第4話

「うわあーっ!」


と屋上に桃子の大きい声が響く。

「なになに!?どうしたの!?」「びっくりした…!」「桃子ちゃん、どうしたの?」「桃子!?なんだ!?虫か!?」

集まるメンバーに桃子が絶望した面持ちで答えた。

「来週…中間テストだよな…?」「残念なことにね…」「まっっったく勉強してねぇ!これじゃ全教科赤点だよ!」「夢子も!!!」「僕は論理国語は得意だから大丈夫そうだけど…クラスの専門科目が…」絶望する3人。

見かねて紡衣が声をかけた。

「大丈夫よみんな、中間テストだから出題範囲も狭いはず!赤点なんて事はないよ!」ギギも便乗してくる。「そうだぞ。中間テストは期末テストよりも教科数が少ない。おれたちのクラスでも最高で6つくらいだろう?いけるいける」「お前らはいいよなぁ頭良くて!!!」桃子が恨みの表情で叫ぶ。

「そんな!私は特別いいほうじゃないし…」「おれもだ」慌てる2人を見て、夢子が声を掛ける。

「…紡衣、実力テストあったじゃん、学年順位だといくつ?」「総合点数が一番良かったかな、1位」「ギギは?」「おれも総合が1位だったから、紡衣と同じだな。国語の全国順位が35位とかだったから、紡衣も同じくらいじゃないか?」

「ほら!!!!頭いい!!!!」「「それほどでも」」頭をかく2人。「お黙り!」「頭いい奴らが言ったところで万年赤点のあたしには無理なんだよ!!!」「まず、テストで赤点を取ることのほうがどうかと思うな…」「だまれ!!!!だまれよぉ!!!!!!!」


「あのー、みんなー」


騒がしくなった屋上に、美苑の遠慮がちな声が響く。「…今から勉強したほうが早くない…?」

「…確かに」「それもそうだね…」「騒いでる場合じゃないじゃない!みんなで勉強しよっか」「そうだな、おれだって専門科目が心配だ」

落ち着いてきた5人は、屋上にて勉強会を開くことにした。


「ウワーッわからない!公式を当てはめてるのに分からない!」「僕も〜!!」数学の問題に頭を悩ませる桃子と美苑に、紡衣が呆れた顔で教える。「もー、授業ちゃんと聞いてるの?ここはね…」「…そうか!まったくわからない!」「僕は少しなら理解できたかも…」「美苑ちゃんは偉いね〜…桃子ちゃん、授業は寝てるタイプでしょ」「なんで分かった!?」「ちゃんと聞かないと教科書読むだけじゃ分からないからね!」「そうだよ桃子ちゃん!」「美苑はあたしと同じステージに立ってるんだからな!?」


一方こちらは国語。

「ギギ、難読漢字の読み方だけ教えてくれない…?」「いいぞ、見せてみろ…あぁ、これが『おみなえし』、これは『しだ』だな」「ありがとう!だけどなんで分かるの…?」「本をよく読むお陰だろう。教科書からでもいいから、夢子も読んでみるといいぞ。読書というものは案外楽しい」「…夢子、読書は漫画派だなぁ…」


「はーっ、たくさん勉強した!」「疲れたー!」「でも分かるようになったね〜…!」運動したわけではないけど、ぜぇぜぇと息を荒くする3人に、紡衣とギギがねぎらいの言葉をかける。

「3人ともお疲れ様。クッキー焼いたんだけど食べる?」「お疲れ様だ。これならテストも赤点は回避出来るだろう」「まぁ…これならね!やっぱり持つべきものは頭のいい友人だな!」「紡衣、夢子、紡衣のクッキー食べたーい!」「僕も〜!」「はいはい、焦らないでね、たくさんあるから!」


その日のクッキーは格段に美味しかったらしい。

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