第二幕の前半
「シルンサス。我々、私は、王侯子女向け私塾を、設立しようと思います。学校を提供することが出来ないとしても。放課後だけであっても、王侯子女方に、提供したいのです」
「ええ。そうね。単なるシルディアの思い付きなのだとしても、親族たる仲間達と相談して、共に、頑張りなさい。では。教科書等選定に加えて、私に出来ることはあるかしら」
「宣伝用の紹介資料映像の方を、作成中ですので、各貴族家に配付を、お願いしますね」
『作成中ということだと、少しは、出来ているの』
「ええ。所謂、出落ちの類なのでしょうけれども」
「まあ。あれは、出して良いことなのかどうかを、伺いを立てねばな」
「ご両親等が、中立的な立場で、評価を下せるのかどうかは、わかりませんけれどもね」
『ん。鳥達も、兎達も、獏達も、猫達も、可愛いよ』
『ええ。それは、そうね』
「本人達の前で見るようなことでは、なさそうね」
「ああ。そのようだね」
『それでは』
『それでは』
『ふにゃ』
「眷属」等達は、分かれて、それぞれの部屋や家へと向かう。
『黒死病の蔓延により、隷農・準自由農を含めて、農務職員化することになり。財政専売所により、地域間食物価格の数倍に及ぶ価格差が調整され、地域間季節間の裁定取引を、回避することになる。皇帝・協皇・最高領主は、農地所有権の下に、人口減少による距離的問題からの保有権の継承不能の多さと、増加変換擬似作物と大不作下の時期選択権付取引とにより、農地保有権を回収した。農務職員化により、村民間の農地保有権売買を防止するための、村落における貨幣経済の浸透防止の重要性が、低下する。また。農務職員化と野外活動許可制とにより。農務における年少労働は防止され、村落等において、協会学校・初等教育と前期中等教育とが、普及することになる。嘗て、年少労働等により、補われていた労働力の不足は、協会職員等により正式に、制度的に、補助されることになる』
『村落における貨幣経済の浸透防止の重要性が、低下することは、村民による手工業製品の消費を、容易する面がある。手工業は、発明品を手工業製品として、転用技術で専用とまではいかない幾らか汎用的機構の機械で、ある程度の品質で大量生産することにより、大量消費させ、儲ける産業なのなら。大きな市場が大切であり、そのためには、人口の大多数を占める農林畜水産業従事者による消費が、期待されることになる。そのような期待が叶えられたということは、都市等において、徒弟期間の前倒しへと繋がる面があるものも。都市部において、協会学校・初等教育と前期中等教育を含む協会組織方面への繋がりによる保護・社会福祉の重要性は、性質の近い職業団体から一定の理解を得られている』
『比較的高品質の製品を求める傾向のある各貴族家が、大規模な邸宅を構えるとしても。数百万数千万単位で、単用財ではない耐久消費材を、短期間で消費する訳ではないのだから。結果的に、力を付けた手工業者等から、王侯貴族へ、農林畜水産業従事者への減税による可処分所得の拡大圧力が、様々な手段によってなされることが、想像できたのなら。農務職員化は、そのような混乱等を、先回りして避けるための選択肢とも、なっていた』
(一般臣民において、子ども達に、広く放課後というのは、比較的広く提供されている)
「シルディアちゃん。それは、何」
「教科書等に、目を通しているのかな。読み書き用問題集の類は、南東の国向けと、北西の国向けとに、分けられているのかな。古語や民衆古語の勉強になるのなら。貴族家子女向けの教科書等としては、好ましいのかな。古語や民衆古語を介して、南東の国々と、北西の国々、相互の言語を学ぶことも、出来なくはないわ。まあ。それぞれ、方言くらいの違いしかないのかもしれないけれどもね。内容の方も、差しさわりの無いような幾らか機械的な内容に、成っているのかな。「これは、筆ですか」。「はい。筆です」のような」
五箇国成立以後から、央の国・「眷属」等による聚成帝国樹立以前は、大森林と、大山脈とにより。央の国を挟むようにして、南東の国側と、北西の国側とに、分かれていた。
「この仔は、レユルフェです。この仔は、ストフレンです」
『ふにゃ』
「ええ。そうね。固有名詞の場合は、ひとつ一つが、大切よね。ん。筆は普通名詞とはいえ。筆は筆で、様々な姿容が、あるのかもしれないけれども。地域や時代に、よってね」
「うん。そうかもしれない」
『ふにゃ』
「ん。体育館は、王侯の子女が精霊化等で、比較的進んでいるにしても。成長段階による身体能力や体格等の差が、あるのだろうから。一年生から三年生、四年生から六年生、七年生から九年生、「眷属」等四つに、並行多重空間化で、分けるのが、好ましいのかな」
「塾生数次第なのかな。少ないのなら。仲が、良いのかもしれないから」
「ええ。そうね。三年生と四年生、六年生と七年生で、仲が良いのかもしれないからね」
「姉妹は、年が離れていることが多いから」
「ん。まあ。精霊化等の関係からなのか。王侯は、年齢の近い子どもが、少ないからね。どうにも、現世等における年齢差と変わっているようなことが、多そうで。多生児であっても。選手権競技の類ではないから。分けなくて良いのかもしれず。塾生数次第なのか」
「特別活動室は、並行多重空間化しないの」
「部活動次第だね」
「図書は、集められるの」
「著作権存続期間次第というか。予算が付かない関係から、書籍等は、比較的高価なのなら、難しいのかな。旧協会学校等から、保管庫に保管されている物が、あるのかどうか」
「百数十年前に閉校したからね。今は。閉校は、珍しいのかな」
「まあ。無人の帝国領・央の国領、皇王室領の存在から。人口爆発は抑えられているけれども。東の国でも、人口減少期に、入っことはないようで。各貴族家領に細分化されている関係で、討伐者の拠点は別として、大規模な人口移動による社会減は、防止されているのかな。討伐者は転移所を利用できる関係で、住居の移転まではしないことが、多くて」
「閉校は珍しい。公共の図書館が閉館するようなこともない」
「ええ。そうね。ふふ。好ましいことだね」
「うん。そうだよね」
『ふにゃ』
星アステルをつくりし「眷属」といえども。土地や星等とは異なり、精霊の個体数を増やすことは出来ないのなら。人口爆発による環境負荷の増加は、避けることになる。星アステルの環境恒常性における自浄化作用は、その多くを、精霊達に依って居るのだから。
「そうだ。シルディアちゃん。王侯の子息に向けた私塾の方は、設立しないの」
「ああ。「眷属」等としてのあり方が、班位において大切な皇王室とは異なり。貴族家の爵位は、男性が継承することが多いのなら。王侯の子息においては、貴族家等において、教育することが大切な事柄が、比較的多くなるのなら。私塾への通塾は、難しいのかな」
「そうなの」
「ええ。そうなの」
『ふにゃ』
「スゥインス。明日も、新設私塾宣伝用の映像資料が撮影は、あるのだから。おやすみ」
「うん。おやすみ。眠り専門の獏達が居るのなら、起きられるから、大丈夫」
『ふにゃ』
『おはよう』
『ふにゃ』
「おはよう」
『アハトゥスは』
「ああ。アハトゥスは、ストゥングと一緒に、孫や子が可愛いと、宣伝しているようね」
『それは、迷惑を、掛けていないの』
『ふにゃあ』
「んん。まあ。二人か言うには、概ね好評なようよ。家の娘も、可愛いのだとか何とか」
『んん。それは、それで、言い争いなのかな』
「ええ。そのようにも、取れるわよね。言語補正があったところで、勘違いから」
『ふにゃあ』
「まあ。一応、朝食づくりを手伝うくらいだから、我を忘れているようではないのかな」
『そうだね』
『ふにゃあ』
(アハトゥス。宣伝用の紹介資料映像については、作成中と、言った筈なのだけれども)
シルンサス一家は、無事、朝食を摂る。
『おはようございます』
『ふにゃ』
『おはよう』
『ふにゃ』
「アッヒュル、フエイニス、ヴェルレア、ルアンサス達は、朝食を摂ったの」
『はい。大丈夫です』
『ふにゃ』
「そう。気を付けて、行ってらっしゃいね」
『はい。行ってきます』
『ふにゃ、ふにゃ』
『鳥さん達、兎さん達』
シルディア一行の転移を感知した鳥達、兎達が、合流する。
『ふにゃ』
「獏達、眠り猫達、夢魔の類は、大丈夫なのかな」
『ふにゃ』
「宣伝用の紹介資料映像作成の続きからなのだけれども。ストゥングとアハトゥスとが、貴族家の当主等に、作成中のものを、見せたらしいの。まあ。概ね好評らしいけれども」
「まあ。順当にというか。年齢より、小さく見えるからな。お前達」
『フエイニスもだよ』
「私や、ヴェルレア、シルディアは、大分、表情が硬いだろうよ」
『流石に、表情位で、幼さをどうにかするのは、無理だよ』
『ふにゃ』
「まあ。そうなのかな」
「ええ。我々には、貴族家当主等と、会話をするような機会が、ないからね。それに、子どもは、楽しいとしても無表情になっていて、わかり難いことが、あるのだろうからね」
「そのようなことがあるのか。まあ。シルディアは、不機嫌そうでも、不機嫌ではないのだろうよ。緊張し過ぎて居るだけなのであってな」
『ええ。そうだね』
「ああ。そう言えば。図画工作室、美術室、技術教室、音楽室、各準備室の類に、注目しなかったけれども。何か、気になる物は、あったのかな」
『前を通った時には、多分、目立つ物は、なかったよ』
「ああ。備品として、彫刻刀の一組くらいは、あるのかもしれないが、大きなものはな」
「まあ。単純強固な純雑質等で、変形等することで、音を響かせるような楽器の再現は、難しいからね。加えて、ここは閉じた系で、空気はないから。範囲境界間の伝達等によって、会話等同様に、音を再現することが、出来ない訳ではないから。音楽室自体は、あるくらいで。ん。嘗ては、純雑質で幾らか再現された複雑軟弱・繊細な楽器等が、あったのかもしれないけれどもね。空間に適応した運動用具類を、利用可能に、調整するように」
『ふにゃ』
「ん。そうよね。一応、宣伝用紹介映像資料作成のついでに、立ち寄って見ましょうか」
『ええ』
『ふにゃ』
シルディア一行は、各特別教室を回り、備品を調査し、紹介映像を撮影するも、特に目立つ備品、設備等は、見付からなかった。
「ああ。んん。これでは、体育館内体育倉庫の方も、期待できないのかもしれないわね」
「美術や音楽に、用いるような道具類は、各子女が、個人所有しているとしても」
「ああ。この辺獄・冥界で、広く行われていないような運動競技用の道具類を、個人所有している貴族家子女が居るとは、考え難いな」
『そうなのなら。誰も、持って行かないかもしれない』
「そうね。取り敢えず。行って見ましょうか。得点枠は残っていったのなら、可能性は」
『ええ』
『ふにゃ』
シルディア一行は、新塾舎併設体育館へ向かう。
「体育館は、やはり、三学年ごと等に、多重空間化して、分ける方が、好ましいのかな」
「身体能力的にはな」
「少なくとも、「眷属」等とは、分けた方が。塾生数次第ですが。保護者には好評なのなら。少なくはない可能性がありますから」
「ええ。この際、多重空間化して、四つに分けておこうね。まあ。年代的に、意匠権等が存続期間の方は、大丈夫なのだろうから」
『ええ』
『ふにゃ』
人々が範囲境界等により保護される閉じた系内においては、精霊の数は、それ程、重要ではない。共有空間内において、範囲境界を、全臣民向けに、運用できないことはないのだけれども。制圧が困難となり。身体侵害とは別種の犯罪行為、非違行為への対応が気になる。身体保護においては、共有空間内においても、役割、技能系統が、「眷属」等が欠ける場合等に備えて、皇王霊級を中心とする高位精霊により、導入されているのだから。
『体育館。また、合唱はするの』
「いや、流石に、もう、合唱は、今度ね」
「また、何時かは、合唱するのかよ」
「アッヒュル、ルアンサス、スゥインスは、鳥達、兎達、獏達、翼猫達が、大好きだね」
『うん。好き』
『ふにゃ』
(可愛い)
「ふふ。今回は、体育館内体育倉庫の方に、行くのでしょう」
『うん。行く』
「ん。大丈夫。多重空間切り替えの選択肢は、表示されるね。では、「眷属」等向けと」
『体育館内体育倉庫は、何階にありそうなの』
「まあ。一階だろうね。演壇下には、椅子が収納されているのだろうから。何処かに、扉が。ん。綺麗に、壁と一体化している。流石に、床下収納ということでは、ないのかな」
『何処にあるの』
「ん。あの辺りに、堀込取手の類が、見えないかな」
『あった』
『ふにゃ』
「ん。何故、扉が、壁面の前後ではないのだ」
「怪我をするようなことはないだろうから。競技の妨げになるとか」
「線外だろうに。まあ。外野に支障があるのか。とはいえ。ぎりぎりに、線は引かない」
「見た目を気にしたのかな」
(ん。堀込取手なのなら。手前に引くのは難しいのなら。奥に押して、滑らせるのかな)
「では。行こうか」
『ええ』
『ふにゃ』
(ん。開いた。まあ。「眷属」等の力による仕掛けの類は、ないのなら。順当なのかな)
『支柱、網、球。ん。羽。塁、打棒。道具。ええと。何という名前なの』
「ふふ。これは、「手の平」よ」
『手の平』
「身体保護等の目的で、手の平の代わりに、使うようになった道具らしいからね」
「「手の平」ではければ、「櫂」とかね。まあ。競技用得物ね」
「ああ。競技用得物だ」
「まあ。個人所有しないような用品等は、幾らかあるようだから。大丈夫そうなのかな」
「ああ。実際に、競技に精通する者からすると、不足があるのかもしれないが」
「ええ。競技規則の類を、伝承している者が、居るのかどうか」
「そうね。調整された備品類を汚損する前に、保管分を確保するとして、私塾ごと、多重空間化するのか。体育倉庫だけか。ところで、他に行って置きたい所は、あるのかしら」
『塾舎の屋上』
『ふにゃ』
「ん。危険だから、一般的に、児童生徒は、侵入禁止ではないのか」
「まあ。範囲境界を用いる閉じた系とはいえ。錯覚が怖いですからね」
「とはいえ。危険個所なのなら。一応、見て置きたいのかな」
『うん』
シルディア一行は、塾舎併設体育館の外へと出る。
「ああ。境界で、内から外へ転落等しないようにされているね。ん。ということは、外から内に入る場合に、妨げはないのかな。まあ。外から侵入できるような者が、転落することは、気を抜き続けるのでもなければ、基本的にないのかな。転落防止策は、施されて」
「ああ。乗り出さないと越えられないくらいの柵が。あるな」
「恐らくあるだろう基部の部分を含めると、幾らかの高さなのでしょうね」
「それでは、一応、塾舎内部から、屋上に出られるのかを、見て見ましょうか。一応、屋上への避難専用階段等が、あるのでしょうからね。野外避難階段が繋がっているようだけれども。裏側から見ないと、余り良く見えないのかな」
「閉じた系において、空気等の循環は、関係ないですから。多少、隠せますからね」
「ん。野外避難階段の見た目を、気にするのか。まあ。行って見るか」
『うん』
『ふにゃ』
シルディア一行は、塾舎裏から、野外避難階段と屋上との繋がりを確認後、塾舎内部から、塾舎屋上を、目指す。
『ん。ここかな』
シルディア一行は、塾舎最上階に、短い階段、その先の扉を見付ける。
『ええ』
『ふにゃ』
「ん。一応、施錠できるように、なっているのかな。では、行こうかな」
『柵、後ろにも、柵』
「とはいえ。基部があるとはいえ。柵は、思ったより低いね」
「我々の身長で、そのように感じるのなら。そうなのだろうな」
「ええ。少し、景色等が見難くなるとはいえ。心理的負担軽減の方を、優先するのかな」
『ええ』
『ふにゃ』
(汚損可能かは別として、塾舎内にも多くの備品があるのなら。閉じた系ごと多重空間化してと。一応、元に戻せるよう、待機場所と同様、変更履歴の類が、残るようにしつつ)
「これで、どうだろうか」
『んしょ、んしょ、高い』
「年少者であったとして、「眷属」等は、容易に登れるだろうが、より高くは思えるか」
「ん。心理的負担を感じることになるものが、避けるかどうかは、別のことですからね」
「樹木等に、登るだけ登って降りられないということは、少なくないわよね。ということは、柵に昇らないよう連絡事項の類として、伝えることになるのでしょうね。一応、跳ね出しのような細工を施しておきましょうか。柵も、幾らか内側に向けて反るにして密に」
『跳ね出し、忍び返し、武者返し、鼠返し。ん。忍び』
「ん。忍びか。尾鰭が付いたような話ばかりで、実態としては、どうだったのだろうか」
「現世等においても、そのようだったのかな。名が表すように、忍ぶ者なのだとしたら」
『武者は』
「武芸に関わる者のことだ。我々とて、代表討伐者なのだから、騎士であり、武者だな」
『騎士、武者、格好良い』
『ふにゃ』
(しかし。跳ね出しで、妨げになるのなら。忍者には、尾鰭が付いているのだろう。それで、元気や血気が有り余って、無謀になった子ども達というのは、私のように、厄介か)
「……。ん。さて、ここでの宣伝用紹介資料映像を、撮影した後は、どうしようかしら」
『体育館で、遊ぶ』
「体育館ですか。ここからは、運動場等が、良く見えますね」
「ああ。初等中等迷宮や擬似迷宮の入り口に繋がる討伐者組合の施設を設置して、渡り廊下等で、繋がないといけないわね。ん。渡り廊下の類で繋ぐとなると、端という訳には」
「一応、精霊がいるのだから、気象再現等として、少し雨が降るようにすることは、あるのかもしれんが。まあ。内履きと外履きとを、分けるようなことは、ないのだろうから」
「屋根付きの渡り廊下は、それ程大切ではないね」
「塾舎の出入口は、数多くないとはいえ、複数あるのなら。一箇所だけ繋ぐというのは」
『討伐者活動は、この私塾の中心になる筈だから、大切』
『ふにゃ』
「ええ。そうね。討伐者として活動する迷宮等の利用者が多いことを、期待したいわね」
『目立つ所、塾舎の両隣』
「ああ。それは、目立つけれども。討伐者組合の施設等が、二つになってしまうわよね」
『ん。待機場所の間』
「それだと、正面から見た場合、塾舎が隠れることになるぞ」
「まあ。奥に進めば見えますから」
「そうよね。多少、隠してしまって、問題はないのかな。何度も来ることになるのなら」
「ああ。討伐者組合の施設が目立つ分には、問題はないか」
『真ん中、大きい』
「流石に、塾舎のことを考えて、高さの方は、考えるわよ」
(運動場の擬似芝部分を移して、体育館と対になるようには。擬似芝部分が真ん中というのは、流石に、打球等が飛ぶようなことを考えると、避けたいのかな。安全上、問題がないとはいえ。条件反射的に、何度も、回避行動を取ることには、なるのだろうからなあ。屋外は、生石灰等で線を引くとして。体育館は、学年次第かな。気にするのかどうかは)
「…………。転移所形式にするのなら。入り口は複数で、辿り着く場所は並んで、ひとつというようなことは、可能よね。討伐者等が集まり、迷宮等に繋がる仕様上、各討伐者組合は、閉じた系になっているのだから。とはいえ。半地下等にするのは、どうなのかな」
『半地下の部屋、恰好良い』
『ふにゃ』
「しかし。まあな。半地下階は、使用人の類を隔離しているように、見えなくはないが。今となっては、流石に、気にするような討伐者組合関係者等が、居ないのだろうからな」
「ええ。大丈夫でしょうね」
『半地下階、地下階、屋根裏部屋』
『ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ』
「子どもは、珍しい物を好むことも。地下迷宮等へと繋がるのなら。半地下というのは、それらしいわね。怪物等の一時隔離収容場所とはいえ。地下牢とは呼べないけれどもね」
『ふにゃ』
「ん。まあ。これで、塾舎の方が、表門等から、幾らか見えるように、なったのかしら」
『見える』
「塾舎への入場者は見えないが、そもそも、閉じた系で、入退場記録は取られるからな」
放課後用の施設らしく、シルディア一行は、遊んだり、塾舎内等に、危険物が残留していないかを調査したりした後に、央の国離宮へと向かった。
『ただいま』
『ふにゃ』
『おかえり』
『それでは。我々は、失礼します』
「ふふ。大丈夫よ。スゥインスやシルディアは、何時も、大丈夫なのだから」
『はい』
『ふにゃ』
「それで、私塾の準備は、どうなの」
「危険物残留等の調査を行いましたから。討伐者組合等の方で、重ねて、安全点検等の方を、行って貰えれば、供用の方を、開始することが、可能になるのかな。楽器や図書は、欠けていますけれども。まあ。楽器の方は、個人所有の私物で、対応して貰えれば。各学校間を、映像音声通信で結ぶことで、文化系の活動は、比較的共にし易いでしょうから」
「体育系の活動は、接触等がある競技は、人形遠隔操作端末等でも、姿勢の関係で、難しいわよね。迷宮等探索における討伐のように、範囲境界の利用を基本としないのならね」
「ん。まあ。この辺獄・冥界において、広まっている競技ではないのなら。人形遠隔操作端末や範囲境界の利用を、基本としても良さそうですが。難しいのかもしれませんよね」
範囲境界により身体保護を行えば。多重空間化等と同様に、接触を回避し、すれ違うようなことが、場合により、可能となる。とはいえ、反則とまでは言えない程の接触は、運動競技において、作戦上、競技上、何かしら、大切な面が、あるのかもしれないのなら。
「重ねての危険物残留等の調査は、私達が、担いましょうね。予算執行の方は出来ないのなら。まあ。範囲境界を用いての活動が欠かせないのなら。本来はある程度の危険が前提である迷宮等において、安全対策が徹底されることと同様に、大丈夫とは思うけれども」
「ええ。ありがとうございます」
「シルディア達も、迷宮等探索を行い、大蔵等へ繰入して、歳入確保の一角を担うのよ」
「年少労働は、避けることなのでは」
「そうね。皇載子の成人年齢だけを、前倒しにしようかしら。そうしたら、摂政載子ね」
「平に御容赦下さい。迷宮探索等、頑張らせていただきます」
「ふふ。そうね。白竜がシルディアの次は、白龍のスゥインスよ」
「黒龍のアハトゥスは」
「スゥインス。アハトゥスは、一応、私の手伝いをしているのよ」
「シルディアのお手伝いする」
「ん。シルディアが婚姻できなかったら。ヴェルレア達と一緒に、手伝ってあげようね」
「うん」
『ええ。まあ』
『ふにゃ』
(そもそも。現世等で居たのか。居たとして、生まれているのか。生まれていたとして、四千八百万人強、二千四百万人強の中から、見付けるようなことが、出来るのだろうか)
『生れたものの殆どは、かつて現世等で生きていたかどうかに関わらず。産まれたものとは異なり、生れて直ぐに、一時的な場合があるとはいえ、会話等が可能となる。そして、生まれるものが、生まれるような場所は、保護のために、周囲にある程度の人々が居るような場所となっている。辺獄・冥界においては、現世等における血統をなぞり繋ぐようなことのためになのか、両親の辺獄・冥界における死亡等を切っ掛けとするように、生まれることがあると、思われているのだけれども。残存する死因に繋がった危難等を、避けるための場合だけではなく、両親の死没地と関係のない場所で、生まれることがあるよう』
この世界が、辺獄・冥界として、(現世等における)両親なく、生まれる者が居ることから。五箇国聚成帝国構成国において、協会による乳幼児保護は、欠くことが出来ない。
「図書の方は、転移所で結び。蔵書印印影等を登録し、持ち出しを防止出来れと思うのですが。蔵書印印影や蔵書印用顔料が変遷等を記録管理している図書館となると。子ども向けの図書が、豊富にあるのかどうか。年少者による汚損等を考慮すると、書籍等の純雑質再現により防止されている場所、帝王立図書館が、好ましいのかもしれませんけれども」
範囲境界に、各種蔵書印印影や蔵書印用顔料を登録すれば、境界の通過等を、防止可能となる。物化因子のように、指定し切れない程の多様性が、随時変質するのでなければ。
「ええ。まあ。そうね。開架式で、子ども向け書籍が、あるような所では、ないわよね」
帝王立図書館に、帝王達が、幼少期に、読んでいた書籍等が保管されていたとしても。閉架式となっていて、貸出請求の方は、受け付けていないのだろうから。加えて、書籍等の製作年的に、時世に合わない可能性が高い。児童書等において、時世への配慮は大切。
「はい。ですから。七、八、九年生に限る等、年齢制限の方を設けることで、対処することになるとは、思うのですが。閉じた系は、閉じた系と繋ぐことが、好ましいようにも」
「仮想立体映像や人形遠隔操作端末での立ち入る処理が、難しくて、困難になるわよね」
「そうなのです。閉じた系に立ち入ることの出来る転移所は、少数に限定したいですし。様々な方式を導入し、広く、塾生に、塾舎等施設設備を、利用して貰いたいですからね」
「まあ。比較的新しい図書館なのなら。蔵書印等の管理が、しっかりとしているのかな」
「そうですね。場合によっては、お願いしますね」
「ええ。そうね。まあ。私や貴女用の帝王立図書館という訳には、行かないけれどもね」
『ただいま』
『おかえり』
『ふにゃ』
(アハトゥスは、出掛けていたのなら。シルンサス一人で、大丈夫ではなかったのでは)
「子ども達。資料映像の評判は、良いぞ」
「塾生が、百数十人規模で、集まるかもしれないね」
『百数十人規模』
『ふにゃ』
「まあ。協会学校校舎の類は、避難用施設としての性格があるのなら。収容数的には、問題ないのだけれどもね。ん。とはいえ。教科書等の参考書用資料はあるにしても、講師等を欠いていて。家庭教師等の代わりには、成りえないことを、伝えているのでしょうね」
(集落等は、目視対象指定境界を備えるとしても。怪物等、精霊等から見えなくすると。流石に、属性要素循環において、何か不具合が生じるのだろうから。保護は、難しいと)
『集落や特殊限定区域街道は、(多数であっても無数ではない協力者の有力な精霊を含めた)監視員の目視で対象の怪物等を個別指定調整する対妖仝獣用境界に覆われていることから、比較的安全なだけなのなら。本来、集落間の旅というのは、容易なことではない』
対怪物等用境界は、境界とはいえ、境界面表面だけが分離に関わるのではないのだけれども。怪物等に、入り組んだ都市部に侵入されて、見失った場合は、避難が大切となる。
『大丈夫だよ。シルディア』
「本当なのかしら」
『シルディアは、シルンサスにそっくりだから』
「この師弟。似過ぎではないのか」
「一応、遠い親戚では、あるからね。ストゥングは」
『姪のフエイニスの方が、近いよ』
「ああ。これで、一応、旧勇者一党の剣聖だからな。アハトゥスは」
(スゥインス。我々にとっては、父親なのだが。ん。一代貴族を除き、貴族家は、二百八十八家。貴族領は、百四十四領。二十年交代制。精霊化等が比較的進んだ貴族家には、子どもがうまれ難く、現世等における関係性から政略結婚の類が困難で、紋章院総裁等を担い、貴族家の婚姻を掌握する「眷属」側によっても、禁止されているとはいえ。親類縁者から養子を迎えることは多く。その場合にも、紋章は欠かせないとしても。そのようなことと、男性の場合は、貴族家等において教育することが、大切な事柄が比較的多くなることからか。機密事項が流出する可能性からか。女性の養子が一般的であり。形式上離縁したような養子の場合まで、政略結婚の類が、「眷属」側によって、禁止されている訳ではないのなら。貴族家の子女は、思いの外多い。子ども・未成年者、零歳から十七歳迄の内で、六歳半ばから十五歳半ば、約半数。貴族家における息女の人数は、平均して三人程度で、その内、女性は養女を含めて二人程度。二百八十八人中百数十人となると、五割から六割なのかな。ん。多すぎる。やはり、家庭教師等の代わりを、期待されているのでは)
五箇国聚成帝国における、領地経営では。各領地の税収格差を、需要に基づく要求申請から。所謂重要拠点として確保されている帝国直轄領、皇王室直轄領等税収、国税税収等からの補助金等で、補い調整する形を取り。聚成帝国という性質上、星外であっても、異世界でもなければ、外国は存在せず。貴族家間協調により、重商主義の類は成り立たず。
たとえ、所謂大領主であっても、真っ当な領地経営を行う以上。非有爵期や分家による商家経営等が、順調であったとしても。終わらない投資と増大し続ける維持管理費のための繰入れで、富貴を両立することは。郡県的家産職員制が宗室とて、困難となっている。
「ん。ストゥング、アハトゥス」
『どうしたのかな。シルディア』
「新設私塾宣伝用紹介映像資料が、完成したので。この完成版が配付を、お願いします」
「お願いします」
『お願い致します』
『ふにゃ』
『ああ。そうだね』
「お願いされたわね。もう少し、待っていれば良かったのかどうか。希望者が多いから」
「シルンサス。非対称性遠隔教育を、行いたいのですが。複数協会学校が教職員方の協力を、取り付けて貰って、大丈夫でしょうか。児童生徒方の姿や声等は、拾わないように」
「ああ。協会関係者は、両協皇の要望を聞き入れない訳には、行かないだろうからね。私が話を通す等するのであれば、アハトゥス達とは異なり。シルディア達の要望とは思われないだろうから。シルディアから言われるよりは、未だ、断り易いのかな。そうして、通信等は、「眷属」等の力によるのだから。予算執行することは、ないのかな。協会と密接な関わりのない児童生徒達が、映り込むようなことは、ないのであれば。出来るわよね」
「ええ。授業を担当する教員方と教室の内装等とを登録して、録画や通信等を行うようにするのなら。設定により、拾うものことは限定されて、映像の方は補正されますからね」
「ん。そのようなことが出来るのなら。宣伝用紹介映像資料作成時に、我々が、映り過ぎないように、出来たのではないのか」
「ええ。そうだね。ん。編集を加えて、調整の方を、しようか」
「ああ。三体が、映り過ぎているからな」
「ええ。そうですね。少し、調整が、大切かもしれませんね」
「可愛いから。大丈夫だと、思うのだけれども」
「私塾と可愛いとは、関係なかろうよ」
「ええ」
『ふにゃ』
『ということは。完成版の配付は、また、後日か』
「そうなりますね。編集等には、多少時間が、掛かりそうですから。何かしらの拘りで」
「シルディアが、スゥインス達を、撮影し過ぎているからな。場面分け、大変だろうな」
「結果的に、多くのものことが、映り込むから。何かしら、良さそうなのだけれどもね」
「別の映像から、その場の情景等を補えるかを、試すのには、良い機会なのでしょうね」
「とはいえ。そのようなこと。今、思い至ったのだろう」
「ええ。まあ。そうなのだけれども」
『ふにゃあ』
「編集前に、一度、見ておこうかしら。スゥインス。可愛いのでしょう」
「ええ。可愛いです」
「シルディアちゃんは、余り映っては、居なさそうだけれども」
「まあ。多くの場面で、シルディア視点で、撮影していたからな。声は別として」
「まあ。我々が、加えて、撮影するものことは、余りありませんでしたから」
「ああ。そのようなところの要領は、いいからな。比較的。撮影からの危機回避か何か」
『ふにゃ』
「非対称性遠隔教育については、触れなくて、良いの」
「ええ。保険の類だから。期待させる訳にはいかないから。触れられないのよ」
「うん。一杯、見られれば、学びになるね」
「ええ。授業の進行度等は、各協会学校による違いは、余りないだろうけれども。各教科の時間割は、様々だろうから。どの時限でも、望む授業を視聴することが、出来ればね」
『ふにゃ』
「ん。ストゥング、アハトゥス」
『どうしたのかな。シルディア』
「入塾希望者やその保護者等が、通塾方法として、没入型仮想現実、人形遠隔操作端末、範囲境界利用等から、どのような形式を希望しているのかを、少し尋ねて見てください」
『ああ。そうだね。わかった』
「ああ。授業・講義についての期待は、期待されないように、尋ねなくて、大丈夫です」
『ええ。すまない』
「(アハトゥスは、料理の方を、見に行ってください)」
「(ああ)」
「そうだな」
『ん。獏達と翼猫達に、果物。鳥達、兎達は、あっちで、たぶん、もう、食べているよ』
「ふふ。魚等、果物等は、何が良いかしら」
『ふにゃ』
『鰊、鱈。林檎、甘蕉、蜜柑、苺』
獏精霊とはいえ。銅鉄ばかりを、食べる訳ではない。翼猫達は、猫なのだけれども。何故か問題なく、蜜柑等を食べることが、出来ると。シルンサスが、幼少期に試している。
「ふふ。水草は、流石に、財政専売所における報酬交換に、含まれては、いないのかな」
『ふにゃ』
「シルディア達も、果物の類は、好きよね」
『ええ』
「隠し味の類としては、余り好みませんが」
「栄養があって、健康に良さそうだけれども。味に深みが出るし」
「ん。少しなのなら、そうなのかもしれませんけれども。地域的なことなのでしょうか」
「南の国では、良さそうね」
「ああ。南の国といっても、広くて、地域によるのでしょうね」
「そう。アハトゥスは、大丈夫そうなのだけれども」
「一応、世代が異なりますから」
「そうね。娘のシルディアでも、好まないくらいなのなら」
「(これは。アハトゥスが、後で、美味しく頂きましただな)」
「(ん。一応、似たような料理を、停止保管しているのでしょうから。間に合うかと)」
文明水準、文化水準等の関係からか。一般的な食事というのは、種類が限られてくる。
「(食事の用意が出来たよ)。スゥインス達は、果物や魚等を選ぶことが、出来たの」
『うん。獏達は、林檎と甘蕉。翼猫達は、林檎と鰊。私達は、林檎』
『ふにゃ』
「苺は無くて、大丈夫」
『今日は、大丈夫』
果物等を、食卓に並べるには、迷宮等探索が、重要になる。
『諮問調査書で、希望者数等、取って来た。完成版の評判は、良かったよ』
『それは、良かった』
『ふにゃ』
「百八十六人。対象者の六割四分強程とは。想像よりかなり、多いのかな。とはいえ。各学年。相方中高位精霊を含めたとして、六が倍数の類ではないのだろうから。各学年混成で、一党を組むことになる場合が、あるのだろうね。非対称性遠隔教育。大切なのかも」
「人形遠隔操作端末等を、用いない立体映像投影型で、迷宮等探索に、参加しない者は」
「ああ。流石に、居ないようなのかな」
「一、二年生のような年少者においても、ですか」
「ああ。そのようだな。一応、今は、対魔王大戦期でもないのにな」
「表向き、討伐騎士等育成課程ですからね」
『ふにゃ』
(人形遠隔操作端末は、年少者を中心に。技術というか「眷属」が力への興味なのかな)
「範囲境界、人形遠隔操作端末だからな。一応、貴族家等において、精神的な面は、幼少期から鍛えられるからな。頭胴長が一丈を超えるような獣等を、見ていないだけなのか」
『貴族家の子なのに、精霊化等が進んで、大丈夫なのかな』
「まあ。半数の六割四分強程とはいえ。少ない数ではありませんね。天使は、特殊とはいえ精霊の一種なのなら。綺麗な場所において、人間が天使に至ることがあるように。霊仝人化を、好ましく思っているのかな。人類史の殆どは、旧石器時代以前なのなら。現世等の後に、辺獄・冥界に生まれたとしても。煉獄等に辿り着けそうにない身では、次の世界を、恐れるのかな。絶対熱すら問題とならない「眷属」等の力とは、比べられないにしても。この辺獄・冥界等より、文明水準の高い世界には、大破局に繋がるような兵器が出てくるのなら。大破局を繰り返さないためには、この世界程度の文明水準が、様々な面で、維持されるのかもしれないのだから。人類が、恒星の寿命が尽き、長く宇宙を流離い続けることになるような時代が、来るのかは別として。穏やかな時代は、少なすぎるのかな」
『人間を嫌いながら。人間の器が、精霊・天使等へと近づかぬよう。堕天使等が、直接的に人間を損なうことが出来ない以上に。霊仝人等は、絶対的な防御を備えることが出来るとしても、他を直接的物理的に害することを厭うような気質を、ある程度は備えていることになるのかな。人間は変わり続けるものとはいえ、結果的に、大きな変化を遂げることになるようなのにも、拘わらず。経験上、変化の過程において、違和感に気が付くことが難しいという恐ろしさがあるのは。辺獄・冥界にあって、比較的お人好しの類が多いとはいえ、そのような傾向がなければ、霊仝人等に至ることが出来ないのかは、わからない』
『そうなのなら。世代を重ねることを大切する貴族家等であっても。子ども達には、霊仝人等に、至って貰いたいのかな』
「末子相続にした所で、婚姻の幅が広がるとは、限らないし。この世界で、婚姻相手を見付けられないにしても。現世等の系譜等をなぞる様に、子は生まれ。協会の保護がある」
「結果的に一代先を知らないのも、二代先が見えないのも。どちらも、不安なのならね」
「政略結婚目的の養女等は少なくて。長く一族を見守る霊仝人等に、居てほしいのかな」
「何れ、寂しさ等から、龍の世界へ、行くのだとしてもな」
『うん』
『ふにゃ』
「非対称性遠隔教育を行うための、複数協会学校が教職員の協力の方を、取り付けよう」
「シルンサス。お願いします。人形遠隔操作端末の姿容等に関する情報はと、ん。ストゥング、アハトゥス。姿容に関する情報を一時的に記録する装置の方を、気密容器、操作用筐体等と共に、対象者等へ、配付をお願いします」
『ああ。わかったよ』
(非対称性遠隔教育に関することは、視聴覚室等に纏めておくのかな。仮に思想面等の問題が僅かにはあったとして、塾生の側から触れに行くのだから、一応、大丈夫なのかな。場合によっては、視聴覚室等経由で、複数普通教室等で視聴可能に、することになると。後は、討伐者組合支分支所への人員配置。予算執行が絡むからな。利用者数の少ない支分支所と転移網で結ぶことで、対応すれば大丈夫。図書館を含め、外部と繋がって居るな)
協皇立私塾供用準備は、最終段階へと至った。
(新設私塾の供用開始は、新年度一学期から数日遅れか。まあ。地域によって、数日くらいの違いはあるのなら。大丈夫なのかな。一応、最後に開始することが好ましいのなら)
「……。スゥインス。新設私塾を、そろそろ、供用開始できそうだよ」
「ん。そうだね。もう、私塾で、遊んでいるから。余り気にしていなかった」
『ふにゃあ』
「ええ。広く新塾生による利用が開始されたとしても。まあ。我々は、基本的に、獏達、翼猫達と、六体とで、行動することを続けるのだろうからね。余り、変わらないのかな」
「うん」
『ふにゃ』
(一応、管理者の類として、秩序の維持のために、言語補正の設定を変更することは、難しいのかな。そのようなことで、塾生達とは、多少距離を置くことになるのだとしても)
「ああ。制服は、ないの」
「服ではないけれども。猫耳の取り外しが可能な黄色い帽子なのかな」
「ん。どうして、猫耳を外すことがあるの」
「ふふ。五、六年生当たりから、気になる塾生が、出てきそうだからね。色の方も、学年毎に、多少変えた方が良いのかもしれないのかな。一年毎という程には、厳密ではなく」
「黄色可愛いけれども。白も好き」
『ふにゃ』
「とはいえ。我々二体は、白尽くめだからね」
「うん。一つくらいは、黄色の猫耳帽子」
「まあ。猫耳多重空間鞄は、黒茶だけれどもね。帽子より、服等から遠いのかな」
「うん。猫耳多重空間鞄は、獏達が入る所だからね」
「ふふ。そうね」
『ふにゃあ』
「本日。貴女方、王侯子女等に、第二の居場所としての私塾を、供用開始することが出来て、嬉しいです。基本的に、教科書等は配付するものの、教職員を置かず、家庭において教育を受けた者達にとっての放課後を、提供することに成ります。とはいえ、協皇立私塾は、教育機関の一種として、一部分社会を形成することから。自律権を保持し、強行規定等に抵触しないところにおいて、規則制定権を有します。とはいえ、規則を遵守させるための強制力を欠くため、非違行為等の問題行動については、幾らか直接的に、保護者等へと連絡が行くことになることから。他者ことを慮った行動を、心掛けることを、期待します。ということで、討伐者組合職員の方は、私塾の関係者ではないことから。討伐者組合の方では、くれぐれも問題を起こさないように。一年から六年生は、図書室から、提携先の図書館に行くためには、各提携先図書館の規定に基づいて、利用者登録を行うように」
「協皇台下。有難うございました。その他は、個々人で、便覧等を御参照下さいね」
「後任協皇台下、府司協長座下は、代輔総司協長猊下同様、猊下と読み替えるようにね」
『シルディア猊下ちゃん』
「猊座の座、高殿からの台より、サン猊が猊の方が、可愛いよね」
『ふにゃあ』
入塾式は、問題なく、閉式となる。
閉じた系の新設私塾においては、範囲境界を用いることから。教職員等・大人を置かずとも。安全確保上の問題は殆どない。迷宮等探索においては、少人数による密室の類が、形成されることが許容され。初等中等迷宮において、年少者のみでの探索が出来るくらいに。安全過ぎて、場合により、時効の期間計算から除かれる程なのなら。また。新設私塾内外での事項に関わる新設私塾外における争いに対処するのは、警査の役割なのだから。
仮に「眷属」等が、安全確保上の問題となり得るとして。郡県的家産職員制において、共有空間同様に、五箇国聚成帝国に属する閉じた系においても、争訟の当事者には成り得ず。「眷属」等への訴追が可能な宗正は、紋章院総裁同様、両協皇中心に、担っている。
『非対称性遠隔教育の紹介は、今回も、しなくて良かったの』
「ええ。塾生便覧の方で、触れてあるのなら。学習意欲があれば、気が付くでしょうね」
「年少者が、読めなかったら、どうするんだ」
「流石に、私塾に通塾させるくらいだから。書きは未だしも、読み位は、教えるのでは」
「貴族家として存続している以上、改易等されていませんからね」
「六歳までに、覚えられない場合があるのは」
「ん。幼稚園の類は珍しいとはいえ。協会学校に、五歳前後の者が、通うことはあるわ」
「この新設私塾は」
「今年度中に、七歳となる六歳以上が対象ね。ストゥングやアハトゥスが、集めた資料からすると、一応、例外的に受け入れてしまったような子は、居ないことになっているわ。子どもが、読めないことが、わかっているのなら。善良な当主等は、忘れて、困らないように、何度も、丁寧に、読み聞かせるでしょうね。ん。それでも、言い出せないことは」
「百八十六名とはいえ。一応、普通教室の方に、座席を割り当てているのなら。様子を見て回るようなことは、それ程、難しくないのかもしれない。動揺等は、口には出さなくとも、態度には現れるのだろうからな。座席に寄り付かないのなら。その時点で問題がな」
「ん。どこにでも行けても、普通教室の座席や小型保管庫は、拠点として、大切なのよ」
『皆。大丈夫なのかな』
『ふにゃ』
「ん。まあ。一日、数日間、体験して貰って、諮問調査の方を、取ることに成るのかな」
『多くの塾生の考えが集まって、良く出来たら、良いね』
『ええ』
『ふにゃ』
「体育館同様の、校庭・運動場、屋上の多重空間化。百八十六人とはいえ。体育館三施設と運動場で、足りないのかしら。まあ。体育館同様、半ば閉じた系とはいえ。優位性・優先権の確保は、鳥達、兎達、一体で足りるとはいえ。ん。視聴覚室や放送室経由で、非対称性遠隔教育を、複数普通教室へと、放送できることに、気が付く者が居たのかな。普通教室が方の画面等は、常時、表示されてはいないのにね。しかし。このようなことに、気が向くくらいの塾生なのなら。非対称性遠隔教育等を、視聴するような者なのだろうか」
「まあ。あれだろう。教職員等を担うことに、興味関心が、あるのかもしれんな」
「ふふ。他の塾生達のことを、慮ったのかもしれませんね」
『ん。隠されているようなことは、気になるよね』
『ふにゃ』
討伐者組合各支所等に繋がる迷宮等の優位性・優先権を、一党ごとに一時的多重空間が形成される仕様であって、確保するのに、一人で足りるのなら。私塾の閉じた系等においても、同様となる。共有空間・世界をも分け得る範囲境界とはいえ、遮断するものことや内外の方向性は、選択することができ。対堕天使出没等の緊急時において、即応できるように、「眷属」等、特定の対象者らにおいては、外部との通信を可能とする場合がある。
『範囲境界利用の徹底から、共有空間のように、星の環境恒常性における自浄化作用を、精霊達に維持して貰うことのない閉じた系の一種においてだからこそ。迷宮等同様に、多重空間化等、派手な空間利用が可能と成るということは。一般臣民方にも伝わって居る』
(ん。塾生方と関りを持つ場面が多少はあったとして、鳥達や兎達は、大丈夫なのかな)
『鳥達、兎達は、大丈夫なのかな』
「ああ。鳥達、兎達だけで、閉じた系に残ることは、あっても。大勢人が居た後なのね」
「ああ。特に、ピュルヴュやジャプッロはな」
「明日等も、塾生方が、訪れるのかを。我々と同じように、気にしているようなことが」
「流石に、「眷属」等の号令で始まったような新規事業なのだから。数日で、通塾をやめるという選択というのは、年少者であっても、立場上、中々に、難しいのだけれどもね」
『通塾する振りをすれば、「眷属」等ではない保護者には、わからないのかもしれない』
「そうだな。両親等が、忙しさから、直接、子ども等の様子を詳しく、確認できないと」
「一般的に好ましくはないと思われることについて、保護者らに、相談するというのは」
『難しいから』
『ふにゃあ』
「ええ。最初から、最終的な選択を前にした、準備段階と捉える者は、幾らか居るかもしれないのかな。ストゥングやアハトゥスへの情誼が類から。とはいえ、子どもが大切と」
『ん。心配になって来た』
「塾生方からの要望は、大切にしないとね」
『ええ』
『ふにゃ』
「とはいえ。室内では穏やかにするように言われている子どもでも、屋外となると、どうなのか。そのように考えると、年少者への上級生が目というのは、あって貰いたいわね」
「討伐者活動における一党を、異なる学年を含めて構成することに、成るのならば。三学年ごとの分け方に、合致しない者は、多少は出てくるのだから。大丈夫なのではないか」
「本来居ない筈の少数者は、多少立場が不安定になる場合が、あるとはいえ。年長者は、危難者保護活動等が大切になる混乱時において。年少者には、頼もしく思われるのかな」
『そうなのなら。大丈夫そうだね』
『ふにゃ』
(楽器に関わる音楽室における画像音声通信網の構築への要望は、なしか。ん。教典を殆ど欠くことから、この辺獄・冥界においては、典礼音楽は発展せず。協会が、典礼音楽家を、信徒教化等の目的から、保護・養成することがないのなら。協会学校に、備品等として、楽器が揃えられているようなことはないから。期待されていないのかな。楽器を嗜むような貴族家の子女は、私塾に集まって居るのだろうから。新設私塾が図書室に書籍が収蔵されてはいないけれども。読書会目的での要望は、あり得るから。通知して見るのも。とはいえ。私語が許容されるような閲覧場所の類が、設置されているような図書室はね)
『スゥインス、シルディア達。どうだった』
「新設私塾の方、供用が開始できました。今日のところは、大きな問題はなさそうです」
『ん。大丈夫』
『ええ。そのように』
『ふにゃ』
『それは、頑張ったね』
「アハトゥス、シルンサス。ご協力、ありがとうございます」
「保護者からの評判は、今のところ良さそうだね。宣伝した甲斐があるよ」
「ふふ。アハトゥス。私は、その場の勢いで如何にかなるような貴族家当主等ではなく、真面目な協会職員の部分的な協力を、取り付けたのよ。ねえ。スゥインス、シルディア」
新設私塾は、旧協会学校の施設を利用している、協会代表者・協皇が設置した組織であることから。協会職員組織側の協力や関与を一部に留めるというのは、難しい面がある。
「ええ。シルンサスに担って貰ったのは、最も困難なことだと思います。とはいえ、短時間で、数多くの貴族家と情報を共有するというのは、幾らか難しいことなのでしょうね」
「あれは、緊急時用の連絡網が試験運用を、一応、事前通知して、行ったのよ。一応ね」
「それは、通知内容の方を、把握していなかった貴族家当主方は、非常に驚いたのでは」
「まあ。定期的な試験運用日に、近かったというのはあるのなら。幾らかは、大丈夫よ」
「ん。非常時用なのに、定期的試験運用が周期的すぎては、緊張感に欠けて来ますから」
『そうなの』
アハトゥス、シルンサスに対しては、子ども達の皆が「眷属」とはいえ。皇帝、協皇を含む班位から、立場上、一応、シルディアを中心に、応対することになるのだけれども。しかし、スゥインスなら。誰にであっても、話を向けたとして、許されるようなのかな。
「ええ。とはいえ。定期的に、繰り返すことで、運用手順等に習熟することは、大切ね」
『ふにゃ』
「緊急時には、通常とは異なる何かしらの支障が、あるのかもしれないがな。とはいえ、そのような状況は刻々と、好ましくはない方向に進むことが多いのならば。大切なことを押さえつつ幾らか素早く行動するための手順というのは、やはり、大切になるようだな」
「様々な場合分けをするにしても、基本的なかたちは、欠かせず、大切になりますから」
『んん』
『ふにゃ』
『ん。大丈夫』
堕天使等が、表立って派手な動きをせず暗中飛躍するようなことは、あり得るのなら。非常時に至っては、緊急時用連絡網を利用して効果的な状況にないということも、ない。
(ん。アハトゥスとシルンサスとが、一緒に行動していたようなのなら。今日の夕食は、大丈夫そうね。フエイニスも、ヴェルレアも、警戒段階の方を下げているようなのかな)
夕食後、シルディア一行は、無事に、それぞれ帰宅することが出来た。
「ふふ。スゥインス。今日は、どうだったかな」
「ん。緊張して、余り遊べなかったのかな」
『ふにゃ』
「ええ。そろそろ、迷宮等探索の方を、塾生方に先立って集中的に行うことに、成るのだからね。新設私塾供用について、様子を見ることが大切な。今の内に、遊んで置こうね」
「うん。でも、一度は、迷宮等の方に、行って置きたいのかな」
「ええ。そうしようね」
『ふにゃ』
(開門時間は、朝八時か。転移所の設定で、自動的に開放されるとはいえ。遅刻はない)
「レイゾユネ、マルナレネ。ピュルヴュ、ジャプッロ。大丈夫かな」
「明日、皆が、早く、通塾して来ると良いね。提供されるのは、放課後中心とはいえね」
「ん。貴族家の子女なのなら、大丈夫。運動・訓練を、大切にする筈だから」
『ふにゃ』
(ええ。そうして、帯剣貴族家の子ども達は、大人しくは、していないのだろうからね。要望か。一代貴族の子女はどうなのかな。王侯の子女だけで、百八十六名とはいえ。ん。まあ。一代貴族家の子女は、帯剣貴族家の子女とは異なり。一般討伐者との関係性において、問題は少ないのだろうから、大丈夫なのかな。塾生との関係性においては、制限世襲の関係から、問題に成らず。ん。ストゥングやアハトゥスを通じての要望次第なのかな。環境的に場合によっては、討伐者を目指し易く。貴族家の遠縁等で、精霊化度の面から、向いているのか。一般討伐者よりも苦とはせずに、討伐を続けること等が、出来たのか)
一代貴族位の授爵は、報酬総額の多い討伐者を、騎士化することにより。特殊税率や上限額設定を適用し、報酬総額を圧縮する面があるのなら。子女等に、討伐者としての目覚ましい活躍を、望むのかはわからない。とはいえ、終身禄があることから、年齢次第で、引退が可能と成っている。「眷属」等においては、手許金の類があるとはいえ。手を付けないことに成っているのなら。より高率な特殊税率が、適用されるだけと、成っている。(一代貴族側からすると、「眷属」とは、幾らか距離を置きたいのかもしれないのなら)
『開門と。おはよう。鳥達、兎達。ん。獏達、翼猫達、夢魔等の方は、大丈夫なのかな』
『ふにゃ』
『ふにゃ』
シルディア一行は、鳥達、兎達を呼び。鳥達、兎達は、それに答える。開門時に、入場する塾生は、幾らか居て。シルディアは安心して、鳥達、兎達の様子を、見られている。
(まあ。新設の私塾、後数日は、このような光景が繰り返されなければ、鳥達、兎達は、安心できないのかもしれないけれどもね。鳥達、兎達が注目されているのか。獏達、翼猫達が注目されているのか。可愛らしいルアンサス、スゥインスが、注目されているのか)
通塾の妨げにならないように、シルディア一行は、少し、場所を移動する。
(ん。流石に、討伐者組合の方に直接向かうような塾生は、未だ多くはないのかな。所属学級が普通教育の座席や保管庫が、一応の拠点だとしても。とはいえ、早々に、討伐者活動を開始するような者達なのなら。近い学年・学級で集まるのかな。一党の人員構成に慎重になるかどうかは、別として。それでも、新設私塾で一年目なのなら。迷宮等探索に積極的な者達が、入塾前に、一党を形成しているようなことも、年齢次第では、あり得る。ん。来年度の一年生からは、編制の選択肢が増える機会として、期待されるのかどうか)
「ん。鳥達、兎達は、迷宮探索の方を、もう開始したのかな」
『ふにゃ』
『流石、格好良い』
「支度金の方は、大丈夫そうなのかな」
『ふにゃ』
『凄い、賢い』
(代表討伐騎士団に準じて、武具の方は、供与されるのなら。水薬様錬金薬を購入するようなことは、ないからな。近接戦闘における身の熟しから、直撃を受けるようなことは、少ないのだろうし。ん。我々の周辺には、水薬様錬金薬を試せるものが、居ないのかな)
「……。ルアンサス、スゥインス。そろそろ、一度、所属学級が教室へと、向かおうね」
『うん』
『ええ』
『ふにゃ』
シルディアの所属は、一年三組となっている。「眷属」を除く、総数百八十六名の塾生では、各学年の人数に、多少の違いがあるとはいえ。二学級に、及ぶことはないのかな。
(我々「眷属」等が、座席に寄ることの習慣化を、塾生方に見せるのが、大切であり。猫耳多重空間鞄に直せば済む黄色い猫耳帽子を小型保管庫に収納し、帰りにも寄ることを示すことで、座席等普通教室内に手紙等を置くことで、要望を伝え易くすることが、大切)
「……。ふふ。ルアンサス、スゥインス。黄色い猫耳帽子は、忘れずに、取に戻ろうね」
『うん』
『ふにゃ』
黄色い猫耳帽子を被り猫耳頭巾は垂らした状態での戦闘が、今後のため、訓練として選択肢になっても。基本的ながら新しい環境での迷宮等探索で、行うようなことではない。
「アッヒュル。武具は、多重空間鞄の方に、入れてきたのか」
『うん。大丈夫』
『ふにゃ』
「まあ。アッヒュルは、相方達が。スゥインスは、シルディアも、確認しているのなら」
「そうか。そうだな。私も、もう少し早く、アッヒュルに、問うこととしよう」
『大丈夫。迷宮等以外で、武具を出すようなことはないから。忘れないよ』
『ふにゃ』
「一応、後衛とはいえ、近接戦闘の訓練は、欠かすなよ。ルアンサスは、前衛だろうに」
「ん。ストゥングも、孫には厳しく言わないのならね。まあ。迷宮等探索の方が、報酬額や大蔵への繰入額等から、活動の程度を推測可能というのは、あるのだろうけれどもね」
「ルアディアは自身の経験から、強く言うのは、避けるでしょうから」
「アハトゥス以上に、戦い続けるシルディアやフエイニスちゃんが、特殊なだけだよね」
「眷属」等は、一般臣民とは異なり。迷宮探索等競技規定に則らないのなら。武具以上に、素手や器の方が、単純強固さから、対怪物等、対堕天使等において、強力であり。物化精霊質製の武具を、拠点討伐者組合支分支所等に、保管する制限は、課されていない。
「様々な物事で大切と思われる。認識・判断・行動における認識・判断が段階の才に乏しいのなら。訓練等を含めた経験を積み続け、判断力を補い、行動を磨くしかあるまいよ」
『ええ』
『ふにゃ』
フエイニスの近接戦闘形式の類は、翼猫に近いようとはいえ。生まれながら比較的身の熟しに優れる戦闘者たる翼猫達以上に、討伐経験等を積むことが、大切になるのだろう。
アハトゥスは、幼少期から後の旧勇者一党構成員の中において重立ち、才に恵まれているように見えて。その実、レンドロンやシルンサス等、後の旧勇者一党構成員との出会いに恵まれ、訓練等との相性が良かった事によるそうなのだから。幼少期の成長が、比較的早かったとはいえ。出会いに恵まれなかったのなら。早々に、頭打ちとなっていたよう。
(ん。フエイニスは、叔父アハトゥスに似て。我々姉妹は、母シルンサスに似たのかな)
比較的運動能力等に優れていたとして、あらゆる競技に秀でることは、「眷属」等の体質は別として、難しく。それらが、目指すことへ大切な資質と一致するとは、限らない。
(まあ。認識が怪物等討伐専用という程ではなくとも、高い行動能力には繋がるわよね)
シルディア一党構成員は、役割・技能系統において、小さく前衛・後衛二人一組三名ずつの六名編制と、成っており。フエイニスが前衛、長剣装備の剣聖・武僧。アッヒュルが後衛、複合槍装備の賢者・武僧。ルアンサスが前衛、長剣装備の聖騎士・武僧。スゥインスが後衛、複合槍装備の賢者・魔術師。ヴェルレアが前衛、長剣装備の聖騎士・武僧。シルディアが後衛、複合槍装備の聖女(女性勇者代替、聖者)・錬金術士と、成っている。
『役割、技能系統における資源要素の節約等の制約から。防御力、回復能力に優れ様々な武器種に対応する武僧でも、長剣装備制限が掛かるとはいえ。剣士、剣聖、聖騎士とでは長剣可能が優先される。複合槍は、短剣と棒・杖とを、柄を柄より短い穂袋とすることで刃渡りを一寸延長し、組み合わせた最長二尺三寸の穂先を持つ槍様得物と、成っている。また近接戦闘能力が低い設定の賢者は、武僧と相補的とはいえ。賢者以上に、短剣、棒・杖専門となる魔術師複合の場合とは異なり。武器種補正が多少低い、組み合わせに成る』
(十三歳にもなれば、報酬計算用の税率が「眷属」等用の九割三分になるのだろうから。今の内に、空しくならない程の討伐報酬額を、体験させ覚えさせたいのかな。野外捜索で収容した怪物等を、討伐すれば、「眷属」等上限額の銀貨一枚に、達するのだけれども)
デュナルノア銀貨、割金非換算で、銀四瓦相当。
「ん。それでは。討伐者組の方へ、向かいましょうね」
『ええ』
『ふにゃ』
シルディア一党等は、協皇立私塾空間調整隣接討伐者組合支分支所へと向かう。
「一応、ここで、鳥達、兎達とは、一度、離れるね」
『うん。またね』
『ふにゃ』
『ふにゃ』
基本的に、翼猫達は、シルディア達とは、別の一党を組み。連結一党と、成っている。最初は、優れた近接戦闘能力や精霊として属性攻撃の扱いの上手さから。子どもたちを、補助していたが、現在は、場合に応じて、各一党六体を組み替えて、訓練を行っている。
多重空間鞄から顔を出している獏達は、迷宮探索等に、討伐者としては参加をしない。
「擬似迷宮前で、範囲境界の展開を、忘れないようにね」
『何度も展開しているから、大丈夫』
「何度も展開しているから。混同して、忘れる可能性が出て来る。とはいえ、数日間は迷宮探索の方が、出来ていないだろうからな。まあ。それでも、忘れ得る状況に違いない」
『ええ。気を付けるね』
討伐者活動を避けることの出来ない「眷属」等は、迷宮等探索における入場料が課されず。武具等は供与されることから。入退場情報が登録される認識票を、携帯しているのなら。討伐者組合支分支所等受付での手続きなしで、迷宮等へと入場することが、出来る。
(ああ。一応、低廉水薬様仮想体力回復薬の販売は、既に、始まっているようなのかな)
『妖仝獣や怪物は、純雑質の塊なのなら。物凄い価値があることになっている。妖精金属や物化精霊質は、重さ等を調整できるのなら。瓦単位での取引はされないのだけれども。一応、平時なのなら、製作技術継承等の関係からか、武具の値段は、比較的高くなるのなら。妖精金属製の得物は一振りで、一千五百万アスタリが、基本となる。どのような複雑単純・複雑な物質製の武具より、対怪物等においては、優れているとはいえ。そして、妖精金属製の防具となると、三千万アスタリが、基本になる。くわえて、迷宮等外では用い難い、物化精霊質製の武具は、一応、基本的に、その半値くらいとなる。とはいえ。有償貸与は低廉で、迷宮等入場料と合わせて、条件達成等で、無償となる。配置擬似怪物等二体以上の討伐、配置怪物等一体以上の討伐と探索時間二刻超等、最低限の活動を基本に』
「獏達、翼猫達。夢魔の類が居たり、痕跡が有ったりは、しないわよね」
『ふにゃ』
「そう。では、範囲境界を展開し、装備の武具を確認」
『ええ』
『ふにゃ』
『討伐者にとっては、物化精霊質製・妖精金属製の武具が、一種の価値保蔵機能を担い。妖精金属製の武具等は、野外活動の機会がある商家等においても、価値保蔵機能を担う』
野外捜索から怪物等を収容し、討伐解放することは。「眷属」等にとって、星の環境恒常性における自浄化作用を担う精霊の保護、大蔵への繰り入れ・歳入確保等の面がある。
怪物等が仮の器は、直接的に「眷属」等の力により供給されているのではない、比較的高品位な純雑質の塊なのだから、天然鉱物資源採掘や、その代替であること・困難を伴うも、安全な鉱山たる迷宮等探索による資源供給のように、扱うことが可能となっている。高品位とはいえ純度的制約から、単純強固なものことにおける相互作用での体積や重さを完全には無視できず。属性混乱による統御からの優位性・優先権回復防止で、塊となる。
(閉じた系における協会としての活動なのなら。比較的我々の力を、用い易いとはいえ)
不作分を「眷属」等が補うとはいえ、文明水準的な収穫倍率や反収の関係から。実効税率を低く抑えることが大切になるため。協会の什一税が率先して抑えられてはいる。とはいえ、協会は、福祉を担うのなら。予算を削るようなことは、人々の健康や生命に関わってくるため。それを補う役目を「眷属」等が担う。血気に過ぎれば労役所、勇気があれば討伐者、根気があれば協会という関係性から。討伐者組合と協会とは、相補関係にある。
『財政専売所の転移施設網により。嵩張るかどうかは別として、重量当たりの価値が比較的低く、長期保管が困難で、輸送保管費用の価格転嫁が大きく、欠くことが出来ない等。地域間で数倍もの価格差が発生し得た農産物の裁定取引は防止され。中心的農産物の公定価格が設定できるのなら。農務職員化は、時間を掛ければ、自然と帝国側が進められた』『収穫倍率や反収が向上することは、農務従事者の減少に繋がり。新たな産業が欠かせなくなってくるとはいえ。文明水準や文化水準からして、そのような産業の登場は、望めないのなら。討伐者による迷宮等探索の活性化と社会的評価というのは、福祉面から大切』
「ん。それでは、ここであっても、欠くことの出来ない擬似迷宮探索に、出発しようね」
『ええ』
『ふにゃ』
シルディアは、擬似迷宮第一層迷宮通路への扉を開き、入場する。
(設定どおりに、一種目の配置擬似怪物は、アクリス形と。二種目、三種目も、表示上では、ウェザー形、フスパリム形のようなのなら。大丈夫そうなのかな。流石に、初等中等迷宮からではなく、擬似迷宮の方から探索を始める塾生は、我々の他には居ないのかな)
『後退鹿アクリス形は、肩高八尺三寸前後、頭胴長一丈一尺二寸前後であり、枝角も八尺三寸前後に及ぶ。精霊同様、通常の食物を摂取しない擬似怪物等としては、水属性や木属性の要素結晶等からなる擬似植物ではない食物を、摂取しないだろうことから。上唇が大き過ぎるにしても、後退しながら草を食む訳ではなく、問題ないのだろうけれども。関節のない後肢という種族に特徴的な性質は、擬似怪物であっても再現し備えており。ある程度の柔軟性を備える擬似繋ぎで構成された器であっても、その影響は設定上無視できないことが多く、迷宮等の第一階層に、よく配置されることになる。再現上、直線的には、加速を経ずに瞬時に三十六里毎刻程を出せる。精霊は、重量や速度上限等を、半ば無視できるとはいえ。物質的な仮の器の存在は、純雑質から構成されるにしても、大きな制約となる。また、後肢の関係から、物質的な仮の器を備えることで、転倒からの復帰が大きな弱点となるとはいえ。人間の膂力では、アクリス形の巨体を転倒させること自体が、困難』
「プレヴァル」
「ふにゃ」
「ヴォオオオッ」
シルディア達は、「眷属」とはいえ。未だ一応は、児童設定なので、翼猫達が威圧すること等で押し止めないのなら。擬似怪物は設定に従って、一党に対し、威嚇をして来る。
「誰から、行こうか。ん。まあ。私からということね」
『ええ』
『ふにゃ』
シルディアは、牽制用に、素早く突きを繰り出せるよう棒における中断の構えから。空中を足場として、対象に斬撃を加えるために、上段の構えへと、複合槍を、持ち替える。
「ヴォオオッ、フィヨッ」
シルディアは、弓手を放さず、アクリス形左半身腕頭筋付近から、後背鋸筋周辺まで切り裂き、続けて左半身外腹斜筋付近へと突きを放ち、核を破壊し討伐に至る。「眷属」等に利き手はないとはいえ。弓手の逆を、仮の利き手とする。「眷属」の騎獣が猫のため。
怪物等は、仮の器が半透明で、四足獣形等が多いために、生物感が幾らか軽減される。加えて、本来の怪物等は、鳴くようなことはなく、不気味な面がある。討伐訓練という性質から威嚇や痛痒としての効果を感じ取るため等で、一応、鳴き声が設定はされている。
(怪物等とは異なり、擬似怪物では、一撃目を加えないと、核の位置が絞れないのよね)
「ところで。フエイニス。一度、外に出て、初期配置のアクリス形討伐を、繰り返すの」
「いや。早々に、第二階層には、進出して置きたいからな。先に進むぞ」
『ええ。では、そのように』
『ふにゃ』
(流石に、数回目でも、初等中等迷宮の踏破には、多少の時間が掛かるだろうけれども。報酬額の方は、四百二十アスタリ程、初心者の半分くらいなのね。これは、多いのかな)
一般税率は一割六分八厘、一般討伐者税率は一割八分六厘、「眷属」等普通税率は九割三分、「眷属」等特殊税率は九割九分に加え上限金額あり。一般代表討伐騎士団員・一代貴族特殊税率は、一応、九割三分とはいえ、実質的に、終身禄からの固定給となるよう。
『一般税率で、四半刻弱毎に一体程遭遇するアクリス形擬似怪物を、二刻半掛けて、二人で、一日に十体討伐し、年間三百八日活動すると。中間値の所得額より少しだけ多くなるのなら。アクリス形より高い報酬額の擬似怪物討伐を、目指すことになる。脅威との戦闘に足りる程に、集中力や体力が続くのは、一度に数分程度であり。迷宮通路を進む探索時間等が、殆どを占める。とはいえ、脅威と対峙しない迷宮等通路探索時においても。擬似怪物は、数秒で、数十間の距離を詰めて来るのなら。一人での対処は、非常に困難となっている。とはいえ。対怪物等戦闘訓練を目的とするのなら。通路形状等が障害となり得るとはいえ、罠の類は基本、擬似怪物複数配置大部屋や迷宮支配者を除き、設置されない』
頭胴長が一丈を超えるような擬似怪物が、配置される迷宮等通路の幅員は、八間五尺弱程となっている。聖騎士は、八尺三寸の複合槍も超える長さの槍を振るう、場合がある。
「ヴォオオ。ヴォ、ヴ、フィヨ、フィ、フッ、フ」
「報酬額の方は、同じなのか」
「ええ。そのようね。まあ。役割、技能系統や技量等で、差が出るようではないのかな」
「そうか」
『ふにゃ』
フエイニスは、アクリス形右半身を何度も、長剣で斬り付け、核を狙わずに仮想体力を全損させたのか、討伐に至る。フエイニスの長剣は、全長四尺七寸、剣身が四尺に及ぶ。
翼猫達も、始めから擬似怪物を威圧せずに、フエイニスが攻撃を開始できる程の早業。
『怪物等討伐に用いる得物は単純強固とはいえ。無雑ではないにしても、純雑質で構成される対象を斬るために。役割・技能系統と連動し、得物の刃等から純雑質を吸収排出する(迷宮等においては、迷宮核へ)機能を備える。そのようなことから。棒・杖のみによる打撃は効果的ではなく。剣身部分の多い長剣が、武器補正において資源要素を多く消費するとはいえ。対怪物等において、有効的な武器種となる。複雑軟弱・繊細な野生動物と同様、混乱状態にあっても条件反射的に、身の熟しに優れ。野生動物は異なり、瞬時に数十里毎刻もの速度に達し得る。一度の負傷が、致命的ではない程に強固な対象を相手にしては、間合いを詰められ易く、長柄の武器種では攻撃に移り難い場合が、比較的多くなる』
スゥインス等も、順に擬似怪物と対峙するが。フエイニス以外は、前衛であっても、手数重視ではなく、核の破壊を狙う。後衛であっても、擬似怪物には、直接対峙ができる。
『「眷属」等は、対魔王において、役割、技能系統外で、後手に回るとはいえ、容易に対処可能であり。皇王室でさえも、「眷属」等を欠く場合・選手権競技規則内のような状況での役割・役割上級の運用法が伝承維持を、討伐訓練を行いことで、期待する面がある』
『怪物等のように、核が物化因子の塊であれば、「眷属」等は、核の位置を、ある程度、感じ取るようなことが可能とはいえ。堕天使等によらない迷宮等配備の擬似怪物においては、物化因子の塊を再現するようなことが、物化因子の性質上や選手権競技規定上ない』
「また。私からね。アクリス形、六体というか。一体と五体も、出るのか」
「プレヴァル」
「メエエエェーッ」
『巨山羊ウェザー形は、肩高三尺七寸前後、頭胴長六尺三寸前後に及び。頭突きに用いられることの多い、後方に流れる二本の長く尖った螺子状洞角は、五尺三寸前後にも及ぶ。加速を経ずに瞬時に出せる速さの方は、人間以上ではあっても、二十里毎刻程に留まる』
「メエエェーツ。メェ」
シルディアは斜め上方から、ウェザー形左半身の毛部を横方向に長く刈り。ウェザー形の右側へと空中を移動し、右半身外側広筋付近へと突きを放ち、核を破壊し討伐に至る。
(距離感を間違えたわ。ん。報酬の方は、四百三十二アスタリ程ね。対象が中型なのに。まあ。機動力が、比較的低いからね。武器の用途が、速度の乗るような体当りとはいえ)
『堕天使側は、自らの力(の資源要素)を、多様な物化因子の運用促進・人間が怪物等を恐れることでの精霊と人間との不和醸成のために、多く割いているのなら。「眷族」だけではなく、皇・王霊と対峙し続けることも、精神的には困難であり。役割上級魔王のような多少有利な役割、技能系統を設定していることで、役割、技能系統の仕組み側へと引き入れることが、可能となり。役割、技能系統における瀕死の仕組み等が、対魔王軍においても、問題なく機能することになる。たとえ、「眷属」等を欠くような時期であったとしても、皇・王霊を中心に高位精霊達が居るのなら。それは、堕天使側の持つ、霊性間における差異を感覚的に取り払い人間の霊性の高さを損なうという目的を、達成するにあたって。人間を直接的には損なわないという行動様式に、沿う形となっているのだろうから』
「対象が小さいのに、報酬額は、殆ど変わらないのかな。先に進もうか」
擬似迷宮に配置される擬似怪物は、初等中等迷宮に配置される擬似怪物に比べ、単純強固であり、仮想体力も高く設定されていることから。通常は、討伐に至る手数が増える。
『アクリス形よりは、迫力がないからだよ』
「まあ。敏捷性の関係だな。範囲境界を用いているとはいえ。一般討伐者は、空中を足場にすることに、「眷属」等より、慣れていないのだからな。肩高三尺七寸は、丁度良い」
シルディア一党は、擬似迷宮第一層迷宮通路を、奥へと進む。
(ウェザー形、配置数が少ないのかな。対峙する間隔が長くなるとはいえ。報酬の方が)
「一体目のフスパリム形。次は、スゥインスだけれども。大丈夫ね」
「うん。大丈夫」
「プレヴァル」
「ピイィーッ」
『猿頭鼠フスパリム形は、耳の小さな猿様の頭部を持ち。大型種に近いとはいえげっ歯類の形が胴体とされながら、相当な巨体であり。毛が少なく、赤い斑点が全身に見られる。肩高が四尺七寸前後で、頭胴長は八尺半前後に及ぶ。加速を経ずに瞬時に三十里毎刻程となり。山鼠的特徴とされる脚部の肉付きは別として、外形的に中型獅子(翼猫達が最大種の最大個体級なだけで、最大級)に近く、中型獅子に比べ、肩高がより高くなっている』
「ピィーッ。ピィ」
スゥインスは、空中三尺数寸の高さを足場とし。フスパリム形左半身台形筋付近から、広背筋周辺を切り裂き、外側広筋付近へと突きを放ち、核を破壊したのか、討伐に至る。
(武器補正が超にならないルアンサスも、手数ではなく、核を狙うのなら。三種目にも)
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