)」

『ふにゃ』

スゥインスは、シュフェンの声真似をしながら、シュフェン形縫い包みを抱えている。

(可愛くて、器用ね。私の分も、つくって置こうかな)

シルディアは、自分が分の鳥、兎、獏、猫縫い包みを、猫耳多重空間鞄内に、つくる。

(ん。塾生等への販売や配付は別として、開塾祭用に、新設私塾内に、設置するのかな。とはいえ。塾生が妹達の子守りに用いると、配付することに、なってしまうのかしらね)

「(ふにゃ、ふにゃ)」

『ふにゃ』

(仮に、塾生の捕捉率を高め過ぎるというのは、どうなのか。残り数割、数分、数厘が)

「スゥインス。少し、擬似薬草保管庫の方を見て来るよ」

「うん」

「リガレトプ、プレヴァル」

『ふにゃ』

「それでは。スゥインス。切りが良さそうなところで、眠ろうね」

「うん。(ふにゃ)。おやすみ」

「おやすみ」

『ふにゃ』

シルディア一行は、擬似薬草保管庫へと向かう。


(リガレトプの閉じた系における範囲境界は大丈夫と。一括指定時には、特に異常はなさそうだったとは一応、擬似薬草そのものを、見て、微妙な差異の新設計擬似薬草等はと)

「……。リガレトプ、プレヴァル。何か気になることは」

『ふにゃ』

「そうね。少し、見て見ようか」

『ふにゃ』

シルディア一行による検査後、保管庫内の擬似薬草が一部は、焼却処理される。

(ん。低廉水薬様仮想体力回復薬を、作成して、各討伐者組合の方に、配布しないとね)


『おはよう』

『おはよう』

『ふにゃ』

「今日は、何をするのか」

「子守り用施設が寝台における同期の試験なのかな」

「では。年少者役の方は、どのように」

「ん。これ」

『縫い包み』

「アッヒュルとルアンサスの分も、あるよ」

『ありがとう。可愛い』

「シルンサスに渡さなくて、大丈夫だろうか」

「ああ。翼猫等が好きだからね。今度、渡そうかな」

『うん』

『ふにゃあ』

シルディア一行は、人形遠隔操作端末を用いての寝台間同期試験を、無事成功させる。

(施設設備等の平行多重空間化。施設設備配置図、施設設備等案内板の設置で、案内は。当日は、範囲境界で、立ち止まっているような場合に、それらの情報を参照可能にして)


(無事、開塾祭の準備は整ったのかな。後は、宣伝等に関する伝達を待って、既定通り)

『ただいま』

『ふにゃ』

『おかえり』

「宣伝伝達以外の開塾祭が準備は、終わりました」

『ああ。宣伝伝達の方も、進めているから。画像の評判が良い』

「貴族家当主等にとっては、親族等が、紹介映像に移るのが、好ましいのでしょうがね」

「それで。開塾祭当日は、案内人等なしで大丈夫なくらい、準備は出来ているのかしら」

「ええ。基本的には、保護者等の目がある状況下で、塾生同様に、妹方等に、施設設備を利用して貰うだけですから。予算の関係から、案内を紙媒体等の形で残せないのですが」

「それなら。古語等読み書き用問題集が裏表紙等にでも、「眷属」側で記載等しようか」

「まあ。案内を通読しないような年少者の塾生でも、問題は起こしていないのですから」

「そうなのなら。大丈夫そうね」

『大丈夫だろうね』

『ええ』

『ふにゃ』


(申請組数六十八、参加組数六十八。新たに通塾させるための機会を待っていたのかな。姉妹の年齢差の大きい場合があるわね。流石に、新たな養女ではないとはいえ。ん。捕捉率が八割近くになるのなら。流石に、その内、残りの幾らかも通塾に傾く可能性があり)

『いっぱいだね』

「ええ。そうね。これで、次年度入塾者が、期待できるのかな」

『ええ』

『ふにゃ』

「それでは。今日は何をしようか」

(了)

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白竜シルディアと王侯子女の放課後 空埜 竜澪 @sn_ryurei

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